第5話 お約束、的な

〔富士見 彼方視点〕


 翌日、登校した俺は今のこの状況を飲み込めずにいる。

順をおって説明しよう。

いや、まぁ説明しなくても予想はつくだろうか。

ここは、学校だ。

しかし目の前には、女神さんがいらっしゃる。

いやいや、別に俺が朝っぱらから、しかもHRの時間に寝てるわけじゃないよ?

今、このクラスにいる生徒全員が女神さんのそのお姿を拝見しているだろう。

担任が口を開く。

あ、そういやこの担任教師、小泉というらしい。なんて話じゃなく!!

「ええと、今日からうちのクラスに転校生が来ます」

なんで、入学したてのこの時期に!?なんて誰も言い出さない。

男子どもの顔を見る限り、見とれているんだろう。

この女神さんに。

・・・というか、んー、やっぱりか。やっぱりこうなるのか。

なんとなく予想はしてましたですよ?ハイ。

でもね、普通は予想を裏切るもんでしょ?

予想なんてね、裏切るためにあるようなもんでしょ。

そんなお約束をなぞらなくたっていいだろ!?

「ほら、自己紹介をしてください」

ん?あれ、そういや・・・。

こんな時ではあるけども、そういえば・・・・・・・・・女神さんの名前ってなんて言うんだ?

女神さんが、チョークを持ち、黒板に向かう。

カッカッと音が教室に響き、

生徒達が、女神さんの腕の動きに意識を集中させる。

書き終わった。


 『富士見 アロラ』


教室中の首という首がグルンッと俺の方を向いた。

わぁ、こんなに沢山の人に苗字を覚えて貰ってたんだぁ、感激ぃ!

・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれぇ?

「って、ちょ、お前っ!!」

ガタッと椅子を鳴らし、立ち上がる俺。

しかし、とうの、女神さんはいたって冷静に、

「今、立ってくれた富士見彼方くんは血縁上従兄いとこです。現在私は、彼の家に厄介になっています」

一瞬、時が止まる。

俺の心臓もスター・プラチナ。

クラスが、女神さんを見て、それから俺を見た。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

「「「はぁあぁあああああぁああ!???」」」

「おい!!彼方!!お前っふざっけんなよぉ!!」

「女の敵ぃ!!」

「一辺、死んでこいボゲェ!!」

「漆黒の闇暗殺者ブラック・ナイトアサシン!!!!」

・・・・・・・・・おおぅ・・・。

最後のは、置いておいて、

俺・・・終わった。


 昼休みまで、休み時間になるごとに男子どもに追いかけ回されました。

ちなみに女神さんの方は、というと女子に色々質問攻めにされてました。

「アロラさんってハーフなの?キレイな髪の毛ぇ」とかね。


「というか、お前っ!あんな可愛い従妹がいたなら紹介してくれたっていいだろ?」

弁当を撒き散らしながら、クソイケメン野郎。山田(←第1話参照)が叫ぶ。

「食べながら喋んな・・・。別に・・・俺も知ったのついこの間だし」

「へー、そうなんか!どこの国のハーフなんだ?メッチャ美人だよなぁ」

「さぁな」

「ん?知らねぇの?」

「どっかの異世界とのハーフなんじゃねぇか?」

女神だし。

「ははっ、確かにな。あれは異世界から来たって言われても信じちまうよ!」

そういう意味じゃねぇのだよ。ワトソンくん。

 そして、ちなみに現在女神さんは早速クラスの女子大半と打ち解けてワイワイガールズトークされております。

ん~。初日から、楽しそうだねえ、女神さんよ。


 おかげでこっちは、ちょーブルーだってぇの。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る