初恋

雨乃時雨

1

 僕が五歳くらいだった頃、僕の家にロボットが来た。人間で言うと十七歳くらいに見える、メイド型ロボットだった。

 彼女はよく笑い、よく泣き、たまにはドジをして壊れてしまうような、明るい子だった。彼女の存在は僕らの家族を明るく照らしてくれて、陽だまりみたいな存在だったんだ。


 ……けど。

 ロボットも人間も、いつか最期おわりが来る。

 それは当たり前なことで、悲しい程にありきたりなことで、僕がそのことを知った時にはもう手遅れで。

 彼女に違和感を感じて、壊れる度に彼女の修理をしてくれていたおじさんに彼女を診せた時、おじさんは首を横に振った。

「ほら、心の歯車が錆びてきてる」

 おじさんが彼女を分解して見せてくれた彼女の心。黄金色に輝いていたであろう心の歯車の一部が、赤錆色になっていた。僕はその歯車から視線を逸らした。

 段々と、彼女の顔から感情が消えていくのが分かった。

 彼女は笑わなくなった。でも、両頬を手で持ち上げて笑おうとした。

 彼女は泣かなくなった。でも、頬に水色の絵の具で雫を描いて泣こうとした。


 もう……もういいんだよ。

 僕は彼女をそっと抱きしめた。彼女が初めて僕の家に来た時、彼女の方が身長がずっと高かったのに、もう今は同じだ。

 ゆっくりお休み。

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初恋 雨乃時雨 @ameshigure

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