第6話 犯される平穏な日常

 午後の授業も終わり、時は放課後を迎える。


「・・・・・・・・・で?なんでお前がここにいるんだよ」

場所はイラスト部、部室前廊下。

「入部届はもう出してきましたよ?」

俺は、女神、もといアロラと対峙していた。

「へぇ、どこの部活なんだ?」

引き攣った笑顔で問いかける。

返ってきたのは予想通りの答え。

「イラスト部です」


 ・・・・・・・・・俺の・・・・・・・・・平穏な日常、が・・・。


 「失礼します」

「ってちょっと待てぇ!!」

アロラがガラッとドアを開けた。

そこには、一足早く部室に来ていた東先輩の姿があった。

「あー、えー、と・・・せ、先輩・・・・・・・・・こんにちわ」

続いてアロラも一礼した。

一瞬驚きの表情を見せる先輩だが、流石2年生。すっと冷静になり、

「う、えぇ、・・・・・・・・・こ、こ、ここんにちわ・・・・・・・・・」

・・・・・・・・・めっさ動揺してらっしゃるやん。


 現在、わたくし、彼方と、女神アロラが東先輩と向かい合う形で座っております。

えー、場の空気はもちろん、重いです。

アロラだけは、気づいていないのか先程からずっとにこやかに微笑んでおりますが、これからどのような展開を迎えるのでしょうか。

とても楽しみですねぇ。

ーーーーって全然楽しみじゃねぇよっ!!!

「・・・・・・・・・はぁ・・・」

「どうかしたんですか?彼方さん。溜息なんかついて。1溜息ごとに10幸せを失っていくんですよ」

「・・・なんだ、そのシステム」

どんなゲームだよ。いらねぇわ、そんな設定。

「というか、彼方さん。速くしてください」

「え?何をだよ」

「紹介です。私と先輩は初対面なんですから」

いや、お前がしろよ!!

「私はやらなくていいことはやらない主義なんです」

こいつ、心読みやがったな!!?

お前はどこのミステリー小説の主人公だよっ!!


 「ええと、先輩?こいつ、・・・この子はうちのクラスに来た転校生なんですけど。俺の従妹で、ですね」

先輩の反応を待つが、何も返ってこない。

「それで、ええと、名前を富士見 アロラって言うんですけど・・・その、イラスト部に入りたいみたいで・・・・・・・・・」

やはり反応はない。

「先輩?」

・・・・・・・・・完全にフリーズ状態だ、これ。

さっきから、ぴくりとも動いてないぞ。

呼吸もしてないんじゃ・・・・・・・・・。

「あ、あのー、先輩?」

肩に手を置く、その瞬間。

先輩の身体がピクッと震えた。

「・・・・・・・・・!??、!?、せ、先輩・・・?」

よく見ると、先輩の口が小刻みに動いてるような・・・。

な、なんか呪文みたいなのが、先輩の口からぁ・・・・・・・・・。

 ここで空気を読まないアホ女神が一言。

KYAM《空気・K・読まない・Y・アホ・A・女神・M》が一言。

「あ、私、今、彼方さんの家に居候の身なんです」

おぃぃいぃぃぃいぃぃい!!!!なんで、普通に自己紹介はしないのに、そこだけ言うの!??

お前はアホのピョン吉右衛門かぁ!!

「ふふ、彼方さんって独特なツッコミ方をしますよね」

「それ、今言うことかっ!!?」


 あぁ、終わったよ、俺の高校生活・・・・・・・・・。

先輩、俺のこと軽蔑したんだろうなぁ。

ふっと、東先輩の方を見る。

が、そこに先輩はいなかった。

「あれ?先輩、どこか行っちゃいましたね。鞄も持って。急用でも出来たんでしょうか」

・・・・・・・・・はぁ・・・マジで終わったわ、これ。


その日、俺はご機嫌な女神様と帰宅した。俺は、もちろん、沈んでいたが。

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