ミシロいんたーふぇいす(仮)〜0:嫁、誕生!〜


 “ゆーごっとめーる!”

 ある冬の昼下がり、それはやってきた。


「ん? なんだ?」


 俺はパソコンを見る。

 どうやらメールが入ったようだ。

 それを開く。



   ーーーーー


“椿 光太郎 様

 おめでとうございます!

 あなたは、応募された『ブライド・アバター』の抽選で、見事当選されました!”


   ーーーーー



 一瞬、なんのことかわからなかったが、すぐに思い出した。

「……あれか」

 いつだか、『新作ゲーム、α版モニター募集!』と、どこかの掲示板で募集していて、それに応募していたのだ。

 どうやらその抽選に俺は当たったらしい。

 さらっとテキストを読みとばしていく。



   ーーーーー


“インストールソフトを添付しましたので、パソコンにインストールしてお使いください。

 それでは、よい新婚生活を!”


   ーーーーー



 その文の後ろに、添付ファイルがある。

 それをパソコンに保存し、ソフトを起動した。


「どんなゲームなんだろな……」


 期待を胸にインストールする。

 書き込みによると、『本格嫁育成シュミレーション! あなた好みの嫁をそばに!』というふれこみだった。


「しっかし、嫁育成シュミレーションねぇ。『あなた好みの嫁を〜〜』なんて大層な……。俺、好みには厳しいぜー?」


 なんて言いながら適当に設定。インストールを終了した。

 最初は、性別の設定か。迷わず“女”を選択。

 すると、


“それでは、あなたの嫁を作っていきましょう!”


 そう画面に表示され、体のパーツごとのカテゴリが現れる。

「なるほど、自分で容姿を選ぶのか」

 適当に『顔』を選択。

 ――そこで、俺は驚愕することになる。


「なん、だよ。これはッ!?」


 表示されたのは、様々な顔、顔、顔!

 よく見たらパーツの種類が五百を超えてやがる!

 すべて向けられる視線の先には、俺。


「……俺は、大変なもんをアテちまったのかもしれない」


 そこからは、無我夢中で画面を見ていた。

 数千種類の中から、理想を組み立てるために!


   ***


「……ふぅ。できた!」


 二時間。

 設定に二時間も要した。目が痛い。

 しかし、それを越える満足感。長い時間をかけ、俺の“理想の嫁”は誕生したのだ!

 目の前には夢そのものが常駐している。まだ処理中らしく、目を覚まさない。

 今か今かと画面を見つめていた。

 そして。

 目覚めた。


「ーーコータロー?」

「……」

「……?」


 おっ、俺の名前をっ!? あっ、あ……!


「どうした、コータロー」

「シャベッタァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

「?」


 そんなこんなで、俺の嫁“ミシロ”との、奇妙な生活が始まった。



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