怠惰

第1話 なんでわざわざ、学校に

気づくといつもの自分の部屋だった。

ーーーなんで、あんな夢・・・。

なんとなしに壁に掛かったカレンダーを見る。

日付は、2016年 4月25日 月曜日。

「ーって!月曜じゃねぇかっ!!」

そう、学生に(大半の)とって1週間の中で最も登校拒否に陥りやすい月曜日。

「あぁぁああ!!なんでわざわざ学校に!!」

寝間着である学校指定のジャージを、まだ真新しい制服に着替え階段を駆け下りる。


俺はついこの前、公立の高校に入学したばかりだ。当校に入学を希望した理由はなんですか?と聞かれて、

答えはもちろん、近いから!

徒歩15分!

自転車で5分ちょい!!

皆がなんでわざわざ1時間だとか、かかる高校を選ぶのか理解に苦しむね。


親の作ってくれていた朝食を口に運び、顔を洗い、歯を磨き、鞄を持って、自転車にまたがり、こぎだす。

太陽の光が眩しい。

そりゃ、そうだ。この土日。完璧な引きこもり状態だったんだから。

ってか暑い・・・。まだ春だろ?

地球温暖化、止まってくれよ。マジで。

はぁ・・・・・・・・・。なんでわざわざ学校に・・・。


HR10分前に学校についた。

朝練終わりの先輩達と、登校してきた同級生でごった返す廊下を抜けて教室に入る。

窓を開けて、風を入れる。

んぅ~。風が気持ちいいね!席が窓際でよかった!!しかも最後列だし。

「おぉ!彼方じゃん!!今日は早いのな!」

・・・・・・・・・。

「はぁ、なんでそう、元気いっぱいいい子ちゃんなんだよ、お前・・・」

人がいい気分で、風にあたってるところに。

「ははっ!元気いっぱいいい子ちゃん?相変わらず意味分かんないこと言ってんよな、お前!」

目の前にいる、いかにもモデルとかやってそうな、THEイケメンは俺の小学校からの悪友だ。

こいつが友達と呼べる存在になってしまったのは甚だ遺憾だが、まぁ悪い奴では、ないし。多分。

んで、こいつ、このイケメン、名前は山田耕太郎。顔に合わず、なかなか普通な名前だが女子に言わすと「そこがいいっ!!」だそうです。

要するにモテてるわけね。こいつ。

ったく、爆発しろよ。青春街道ウルトラマリン野郎。

しばらくすると、教師が入ってきた。まだ名前も覚えてないんだが。

中年のおっさんだ。

うん、なかなかにメタボってる。

何気に学校で一番楽しい時間は、このおっさんの揺れるお腹を見てる時かもしれない。

はぁ・・・・・・・・・なんでわざわざ学校とか来たんやねん。俺・・・。


そうこうしてるうちに(いや、特に何もしてないが。授業中も寝てただけだし)時間はすぎ、時はようやく放課後を迎える。

だが、しかぁしっ!!!!

俺にはまだ困難が待ち受けているのだ。

【部活】それは、青春を謳歌する者達の個性が爆発する時間である。

ある者は、運動部で汗を流し、ある者は文化部で今までの自分と戦う。そういう時間なのだっ!!

はあ・・・・・・・・・。

嫌だ・・・はよ、かえりてぇよぉ。おっかぁ・・・・・・・・・。

この学校はあろうことか、全生徒に部活動に入ることを強要するのだ。

俺は【イラスト部】ってのを選んだ。絵は得意な方だし、なにより、楽そうだから!!

だが、間違いだったんだよ。この選択は!

一日に10枚以上イラストを描く。それがノルマ。

マジデスカ・・・。

止めようにも顧問の【部員少ないんだよ視線】が痛いし。

しゃーなし、部室へと歩く。できるだけ、遠回りで。


校舎の3階、端っこの空き部屋。そこをイラスト部、部室としてある。

扉を開けると、

そこには先客がいた。


俺以外の部員。といっても、彼女しかいないんだが。

「あ!彼方くん!!おはよ、じゃなくてっ!!こ、こんにちわっ!」

「こ、こんちわ」

こちら、2年生の東堂 あずまさんです。はい、女の子です。ちょー可愛いです。

天使です。この部活に入って唯一良かったと思えること。東堂さんがいた!!

おっちょこちょいなところがホント可愛いんすよぉマジで。部室にいったらお茶を出してくれるし、嫁に欲しい!

目が潤されたところで

とりあえず、開いている席に座る。

今から10枚、キツいなぁ。ずっと東堂さんを眺めて過ごしたいよ。

あ、そうだ。

「あの、東堂さん。イラストのモデルになってもらえませんか?」

「え!?わ、私がですかっ!??」

慌てる姿も可愛いなぁ。

「ダメですか?」

「い、いえ、ダメではないですが。私はもう10枚描き終わりましたし」

うん、流石だ。

東堂さんは、絵が上手い。そして可愛い。

しかも描くスピードがハンパじゃない。その上可愛い。

「ですが、私でいいんでしょうか・・・。自信がないです・・・。」

あぁ、俯く東堂さんも可愛いなぁ!

「大丈夫ですよ。先輩、可愛いですし、10枚以上描けますよ!」

「ふ、ふぇ!?か、かわ!!?」

ふふふ・・・・・・・・・。慌てる先輩も可愛い!!

ギャルゲーで鍛えたこのスキル!今こそ使う時!!

「そうです!!先輩自覚無いんですか?先輩ってすっごく可愛いんですよ!?一家に一台欲しい可愛さです!!」

「え、ぇええぇえぇぇ!!そ、そんな、うぅうう・・・・・・・・・。か、可愛いなんて言って貰ったこと1回も・・・。」

「自信持って下さい!先輩は可愛い!だから、モデルになってください!」

「わ、わかりました。そこまで言ってくれるなら・・・・・・・・・!」

よっしゃあ!!これで、先輩をジロジロ見ても許されるってことだっ!!

10枚なんて、モデルが先輩なら一瞬だぜ


実際、30分ほどでノルマは達成した。

「ありがとうございました。先輩」

「い、いえ。こちらこそですっ!!」

ぺこぺこしてる先輩も可愛いなぁ。

ってか俺、ここに来てから先輩可愛いしか言ってない気がするんだが・・・。

まぁいいか。

どっかで見たぞ。恋はいつでもハリケーン!ってな!

んーーーー・・・・・・・・・というか・・・・・・・・・眠たいな。この春独特のむわっとした空気がそう感じさせるのかも。

下校時間まで、あと2時間ってとこか。

「先輩、俺ちょっと一眠りするんで。先に帰ってて貰って結構ですよ」

「え、えぇえ!彼方くん!?」

先輩の声がだんだん薄くなっていく。

すぐに俺の意識は溶けていった。

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