写真の女

 「ひどい有様ね」


 私の仲間が薬を与えた内の一人が潜伏している病院に警察仲間がやってくる一足先に足を運んだ。院内はまるで戦争をした後のようだった。

 こんな風にでしゃばるのは禁じているはずだが……劣等種にまではそんな命令は行き渡らなかったか。


 「やりすぎよ……あの間抜け」


 寄生虫タイプのレプリカ。本当は私が使いたかったけど、今の段階ではそこまでの贅沢はできない。アレの性能テストとして劣等種を泳がせてはみたが失敗……とも言えないか。


 「寄生された人間の動きはどうだったの? 潤ちゃん」


 この病院に潜伏していたレプリカ、日垣潤。彼女は高遠の監視役だった。


 「言ってしまえばゴミ同然でしたね。やつら一対一なら生身の人間でも工夫次第で戦える程度でした。与えられる命令も限りがあるうえに単純な行動だけみたいでしたしね」


 「ふーん」


 やっぱり、寄生虫タイプはあの子一人にとどめておいた方がいいか。


 「それで? 例のハンターは見つかったわけ? ここの患者達やったの多分そいつでしょ?」


 そう聞くと潤ちゃんは口ごもり、急にうやむやな態度を取り始めた。


 「ああえっと……あのですね……自分も患者と同僚に襲われててそれどころじゃなかったんですよ……あはは」


 「すぐバレる嘘吐くんじゃないよ。レプリカがあの程度の人間に苦戦するわけないでしょう。どうせ原型留めなくなるくらいにいたぶってずっと遊んでたんでしょ。普段から注射で遊んでるような看護師なんだもんね」


 「失礼な! 遊びなんて生やさしい言葉で一括りにしないでくださいよ!」


 潤ちゃんのこだわりを延々と聞かされる前に話を変えようかと考えたところ、彼女は思い出したように言った。


 「そうそう! 女子高生がいました! 高遠と何度か揉めていた脚を怪我した女子高生がいたんですよ!」


 「その子が高遠を倒したのかもしれないって言いたいの?」


 全くの予想外だ。ハンターが女でしかもまだ高校生だなんて。もし本当にそんな子がハンターだとするなら一体何者だ? 普通の人間であるとは考え難い。かと言ってレプリカであるはずもない。劣等種も無闇に作り出すなと言ってある。だとしたら…………。


 「まあ、あくまで可能性の話ですけどね。その子の死体が見つかればその線はなくなります。あと、怪しいやつとして大男もいました」


 「一応その二人の写真を見せて。後で刑事としてここ漁るからその時に探してみる」


 「わかりました! それじゃあ自分はこのままずらかるとしますかね。上手く揉み消してくださいよ。深見さん」


 名前を呼ばれ、私は頷いた。警察という立場はつくづく便利なものだ。さて、これから加賀君や鬼島さんが一緒だと少し面倒だな。ここはヒグマちゃんの大堂デカを呼んでおくか。


 「そうだ、もしハンターが誰か確認できたら簡単には殺さないでよ。存分にレプリカの性能をテストしたいからね」


 まあ、拷問好きな潤ちゃんならすぐにハンターを殺すことはないだろう。私は私でやることは山積みだ。まずはレプリカの存在が公にならないよう、この事件をうまく揉み消してやるのが最優先か。 

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