nullはnull箱へ
◆
僕はnullを散歩するのが好きだ。nullは最初からnullだったものや、いつしかnullだったもの、今のところnullであるもので溢れかえっている。
null箱は
その紙片にはnull空間についての物語が書かれていて、それらは概ね正しかった。nullに関する記述は当然nullになり、そんなnullがnull箱に入っていても何らおかしくは
僕は少し、この物語を書いた人に想いを馳せた。nullを
null箱を漁ってみると、同じような紙片がもう二つ見つかった。やはりその文は正確なnull像を捉えていて──いやこれはnullであるのだから捉えてい
それからの毎日を、僕はnull箱漁りに費やした。現実でゴミ箱を漁っていたら不審に思われただろうけど、ここはnullなのでまったく心配いら
紙片は毎日見つかった。それを組み合わせていくうちに、僕はノートが単なるnullから脱却していくのを感じた。結局は何も
彼女に逢いたい。彼女が
そんな、ノートがそろそろ完全に復元されそうなある日、僕は紙片に僕を見つけた。僕がいた。彼女は僕を
僕は
「あいたっ」
すると突然null箱から少女が転がり出て、null床で頭を強かに打った。きっと僕が掴むには大きすぎて、今まで引っ張り出せ
混乱している彼女に、そっと手を差し伸べる。そのとき、僕は間違いなく
「……あなた、誰?」
僕はずっと待っていた。
はじめまして。この言葉が本当には届かないことを、僕は知っている。僕たちの間にあるものは、紛れもなくnullであるのだから。
でも、それでも僕はあなたを、ずっと待っていた。それはnullじゃないと、なんとなくそう思った。
◇
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