第43話 文化祭:終焉

 

 部室にかけられた時計の長針が1時を指した。

買ってきたたこ焼きのパックを開ける。

「楽しそうでしたね、愛音ちゃん」

そう、先刻昼食を買いに行くときに母さんと愛音に出会った。

もう、階段アートを見たらしくメッチャ興奮してた。


 あ、このたこ焼き美味。

文化祭に食べるものは普段の3割増しで美味いってやつがキテル!

もう1個口に運ぼうとしたとき、ドアが開く音がした。

「うぇ!?」

そこにいたのは、東先輩。

その右手には、お好み焼きか、焼きそばのパック入りの袋が。

「ごっ、ごめんなさいっ!お邪魔しました!!」

何を思ったのか、扉を閉めようとする先輩。

「東先輩!」

それを、アロラが引き止める。


 「一緒に食べませんか?」


「え?で、でも・・・」

先輩が心配そうに俺の方を見る。

「いいの、かな?私も一緒で」

「当たり前ですよ。というか、なんでダメだと思ったんですか?」

苦笑しながら、答える。


 3人で机を囲んで座る、いつもの光景だ。

放課後の、俺たちの形だ。

「あ、2人とも!見たよ、階段アート!!」

先輩が嬉しそうに話を切り出した。

「凄く、凄かった!!」

「凄い2回言ってますよー」

「う・・・!で、でも、それくらい凄かったよ!!」

「ありがとうございます、先輩。でも、私たちだけで、描いたものじゃないですから」

「それでも、すごいよ!皆すごい!!」

さっきから、先輩、すごいしか言ってないな。

ちなみに母さんと愛音もこんな感じだった。

 興奮MAXって感じ。


 あの絵には人を興奮させる効果でもあんのか?

付与魔法とか使った覚えないんだけどな。




 昼食を食べ終わり、俺達はいつも通りに、シャーペンを手に取った。

習慣になってんのかな?

机の真ん中に置かれたB5の紙の束から、1枚紙を抜き取る。

俺のスキル:【紙抜き取り】はレベル60。

もう見ないでも抜き取れるレベルだ。

紙に向かって、1本1本線を引いていく。

線が集まり、絵になっていく。


 なんか、アロラが白い目で見てくるんだけど。

“なに、感傷に浸ってるんですか。怖いですよ”って顔だな。

「バッチリ合ってますよ。すごいですね」

合ってんのかよ。

スキル:【心読しんどく】もレベル60越えたか。


 


 今気づいたけど、そこまで文化祭らしいことしてない・・・・・・。

時刻は午後3時半。

もうすぐ、文化祭終了。

「でも、いいじゃないですか。私たちっぽいです」

「そか?」

ま、こいつがいいならいいんだけど。


 でも、階段アート作るのとか楽しかったな。

「え、彼方さんにも楽しいって感情があるんですね」

失礼だな、お前!

ま、いっか。

これが俺達の文化祭ってことで、うん。



 外を見ると、変わらずそこに夏がある。

セミが鳴いている。

そういや、もうすぐ夏休みだな。

夏は、長い。


 アロラ-。もうその目はいいぞー。






 あれ?その前に、期末試験あるわ・・・・・・・・・・・・。




 




 






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