第5話
─「久しぶりだねぇ龍愛」
目の前でにこにこと笑う彼に目を向ける。
彼は西原白虎。私たちの幼なじみで、玄武の従兄。
彼はさらさらと美しい銀髪を低めに結っていた。
その毛流れは、彼の端正な顔立ちを更に引き立てている。
「そうだな」
私はそう笑うと、居間を見渡した。
純和風の家屋はなかなかの広さで清潔感があり、畳や木材の独特な香りと、開け放たれた雨戸から吹き抜ける春風が混ざり合って
なんとも言えない爽快感を生み出している。
「…で?これからどうしろってんだよ」
朱雀が不機嫌そうに頬杖をつきながら問いかける。
それに答えたのは玄武。
「んーとねえ、ノープラン!」
「はァ!?」
朱雀の怒声を受けても、玄武はヘラヘラと笑顔を浮かべている。
さっき朱雀からお呼びだしを食らっていたけど、大丈夫だったのだろうか。
「……そうだね」
白虎がよく通る声色で話す。
「今、妖によって、殺害もしくは神隠しにあう人が続出している」
そんなことは本当に稀な筈なのだけど。
私を襲ってきたあの狐顔の男たちもその一つだったのか。
「今まで妖は森の中でひっそりと暮らし、俺達と対等な関係で生きてきた。お互いの領域には原則立ち入らない。それが普通だったよね?」
そう。だから私たちが妖を倒すなんてことも滅多に無かった。
それが最近になって覆されてきている。
10年前のあの日から、少しずつ、私たち人間と妖たちの関係はバランスを崩してきた。
必要以上に妖が人間を襲うのだ。
まるで私たちを根絶やしにするかのように。
「……その原因を、俺達が突き止めるのか?」
「そうだよー」
白虎の顔は引き締まって冷たい印象なのに、
返事はなんとも脱力したものだった
「手がかりもないのに…?」
「あるんだなぁ、それが!」
私の問いかけに玄武が答える。
所謂どや顔と一緒に。
その立てた人差し指はなんだろう。
と思っていると、玄武は
な、ん、と
と人差し指の動きに合わせてしゃべりだした。
…なんかうざったいな……
「俺たちの村が襲われた事と関係がありそうなんだ!」
「どうして?」
「一番被害が多いのは村があった場所の周辺と、村から逃げ出したごくわずかな人達なんだ」
だから、全国的に起こっているように見えるのは逃げのびた人達が襲われているからだという。
そして、村は全焼したが、あの日私達が入っていた森と神社。そして神社の奥に植わっている桜の大木が奇跡的に無事だったらしい。
「関係ありありだよね??」
「はあ……」
後者はよく分からないが、前者は良い手がかりだと思った。
その時、
───ドォン!!!
大きな衝撃と共に、庭に何かが落ちる音がした。
(続)
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