第7話 現場入りして、私は恐ろしい事実を知ってしまった!
会社での挨拶が終わり、いよいよ現場に向かいます。M籐さんの話では、現場は工場地帯の一角で、主に日本の企業がフィリピンの安い人件費を当て込んで建てた工場が集まっているところとか。
M籐さんといっしょに車で現地入りすると、相当だだっ広い敷地。東京だの名古屋だので、狭い敷地に建てる細長い建物になれていた私には新鮮でした。
そうか横に平べったいのか。ってなもんです。
まあ、工場なんだから、あたりまえといえば、あたりまえだ。
だがそんなことより、敷地内にはなにやらバラックのようなものがちらほら。
しかもひとつじゃない。
「M籐さん、なんですかあれ?」
「現場事務所だよ」
「でけえ!」
なんかあり合わせの板を打ち付けて作ったような小屋で、日本のプレハブよりみすぼらしいですが、その分でかい。
「なんでいくつもあるんですか?」
「下請けのやつもあるからな」
マジかよっ! 下請けごとに事務所あんの?
まあ、こんだけ敷地広けりゃ、なんでもありだな。
下請けの事務所はスルーして、我が社の事務所の中に入ります。
入ったときのまず思ったこと。
いったい
日本だと、小さい現場ならふたり、ちょっと大きめで三、四人。よほど大きいやつでも十人超えることはまずないです(超高層とか複数の建物がひしめき合ってるようなのとかは知らん)。
それが……、
プロジェクト・イン・チャージ(現場責任者)1名。
プロジェクト・コントロール(もろもろの管理)1名。
その他エンジニア数名。
サーベーヤー(測量、墨出し)数名。
電気担当、1名。
設備担当、1名。
ドラフトマン(図面作成)数名。
他、経理、事務、コック、雑用係などなど。
なんだよコックって?
「ここにはキャンティーン(食堂)もあるからな」
そ、そうですか。
「雑用係?」
「いるんだよ。こいつら、自分の役割しか仕事しないから」
そ、そうなんだ。
ちなみに現場所長であるM籐さんがプロジェクト・マネージャー(現場総責任者)。
設備担当のN君がアシスタント・マネージャーも兼ねていて、このふたりが、日本人の施主と打ち合わせをし、それをもとにスタッフを指揮します。下請けを動かすのは、プロジェクト・イン・チャージをはじめとするローカルスタッフ。
ここまで説明を受けて、私は恐ろしいことに気づいた。
俺のやる仕事がなにひとつねえっ!
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