第2話 おまえは釣りバカの浜ちゃんか?
こうして急遽、海外赴任することになった私はいろいろ準備しなくてはならなくなりました。
まず、パスポートがない。
なにしろ海外に出るのは生まれて初めてなので。
なんでそんなやつをいきなり海外赴任にするんだよっ!
ひょっとしてあなた、英語が堪能なお人なのでは? などと思った方もいるのでは?
そんなわきゃあ、ねえ!
なんにしろ、一週間やそこらで急激に英語力がアップするはずもないのですから、このまま行くしかありません。
あとは野となれ山となれ。
そんなこんなでばたばたしているうちに、だんだん行くのが楽しみになってきました。
まあ、一生のうち、こういう経験をしておくのもいいよね、ってなノリで。
今の現場のごたごたもぜんぶ押しつけて、後腐れなく旅立つのだ。
さらに私にはもうひとつの楽しみが。
なにせ私は当時ばりばりのダイバー。そしてフィリピンといえばきれいな海。ダイビングポイントが多数。
フィリピン行ったら、ばりばり潜るぞっ!
というわけで、いよいよ旅立ちのときは来ました。
名古屋から荷物を持って東京の海外事業部に挨拶に。
海外事業部の人、私の荷物を見てひとこと。
「荷物多いね」
生活に必要なものはぜんぶあっちにあるからと言いたいのでしょうが、そんなものはどうでもいい。
荷物の大半はダイビング器材と水中撮影機材だったのですから。
それを正直に言うと、彼は生暖かいまなざしをくれました。
きっとこう言いたかったに違いありません。
「おまえは釣りバカの浜ちゃんか?」
いや、ひょっとしたら、違いありませんどころか、ほんとに言ったかも……。
(記憶が曖昧ですなあ)
きっとそんなやつは、今までただのひとりもいなかったに違いない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます