第20話

「白虎はさ、この力、継いで良かったと思う?」

寝支度を済ませた玄武に突然問われ、白虎はしばらく考えたあと、笑顔で頷いた。


「うん。これは両親が遺してくれた力だからね。この力で、村の歴史がひっくり返るような大事件に立ち向かえるんだ。こんなに誇らしいことはないよ」

「…そっか……俺、村も、家族も焼き尽くしてしまっただろ。この力を未来に繋げていくすべは、もう…」

「玄武、」


白虎はうなだれる玄武の両手を強く握った。

その大きくて温かな手は、幼い頃から変わらない。


「俺たちは生きてるんだ。生きてる限り、いくらだってやり直すことができる。これから一つずつ変えていけばいい。それが、俺たちのいちばんの仕事だよ」

「…うん。そうだね、白虎」


繋いだ手にぽたりと、雫がこぼれた。







「……できた…!」


丙は出来上がった折紙玉を翳してにっこり笑った。

色とりどりの折紙、部屋の灯りに反射して光る模様が美しい。


繊細な形を指でなぞると、皆の笑顔が浮かぶようだった。皆のことを考えながら折ったのだ、それは当然のことだった。



先輩、どんな顔をするかな…

ふふっと頬を緩めたそのとき、手にした折り紙玉から煙のように影が噴き上がった。

自らに影を落とすその存在にあっという間に丙の血の気が引いていく。

聞き覚えのある笑い声。怨みに満ちたそれは喜びの声を上げながら膨れ上がる。


丙は声を発する間もなく、降り注ぐ影に飲み込まれた。

怨念は屋敷中を駆け回り、濁流の如く全てを飲み込む。



「――時は満ちた。あの日の報いをたっぷり受けさせてあげるよ…!!」


無数の叫び、怨念、そして妖達の狂喜の中、十年前の最後の生存者全員が一瞬にして行方をくらました。




(続)


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