第12話 えんぴつうぉーず
巨大な定規の戦艦が空から迫ってくる。
「時間は10分しかない。それだけの時間であの巨大戦艦をやっつけるぞ」
定規の長さは50cmにもなろうか・・・。折り畳み式だ。稼働部を展開することで得られるそのサイズは見るもの全てを圧倒する。まさに規格外の巨体だ。加えて複数の分度器や三角定規がボールペンのクリップによって定規本体へ固定され、左右から翼のように飛び出している。ボールペンの先端は今にも対象の敵を見つけ次第攻撃せんとにらみを利かせる。赤色のインクもまた恐ろしさを際立たせている。しかし、なによりも恐ろしい装備が戦艦の先端から飛び出していた・・・。コンパスだ。言うまでもなく針は強力な武器だ。あまりの威力にとある会合では使用禁止協定が結ばれたとの噂があるほどであるが、今回の戦闘は合意の上で行われる非公式の戦いであり全ての武文具力の使用が特別に許可されている・・・。針とは対に存在する記入部位も相応の威力を持つ。えんぴつ接続タイプならば接続ユニットを攻撃することにより弱体化を狙えるが、当戦艦に搭載されているコンパスは黒鉛埋め込み一体型だ。さらに金属製のボディ、重量も相当のものだ。最強の名をほしいままにする強武器だ。自陣営の戦艦に装備できなかったことが悔やまれる。今日は算数がなかったので油断していた・・・。戦闘における油断は命取りだ。ただ、不手際を嘆く暇はない。こちらの戦艦にも自信はある。紹介しよう。えんぴつを軸とした超細身フレキシブル戦艦だ!先端と終端にはそれぞれシャープペンとボールペンが連結されている。接合部分はそれぞれの握り軸にあるラバー部を外し、先端同士を互いにまたぐ形で再度取り付けることで繋げてある。このように繋ぐことで接合箇所が柔軟になり、攻撃の受け流しを期待できる。えんぴつは軽量であるため戦闘に不向きだと思われる方も多いだろうが、そんなことはない!ボディがひとつの物質(木材)にて構成されているため、戦場において想定外の故障や破損が少なく安定した実力を見せる、優等生なのだ。彼をコアとすることで、安定した防御力を手にしている。シャープペンのクリップ部には、二等辺三角形タイプの三角定規を刃のように装着。先頭のボールペン先端部には、えんぴつ延長用のアルミ製カバーキャップが装着され、金属の光沢が威圧感を一層高めてくれる。大きさでこそ敵の戦艦に劣るが、ラバー部を生かした柔軟なボディは侮れない。あいまみえる柔と剛。
「さあ今こそ決着をつける時だ。いくぞ――――」
10分間の休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴る。
いつもこうやって休み時間は過ぎていく。友達は少なくても少年は幸せだった。空想はいつだって空白の心を埋めてくれる。
次の時間は国語だ。シャープペンを外さなきゃいけない、でもその代わりに何を付けようか。
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