第二部　すごい男対南野君

　相変わらずＭ籐さんの下で、最初の現場についていましたが、この現場とはべつに新しいプロジェクトが立ち上がるらしいとの話が出てきました。

　つまり新しい現場。それもそれなりの規模のものらしい。

　となると、ほとんど研修状態で今の現場に詰め込まれている有象無象（私を含む）たちは分散されるはずです。

　だが、新しい現場で頭を張れる人間がいない。

　そこで新しい所長が来るという話になりました。

　しかも必要なのは即戦力。いくら日本で所長をやっていたとしても、海外経験ゼロではすぐには使い物になりません。

　そこで白羽の矢が立ったのが、Ｓさん。

　ここフィリピンで現場所長を経験したことがある人物です。

「え～、あいつが来るのか？」

　Ｍ籐さんはあまり乗り気じゃないようです。

　Ｎ君もちょっと渋い顔。

　噂に聞くと、マカティ事務所にいる工事課長もうんざりしていたとか。

　ただ支店長だけが「あいつしかいねえだろ？」って感じでした。

　う～ん、いったいどんな人が来るんだよっ！

　とりあえず、いきなり現場を任せるわけだから、仕事はできるんでしょう、きっと。

　ひょっとして性格に問題がある人なの？

　すごい男がやってくるという噂が先行し、その人物像の想像が追いつかない。

　だんだん不安度マックスに。

　なにしろ、その人が自分の新しい上司になるかもしれないわけだし。

　そしていよいよその人はやってきます。

　寮で会った第一印象は、……けっこう、普通の人でした。

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