第72頁目 ― 30 ― 四号室。レミーヌ・ド・フランソワ ―
― 30 ― 四号室。レミーヌ・ド・フランソワ ―
優紀さんが外出している隣の部屋で、
前後にユラーリ、ユーラリ。と、気分良く ル・ジャル伯爵がロッキングチェアで揺れて休んでいる。
私(わたくし)は、伯母様(おばさま)が用事で留守にしている事で、すごく安心していた。
ル・ジャル伯爵も気分的に安心しているみたい。
『のう、レミーヌよのう・・・』
ル・ジャル伯爵が、前後にゆっくりと揺れながら、私(わたくし)に言う。
『どうしたの?ル・ジャル伯爵?』
『のう、レミーヌ。わしら守護神(スピリット・ゴッド)でもある、霊界の霊守(スピリッター)と言う事は、知っておるじゃろう?』
眠っているのか、起きているのか判らない体勢のル・ジャル伯爵。
『ええ、充分に知っているわ』
『まあのう、レミーヌは、戦士上がりの貴族かも知れないが、わしとラ・フィーヌは産まれながらの貴族なんじゃよ』
『ええ。それは、以前に何度も聞きましたわ』
『ラ・フィーヌの人間嫌いは、生前に起こったトラウマなんじゃよ。あの魔女狩りに接していた時代の中世時代じゃ・・・
ラ・フィーヌは貴族の王妃でありながら魔女狩りに合ってしまったじゃ。
それが、未だにトラウマなのじゃよ。』
『はい。それも以前に聞いて知っていますわル・ジャル伯爵』
何度も同じ話しを、今まで何百回と聞いてきた私(わたくし)。
聞いていて、又か!、と思うほどに呆れてしまう。
私(わたくし)は、適当に相づちを打ちながらも、話しを軽くスル―していた。
『そしてのう、霊界の情報によると、霊界とは別世界の次元の、死界(デッド・ワールド)の死霊率いる、各種の怨魂たちが反乱を起こし、何匹かいなくなったそうじゃ。それを阻止するのが、わしら観測員じゃ。どこにいるか分から無いが見つけ次第連絡するのじゃぞ。』
『ええ。それも以前に聞いているわ。見つけ次第連絡するわ』
『わしらはのう、大霊界(スピリット・スペース・ワールド)から選ばれたのじゃよ。そして、霊界貴族から
そして、大日本(ジパング)の北方方面観測員としてこの場所に留まっているだけのことじゃよ。ラ・フィーヌもわしも毎日区域を回り調査するのも大変じゃよ。
おまえも遊んでばかりいないで、ちょっとは手伝ったらどうなんじゃ?』
・・・ル・ジャル伯爵のキツイ一言が私(わたくし)をギクッとさせる。
『い、いえ、私(わたくし)は、ただ遊んでいる分けじゃないわ。
今、一人だけ守らなければならない人を見つけたの。今観測している最中ですわ』
『まあ、そうじゃったのう。今、大切な人を観測中だったのう。
でものう、自分の霊界能力を絶対に使用してはならぬぞ。
あくまでも観測結果を提出する義務だけじゃ。決して使ってはならぬぞ』
『え、ええ。使うと、どんな罰則が待っているか判らないけど。頑張ってみるわ』
『まあ、レミーヌの行動をラ・フィーヌが押さえてくれるとは思うのじゃがのう。まあ、勝手な行動は控えることじゃよ』
『ええ、出来るだけ努力はするつもりよ』
『ちなみにじゃのう。南方区域には、聖徳太子。東方区域には、織田信長と言うサムライが送られていると聞いたのう』
『ええ。それも以前に聞きましたわ。
西方区域には、ソクラテスが送られて、西洋の方には、ナポレオンやロビス・ピエール。イエス・キリストなどが送られていると聞きましたわ』
『ふぉふぉふぉフォ・・・よくぞ覚えているのうレミーヌ』
ル・ジャル伯爵はご自慢の顎ヒゲを撫でながら笑う。
『それにのう、レミーヌ。規則の事を話すとすれば、今のレミーヌの状態じゃ。
霊界規則ではのう。【 霊界規則による「他次元による接近化」。第四章 】にのう、【 人間との恋愛による罰則 】があるのじゃよ。
法に定まれた事を反すると罰則が下るのじゃよ。
もしものう、恋を前提の行為とすればじゃのう・・・
観測員はおろか、貴族からも除外され、第三・第四身分以下となってしまう可能性が出てくるのじゃ。・・・他に、無の空間・闇の空間や他次元に放リ出される可能性も出てくるのじゃよ』
『えっ?。そ、そうなんだ・・・私(わたくし)全然知らなかった・・・
で、でも私(わたくし)、優紀さんが好きなの!好きなのは自由ですよね?』
私(わたくし)は、必死に訴える。
『ふぉふぉふぉフォ・・・まあのぉ、恋愛は自由だが、のめり込み過ぎには注意するのじゃぞ・・・ふぉっふぉっふぉ、、、、』
そう言って、ル・ジャル伯爵は私(わたくし)の目の前から姿を消した。
・・・私(わたくし)は、とても、かなり、複雑な心境だった。
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