第16頁目 ― 7 ― 黄金岬(おうごんみさき) ―  

   ― 7 ― 黄金岬(おうごんみさき) ―


 かつて、鰊(にしん)の群れが夕日を浴びて、海面を黄金色に輝かせたことから岬の名がついたと言う『 黄金岬 』。

 ここには、アイヌ少女の悲しい伝説が残されている。

 酋長(しゅうちょう)の娘であった『 チャシナ姫 』は、召使いの若者と恋に落ちた。しかし父でもある酋長に反対され、その若者は監禁の身となり、その年、海に現れる怪物によって鰊が、まるっきり取れなくなってしまった。

 怪物に困った酋長は、悩みに悩んだ結果。怪物を退治した者には、ご褒美として娘のチャシナ姫を嫁にさせる事を国中に知らせた。

 その後に、怪物を倒しに向かった若者は、次から次へと死を遂げ、若者が次から次へと倒されて亡くなっていく事に困った酋長は、監禁していた若者を海へ放ち、怪物退治へと命令を出した・・・若者は、夢でのお告げとチャシナ姫の協力により、見事怪物を退治した。

 だが、酋長は若者をチャシナ姫と結ばせたくない思いで、殺意を持った。

 その殺意を心の中で察したチャシナ姫は、せめてあの世で幸せになろうと思い、岬の先端まで駆け登り・・・身投げした。

 そして、チャシナ姫の後を追って若者も身投げした・・・


 今では、チャシナ姫が駆け上った小道を『チャシナの小道』として残っている。

 多分、この黄金岬の由来通りに鰊の群れが夕日に輝きだしたのも二人の伝説のおかげだろうと思う。

 この、日本海に輝いた光りを海面に乱射させ、鮮やかな宝石の彩りを見せている、留萌の海。

 ちょっと足を延ばして行けば増毛(ましけ)の海だが、オレは自分探しに彷徨った結果、この黄金岬にたどり着いた・・・増毛より黄金岬が好きって事だ。

 まだ、朝の九時が過ぎただけの時間。

 晴天の空は、太陽の光りを煌びやかに海の波に光らせ、輝きを増している・・・とても静かな海だ。


 黄金岬の石で出来た大きな記念碑。

 正面から見ると、いつの日かアニメで見たことのあるロボットの顔にも見える。

 なんだっけ?

 ま、まあいっかぁ、いつか思い出すことだろう・・・

 造形を芸術的に変化させた、石で出来た鳥居にも見える記念碑。

 石畳には、魚介類が彫り描かれている。

 石畳に描かれた絵を見ながら、下を向いて絵を楽しんで一歩一歩と歩いていく・・・

 夕陽(ゆうひ)がロマンティックを語り、素敵なシチュエーションに変えてくれると言われる、留萌の黄金岬・・・

 朝の九時が過ぎた海もロマンティックな光りが、海を輝かせて宝石にしてくれている・・・

 色々と岬を巡り、一番好きな岬。

 記念碑から離れ・・・海に点々と繋がり置かれた小さな岩場を渡る・・・

 小さい蟹をエサで釣り取ろうとしている子供達のはしゃいだ声がやかましく聴こえる。

 朝早くから、元気だなぁww

 波も静かな潮の香りが漂う岩場でオレは、コンビニで買ってきたおにぎりと冷えたお茶で朝飯しを迎える・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る