第6話 いきなり支店が魔境で不安になるぞ

 M籐さんに連れられて、マニラ支店、というか、現地法人の会社に着きました。

 場所はマカティ。事務所やらショッピングセンターやらレストラン、ホテルなどがたくさんあるところです。

 中に入ると、ローカルスタッフたちであふれていました。

 大部分が、おそらく二十代と思われる若いスタッフです。女性スタッフも何人かいます。

 それにまじって日本人スタッフも数名。こっちはみな中年。

 まず支店長に挨拶。支店長室の中に入ると……。


 ガタイのいい、悪役面のおっさんがいました(失敬だな、君は)。


「俺が支店長の●×だ!」

「は、はい。よろしくお願いします」

「まあ、最初の一年くらいは役に立たん。こっちの仕事を覚えるので精一杯だ。二年くらいいてようやくものになる。それで帰られたんならこっちはたまらん。だから、最低三年はいてもらわんとな」


 は、話が違うじゃねえか。向こうでは、最高でも二年って言ってたぞ。


「ま、ここもなれればいいところだ。うちのカミさんなんか、日本に帰ったらメイドさんどうしましょうとかいってるぞ。困ったもんだ。俺はカミさんの教育を間違ったよ。わははははは」


 どうリアクションしていいか、わかんねえよ!


「ま、がんばってくれい」

「はい。がんばります」

 三年もがんばる気はないが……。


 他には建築部長、総務課長がいて、それ以外にも現地採用の日本人がいましたが、なかなか濃いメンツばかりです。

 どういういきさつか知りませんが、日本からフィリピンに流れ着き、こっちで嫁さんをもらって住み着いてる人たちですから、ひと癖もふた癖もあって当然なのかもしれません。

 ローカルエンジニアたちの会話は、なにを言ってるのかさっぱりわかりません。


 だ、だいじょうぶか、俺?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る