第一章 必然の出会い

第1話

風が踊る中、

一人の少女は刀を片手に深い森の中に佇んでいた。



少女は走り出す。


顔に当たる風が痛い。


スピードを上げて一気に森を走り抜けた。









しばらくして路地に出ると、ゆっくりとスピードを落として完全に停止。


「はぁ…はっ…ちく、しょ……だからスカートは嫌なんだよ。」



肩で息をしながら悪態をつく少女の名は 東雲龍愛しののめりゅあ




荒い息を繰り返しながら振り向き後方を確認する。


刹那、龍愛の目は二人の男を捉えた。



只の男ではない。目が妖狐のように吊り上がり、口は耳まで割けている。


二人は はあはあと生暖かい息を吐きながら龍愛を舐め回すように見つめていた。



その瞬間、龍愛の心臓はどくどくと脈打ち、瞳孔は瞳いっぱいに広がった。


同時に迫り来る"二人"の狐。



龍愛は左手に持った刀を鞘から抜き構えた。

その刀は丹念に磨かれ、妖しげに赤い光を放ち、刀身には鳳凰が描かれていた。



龍愛は片方の男に飛びかかった。

すれ違い様に男の首に刃が触れ、

鋭い刀によって、男の首は一瞬で跳ね上がった。

ブシュウッという音とともに血が噴き出し、男は倒れる。


残された男は仲間の敵を討つべく、鋭い爪を剥き出しにし、狂気に満ちた鳴声を上げながら龍愛に向かって突進していく。


龍愛はそれを難なく避ける―筈だった。


龍愛の背後に、男がもう一人立っていたのだ。肩に感じる生暖かい吐息…


一瞬怯み、動作が遅れた龍愛の目の前に爪が降り下ろされる。


「ッ!」

思わずぎゅ、と目を瞑ったが、いつまで経ってもその痛みが走ることは無かった。


その代わりに、気味悪い血の香りが漂ってきた。


「…っ?」

そっと目を開くと足元には見るも無惨な肉片が散らばっていた。

後ろに居る筈の男の気配もしない。


そこに居たのは一人の青年。

彼は艶やかな金髪をしており、項の辺りで結っていた。

右手には刀身に朱雀が描かれた赤い刀。

そして刀と同じ赤い瞳は、整った白い顔と煌めく金髪に良く映えていた。



「龍愛」

彼は口を開いた。

その声は芯のある、透き通った声だった。

「お前は…?」

龍愛は何処と無くその青年に懐かしさを感じていた。


「これに見覚えがあるだろ?」

青年は彼女に自身の赤い刀を見せ、問いかけた。


龍愛はその刀を見るなり、目を見開き声を上げた。


「この刀…、もしかして…お前は…朱雀?」

"朱雀"とよばれた青年は あぁ、と頷き優しい表情を浮かべ、


「会いたかったよ、龍愛」


そう言いながら、龍愛を優しく抱き締めた。



(続)



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