第6頁目

「・・・・・・信じられないようですが、本当の話しなんです。」

「ま、まさか・・・ ははハハハハハハ・・・」

 優紀さんは額に汗を滲(にじ)ませながら、管理人さんの話しを聞いていた。

「ま、まさか・・・そ、そんなぁ~。血文字で『 宇宙(コスモ)』とテーブルに書かれていたなんて・・・ハハハハ」

「信じてもらえないのは、勝手なんですけれど、わたしがこのアパートの管理人をする五年前の事を調べたのですが、この管理人の部屋が以前は一号室だったそうです。

 今は、上の階の左端から一号室、二号室、・・・とナンバーを表示していますけど、その前は、下の階から一号室に表示されていたそうですよ。

 ・・・

 

 この部屋で20歳(はたち)前後の女性が自殺したと云う(いう)噂があるんです。」

「じ、じさつですか?・・・はは、、ははははハハハハ・・・」

「五年前にテーブルに血文字で書かれた、この猫の名前がその自殺した猫好きな女性が書いたと云う(いう)噂も流れているんです・・・内緒ですよ・・・誰にも言わないで下さいね。

 で、では、わたしは、この辺で失礼します・・・」

バタン。

 管理人さんは言いたい事を言うと、冷たい響きでドアを閉めた。

 優紀さんは冷や汗を溢れ(あふれ)んばかりに流していた。

 優紀さんは、顔を引きつらせながらボー然としばらく立ち尽くすと、トボトボと階段を上がって行く。

 部屋の中に入り、優紀さんが不安なタメ息をついた。

「なんてこったい。・・・血文字の名前がテーブルにあったって?・・・」

 きっと、血文字の事を気にしている見たいね。

 かなり怖がっているみたいだけど、現・管理人さんの部屋のテーブルに血文字で書いたのは私(わたくし)なんだけど・・・

 どうしても、仔猫の名前に宇宙(コスモ)って付けたかったから、血文字で主張しただけなんだけど・・・

 優紀さん、もしかして、自殺した女性が書いたと思っているの?

 自殺じゃなくて、あの事件は、他殺だったのよ。

 どっちみち死んだんだけど、死んだ女性が書いたのではない事を伝えたいの・・・優紀さんに・・・。

 ま、優紀さんに私(わたくし)の声が届かないのは判っているけど、どうにかして私(わたくし)の存在をアピールしたいなあ・・・

『 私(わたくし)、幽霊貴族でこのアパートに住んでいる幽霊なんだけど、このアパートには古くから住んでいるんだよ』

 って。

 でも、今の現状は無理みたいね・・・

 優紀さんも大きなアクビをして寝てしまったみたいだし・・・

 かなり疲れているみたいね。すぐにイビキかいたりして・・・


 優紀さんが寝ちゃって、私(わたくし)も暇になったし、部屋に帰って音楽でも聴こうっと・・・

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