第3話 はじめての海外で緊張するって、やっぱりあれだよね?

 東京で一泊した後、私は成田空港にやってきました。

 とうぜん、見送りなどというものはありませんし、そもそも成田に来たのははじめてです。


 こういうところはふつう、初めてのときはパック旅行かなんかで、添乗員に連れられてくるんじゃないだろうか?


 もちろん、そんな人はいない。

 会社の人間が現地まで連れて行ってくれるとか、あるわけがない。

 渡されたのは、チケットのみ。

 とうぜんながら、エコノミーだ。


 ま、まあ、なんとかなるだろう?


 なんとかなりました。飛行機に乗り込めました。

 そりゃあそうだよな。ここはまだ日本だ。


 飛行機が飛び立った後も問題なし。

 そりゃそうだよな。飛行機乗り慣れてるし(国内限定だけど)。


 で、フィリピンは案外近い。で、あっという間に、マニラ国際空港へ。


 き、きた。ついに来てしまった。魔境フィリピンに(ごめん、フィリピン。でも当時のイメージで言えばこんな感じ)。


 飛行機を降りると、南国らしい熱気と、日本で嗅いだことのないような匂い。

 高まる緊張感。

 そう、ここで第一の関門、税関を突破しなくてはならない。

 嘘でもいいから「サイトシーイング(観光)」といっておけ。

 会社からはそう言われている。


 だが、まて。

「滞在日程は?」「サイトシーイング」

「どこに泊まるの?」「サイトシーイング」

「おまえは犯罪者か?」「サイトシーイング」

 ……そういうバカにはなりたくない。


 私はパスポートを出すと、耳に全神経を集中させた。

 ああ、ヒアリングの神よ、降りてきたまえ。


 しかし係の人は、なにも言わずにパスポートにぽんと判子を押した。

 え、もう終わり?


 やった。ファーストミッションクリアだぜ!(ミッションでも何でもない)



 ええっと、ここまで読んだ海外未経験の方、

「そういわれても、もし、なんか聞かれたらやだなあ」と思うかもしれませんが、ノープロブレムです。


「おまえは麻薬を持っているか?」「サイトシーイング」

 これでもきっと通してくれる(半ばあきれながら)。

 それが日本のパスポートだ!

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