ミシロいんたーふぇいす(仮)〜1:自己紹介〜


「さて、改めて。俺は椿光太郎だ。よろしく」

「知ってるぞ。さっきインプットされた」


 耳についた無線ヘッドセットから、彼女の甘い声が聞こえる!


(うほぉ、感動だ! こんなかわゆい嫁とお話できるなんて!)

 画面の中では、じっと俺の方を見つめる嫁。

(目の上で切った淡い水色の前髪、丸い頭、すこし目立つくせっ毛……! そしてもみあげの三つ編み! おっとりしたやや垂れた目、ちいさな唇ゥ!!)

 つつーっと、視線を下へ。

(そしてそして! 白いワイシャツを押し上げるようなキョニューッ! 莫大な質量を通る赤いネクタイ。……正直、たまりません!)


「では、自己紹介だ」


 そう言って、ミシロは自分を指さす。


「ミシロだ。今日からコータローの嫁になる」

「――っ!!」


 そんな純真な瞳で直球に言われますとぉ!


「ぬごぉぉぉお……っ!」

「どうした、コータロー。ねじれてるぞ」


 ……っと! いかんいかん。こんなことで体よじってる場合か!

 そうだ、今日からミシロは俺の……その、えっと……っ。


「嫁だ」

「そうそう、嫁!――っ」



 また自分を指さす。


「――」


 やべぇ……いろいろオーバーキャパシティーだよう!


「コータロー」

「まて! いま葛藤なう」

「キスして」


 ぶふーっ!!

 そうだ。こいつの個体設定の時、ネタかと思ってキス魔とかいう設定をつけたんだ!

 ちょっ、ミシロさん。そんな目をつぶって……! ああ、これはしなきゃいけないだろ! こいつは俺の嫁で、キスをするくらいフツーっていうか、むしろしないと不自然というか――ああっ、もうどうにでもしてーッ!


 ――ガラガラッ!


「おにーちゃーん、さっきからうるさーい! ごはんだー……よ?」


 ……はっ!

 画面に唇をとんがらせる俺と、その様子をぼーぜんと見つめる妹。

 ーーここは、紳士的に!


「……妹よ、お聞きなさい。これは」

「おにーちゃん、とうとうパソコンの女の子にきっききっ……!」


 わなわなと震えてる! これは誤解を……いや、まったくもってその通りでーっす!


「おにーちゃんのぉっ、ネクラぁー!!」

「わーっ! まて、妹よー……」


 しかし、非情にも走り去る妹。


「……キス」

「うん、あいつの誤解がとけたらな」


 キスすること前提で話してるし、俺。

 ……駄目だ俺、いろいろ早くなんとかしないと。


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