第71頁目

 管理人さんと、散歩に出て・・・港に辿りついた。


 恋人との港デートは、凄いムードがあるかもしれないが、

 どうして、オレはこんなジジィとデートしているんだ?。


 漁船の並ぶ港。

 釣り人の姿も何人か確認する。

「だいぶ、住人達には慣れましたか?」

 港を歩きながら、フライド野口さんが言う。

「えっ!。あっ、は、はい。多分、最初に比べて、なんとか慣れたとは思います」

 何気に心に嘘を付くと冷や汗が流れ出す。

 言葉とはうらはらに、はっきり言って住人達には全く慣れていない。

「色々とありますけど、いい人ばかりですから、何かとお役に立てるときは言って下さい」

「えっ!、あ、ありがとうございます。・・・その時は、連絡します」

 それと言って会話が無いのに、散歩なんて意味が無いのでは?

 オレは早く帰りたくてしょうがなかった。

 と、突然、フライド野口さんがキョロキョロと何かを探し始めた。

 ・・・そして数分すると、テトラポットを見つけ、素早くテトラポットまで足を向けた。

 

 ふと気づけば、テトラポット座り、漁船を見ている二人の姿。

 ゲッ!

 な、なんというデートだwww!

 まるで恋人同士の風景じゃねーーかよ!。

「海っていいですよね。何もかも忘れることの出来る唯一の場所です」

 オレも海が大好きだ。羽美(うみ)さんも好きだけど、それ以上に真菜美さんが大好きだ。・・・いや、そうじゃなくって、海は、オレはフライド野口さん以上に大好きかもしれない。お互いに海が好きで気持ちは合っているかもしれない。

「そうですよね。海のさわやかさが、落ち込んでいるときとか、悲しい時・寂しい時の感情を忘れさせてくれるんですよ。オレも海が好きなんですよ。」

 海を見ていると、とても心が安らぐ。

 オレの心の中でいつも何かを見つめている。

 けど、まだ見つめている何かにたどり着かない。

 オレの中の記憶。・・・記憶を取り戻すための旅・・・自分探しの旅。

 もう、この町で過ごそうかな?と考えている。

 海の見える町。もう記憶なんて、どうでもいい気分だ。


 オレは、この輝く海を見つめて、ふと隣を見ると、

 無言のまま、ずっと海を見ているフライド野口さん。

 なんだろう?、この静かな海と、無言のフライド野口さん。


 さて、そろそろ、帰る準備でもするかなあ?。

 オレはそう思い、その場のテトラポットから立ち上がると、

 何か後ろの方で声が聞こえた。

 ん?

 あれ?

 どこかで聞いた事がある声だぞ?

 オレは、その声を気にしながら振り向き、テトラポットから、

 そーーーっと、

 覗き込む。

 フライド野口さんもオレにられて、覗き込む。

 すると、四人の姿を目にする。

 テトラポットと、道路の段差で、四人からはオレとフライド野口さんは見えなかった。ってか、この八メートルぐらいの距離では、こっちは見えないだろうとは思った。

 そして近寄って来る、その四人・・・

 足音を聞きながら、もっと身を隠すオレとフライド野口さん。


 オレとフライド野口さんのテトラポットの後ろを歩く四人。

 そーーっと段差の陰から覗くが、はっきりと見えない。

 ちょっと距離があって見えづらい・・

 

 かなり興味津々に、オレはちょっと顔を上げて見上げる。

 ワイワイキャッキャッと騒ぐ、セーラー服を来た女性三人と、

 タバコをくわえながら、袋に入った札束を数え歩く男性の姿。

 イチャイチャと、その男の腕にしがみついたりしている。

 金持ちの道楽か?札束で女性を手玉に遊んでいるのか?

 それも、セーラー服を着たJKだし・・・

 ん?

 あれ?

 あいつは?確か・・・

 よく見れば、男性の姿は勇次じゃないか?

 え゛っ?!

 もしかして、あのJKたち・・・以前にコンビニの自販機前で合った三人では?

 しゃがんでいた、JK・A

 自販機に背を向けて座っていた、JK・B

 LINEをしていた、JK・C

( 54頁参照 )

 じゃないか?。

 何故?彼女たちが?

 疑問が頭を過ぎる。

「今は、まだ早いですよ。干渉しないほうがいいですよ。」

 四人を見ずに、まるでオレの心を読むように、海を見ながら、フライド野口さんが言う。

「えっ?!」

 はっ?。

 オレの心が読めるのかよ?

「ジロジロ見ていたら喧嘩売られますよ・・・」

 フライド野口さんが、まるでオレの心を全て読んでいるように言うと、

 オレは、海の方を向き、体育座りになり、ジーーっと海を見つめる。

 そ、そうだよな。

 最近は目を一瞬合わせただけでキレ過ぎる少年・少女の多い時代だしな。

 あまり、他人に対して鑑賞はしない方がいいかも知れないなあ・・・

 けど、あの勇次がとても気になる。

 ・・・オレはどうしたらいいんだろう?

 オレがとても迷っていると、

「さて。帰りましょうか?」

 と、フライド野口さんが言う。

「えっ?。あっ、はい。そうですね。帰りましょう・・・」

 オレは、勇次の事が気になるが、とりあえず諦めて帰る事にした。


 勇次とJKのA・B・Cがオレとフライド野口さんの視界から見えなくなると、座っていたテトラポットから腰を上げ、段差のある道路へと上がった。


 そして、二人でボロアパートへと歩いて行った・・・


 ・・・ボロアパートにたどり着くと、フライド野口さんがオレに手を振り去っていった・・・

 フライド野口さんは、まだ仕事が残っているらしい。

 けど、フライド野口さんの、部屋の中の紹介は無かった。

 おい!、部屋の中に入れてくれないのかよ!

 まあ、全く入りたい気はないが、どんな部屋かを見ていたい気はしていた。


 ふと、オレの脳裏で気になっている、フライド野口さんの言った一言。『 今は、まだ早いですよ・・・ 』

 オレには、何が早いのかが判らなかった・・・

 また何かフラグが立ったのか?

 でも、今のオレには全く分からなかった。

 まぁ、今は、どうでもいいかぁ、今は何も気にしないでおこう。


 とりあえず、オレは買ってきた弁当を食べて、寝る事にした。・・・


 ・・・そして、起きると、今日の十四日目になっていた。

 早くも、二週間が経っていた


 オレの中で二週間を思い出し、回想しただけでも、凄まじい二週間だった。

 別に回想しなくても、ストーリー的にそのまま進んでもいいじゃないか?と言う不満な呟きがオレの思いをモヤモヤにさせていた。


 そんなモヤモヤを残しつつも、オレは散歩に出る事にした。

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