第10頁目

 伯母様(おばさま)が、仇笑うかのような瞳(め)を優紀さんに向かって輝かせた。

 その瞬間。優紀さんの身体(からだ)が金縛りにでもあったように、身体(からだ)が硬直して全くっと言うほど動かなかった・・・

 わ、私(わたくし)の身体(からだ)も動かない!

『伯母様(おばさま)!悪戯はよして!』

 私(わたくし)が叫んでも声が出ない・・・

「な、なんだ。身体(からだ)が動かない!」

 優紀さんは、必死になって動こうとする。

 私(わたくし)も負けじと動こうとする。

 けど、動かない・・・

 伯母様(おばさま)の白い姿が少しずつ消え・・・右手だけが残った。

 淡白く(あわじろく)細長い指で、優紀さんを手招きしていた。

 その瞬間に優紀さんが宙に浮き、同時に背後から誰かに首を絞められているような苦しみが優紀さんを苦しめていた。

 まるで、優紀さんが首吊りをしているようにも思える、ヒドイ光景が私(わたくし)の目の前に嫌と言うほどに見える・・・


 目を閉じようとも閉じられない・・・全然、融通が利かない。

 優紀さんの顔色が少しずつ変わっていった。

 顔から血の気が刻々と引いていく・・・

 優紀さんが手を延ばし、苦しみ悶えながら誰かに助けを求めようとしている・・・私(わたくし)は、助けてあげたくても手が出ない。

 伯母様(おばさま)の悪戯とは知っていても、あまりにもヒドすぎよ!。

 優紀さんが渾身に力を込めて、大声を出そうとした時、伯母様(おばさま)が優紀さんの首を力強く締め付けた。

 優紀さんは、張り上げようとする大声も出せず、薄れていく意識の中、優紀さんの脳裏の中に仇笑う伯母様(おばさま)の声が響き渡った。

 優紀さんは、無残にも首を絞められたまま壁に叩きつけられた・・・

 そのまま、壁に張り付くような状態で身体(からだ)じゅうを圧迫するように苦しめられていた。

 私(わたくし)の身体(からだ)も動かない・・・一体どうすればいいの?


 優紀さんの脳裏に恨みと憎悪(ぞうお)が入り混じったような声が幾度も幾度も交差し響き渡った。

 苦しめ!苦しむがいいさ!!下等動物め!

 おまえは、死ぬのだよ!!。

 良くお聴き。私がこの手で、下等動物のおまえを安らかな眠りにつかせてあげるわ!。

 さあ、ほら!。さあ~気持ちいいほど苦しむがいい!

 早く、この世から消えてしまうのだよ!ホォーホホホホホ・・・』


 優紀さんは身の毛のよだつような伯母様(おばさま)の声と苦しさに怯え(おびえ)、意識が消えかかっていた。

 優紀さんの心臓の鼓動が少しずつ停止の状態へと向かっている。

 待って!伯母様(おばさま)。やりすぎよ!

 でも、伯母様(おばさま)にも優紀さんにも私(わたくし)の声は届かない・・・

 優紀さんが苦しみ紛れに目を瞑(つぶ)ろうとすると、眼球を締め潰すような激痛を与えている。

 私(わたくし)は手を延ばして助けを求めている優紀さんの手を握ろうと必死になった。

 優紀さんが身体(からだ)じゅうに締め付けられる激痛の無声のおたけびをあげる。

 やがて、優紀さんの首が左へ、左へと強引に曲がって行く・・・

 ねじれ始めていく、優紀さんの首。

「ぐわっぁぁぁぁぁ!」

 と、やっと出た声と共に吐血した。

 死に苦しむ声を張り上げ、首はよじれていく・・・

 首が裂け、赤く濁った血が溢れんばかりに吹き上がる。

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