カブ・ハンター ~forest princess in tokyo~(6)

 風呂と食事が終わり、夜が更けてきた。

 俺としては夜はこれからが本番、動画を見たり、この時間には人が集まるネット掲示板を見たりしているところだが、今日は早寝することにした。

 数年ぶりの外出と、リアルの屋外には色々と怖いものが居ることを知った経験で、ここしばらく経験無いくらい疲れていた。

 とりあえずしばらくここに泊まることになった女の子には、どこで寝てもらうのか少し考えたが、二階にある予備の寝室を使うことにした。


 一人暮らしには充分すぎるほどの部屋数のある一軒家。二階だけで六部屋あるうちの三部屋は書籍、コミックとフィギュア、トイ類のコレクションルーム、ほとんど着る事の無い服や靴、バッグ類が収納されたウォークインクローゼットで、各々の部屋には物が詰め込まれている。

 もう一つの部屋はPC&オーディオルームで、その隣に和室があった。

 他の部屋とは対照的に、ほとんど物を置いていない部屋で、内装も旅館の一室のような作り。

 寝ている時にはネットやコレクションから開放される生活に憧れてそういうふうに作ったが、結局のところ常に機材が作動音を発するPCルームのほうが寝心地が良く、実際にこの和風寝室を使ったことはほとんど無い。

 

 二人で歯を磨いた後、少女を和室に案内したところ、少女は俺を見て言った。

「おまえもここで寝るのか?」

 もう眠気に襲われていた俺は適当に返事した。

「隣の部屋で寝るよ」 

 少女はドアを開け放った隣室と和室を見比べ、俺が寝るPCルームのほうに入ってきた。

「ここで寝るのか?」


 俺はこの少女が、俺を守るという義務感に駆られてるのかと思った。あるいはこの中学生ほどの体格の少女が、一人で寝ることを怖がっているのか。

「お前は獅子を誘う餌だ。常に傍に居ないと意味は無い。私はここで寝る」

 少女はそれだけ言うと、俺のベッドと出入り口のドア、一つだけある窓の距離と位置関係を実際に歩いて確かめ、それら全てが視界に入る大型モニター前の床に寝袋を広げ始めた。

 横目でチラっと見たところ、随分汚れた寝袋はグースダウンの高級品。俺の知識ではベッドの上に乗っている通販の羽毛布団の数倍の値が張る。


 ハンターカブの荷台に乗っていた荷物袋を枕にした少女は、銃身を切り詰めた散弾銃を中折れさせて、装填されていた散弾とは別の弾を装填して散弾銃を閉鎖させ、寝袋の中に突っ込んだ。

 それから少女にとって散弾銃より頼りになるらしき、脇差ほどもあるサバイバルナイフを胸に抱くようにしながら、寝袋の中にもぐりこんだ。

 部屋が明るくても暗くても気にしないといった様子で、早々に寝息を発て始める少女。

 俺は灯りを消してベッドに入った。眠って何もかも無かったことにしたい気分だった。

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