第21頁目 

 遠くから見える六部屋・・・

 一歩一歩近づくごとに五部屋に見える・・・

 一度、何かで見た錯覚アート美術館?

 そんな絵が頭を過ぎる。色んな角度によって見える錯覚の世界を絵で描いた美術館。

 旅している時に、上富良野で確か見かけた気がする。

 そんな、錯覚した映像が今、オレの目に見えている。

 方向を斜めから見ると、六部屋に見え、真正面から見ると五部屋。

 まさに、トリックアート美術館の世界に相当する風景・・・

 でも、なぜだ?


 疑問に思っていると、俺の肩を後ろから叩く怪しげな指。

 オレは、その影が見えた瞬間何気に振り向く。


 オレは『 ドン!』と言う鈍い音と共にゴッツイものにぶつかり、いきなり目の前に立ちふさがる。

 妖怪か? ぬりかべか? それともカイブツか?

 思わず、大きな立ちふさがる壁を見上げる。

 えっ?、お?おおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!

 身長が2メートルはある大男。

 オレの目の前に聳え立つ(そびえたつ)、バベルの塔のような傾き。

 でも、顔はゴッツイ。例えるのなら「 モアイ像 」のようだった。

 オールバックで癖毛が、カモノハシの手かモグラの手のように横に出ている。

 波のように笑顔した目。ダンゴッ鼻に、ブルドーザーのようなアゴ。

 ガッシリとした身体(からだ)つき。

 まるでアメフトでもやっているような身体(からだ)つきだ。

 い、いや、どちらかというと、土木をやっているガテン系に近いかもしれない。

 ランニングシャツに、バミューダーパンツ・・・に、、

 手に抱えた・・・ん?手に抱えているのは、ビニール袋に入った、

 こ、これは、ガ〇プラ?

 大きいのから小さいのまでのプラモ数点と、、これは美少女のフィギュアかな?・・・透けた袋から入っているのが見える。


「最近引っ越してきた、五号室の人だね?」

 低音のしゃくれた言葉。ちょっと言葉が聞き取れにくいが、なんとか聞こうとする。

 オレは、

「はい。そうです」

 と、思わず、引きつった笑顔で応える。

「ボクは、二号室の、『 暗黒 滅亡(くらい ほろぶ)』という者です。お初ですね。

 管理人さんの『岩井戸 菊皿(いわいど きくさら)』さんからは、話しは、聞いておりますよ」

 えっ!、ええええぇぇぇぇぇぇぇ!管理人さんってそんな名前だったんだぁww

 オレは、体格にもびっくり驚いていたが、管理人さんと、今初めてあった二号室の住人さんの名前にも、驚いてアングリとしていた。

 そういえば、保池(ぼち)さんってのも、変わった名前だった・・・

 もしかして、このアパートには、こんな名前ばかりなのか?

 オレは、疑問に持ち、暗黒(くらい)さんに、保池(ぼち)さんの名前を、恐々と訊ねて(たずねて)みた。

「暗黒(くらい)さん。いきなりなのですけど、保池(ぼち)さんって同じアパートにいますけど、フルネームのほうはご存知ですか?」

 オレは塔を見上げるように暗黒(くらい)さんを見上げる。

 暗黒(くらい)さんは、大男、ブルドーザー、アメフトにモアイ・・・

 見れば見るほど暗黒(くらい)さんの体格は凄すぎる!。 これからは、と呼ぼう・・・オレは、そう決めた。

「保池(ぼち)さんですか?。保池(ぼち)さんの名前は『保池 命短(ぼち みこと)』と言いますが、それがどうかしたのですか?」

 ちょっと東北なまりのある声が、オレの頭上から低音で響き渡った。

 えっ!?、へぇぇぇぇ~~、、、保池 命短(ぼち みこと)って言う名前なんだ ぁぁww・・・

 その名前にひたすら、愕然とするオレだった・・・

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