ありす、アリス
初めまして、アリス。初めまして、ありすさん。
……、ここは…どこ?
私さっきまで、人形みたいなこの見た目でなんか豪華な部屋にいたはずなんだけど。何この真っ白空間。
見渡してると、目の前には、私……だったはずの、人形みたいの子がいて。
人形の子も、驚いた表情で。どんな言葉を発したらいいのかわからなくて、二人して黙ったまま、立ち尽くしてると、
「お二人とも」
そう声がして、同時に振り向くと、昨日見た夢に出てきた、えっと…ジョーカー……だっけ。がいた。
「まあ…!ジョーカーさん!またお会いできて光栄ですわ」
人形みたいな子が、ジョーカーに近づいて、嬉しそうにしてる。
こんな良くわかない奴にまた会えて嬉しいって思うんだこの子。
「おや、アリス様。ワタシのこと覚えていてくれたんですね。光栄です」
アリス…様?ジョーカーから発せられた言葉に驚く。というか、あの子もありす、なの?
「おや、ありすさん。どうなさいましたか?」
ジョーカーに話しかけられて、ハッとする。
「アリス…?まあ…!あなたも、
人形みたいな子、改めアリスって子は、すごく嬉しそうな顔でこっちを見てくる。
「私は、ありす」
「私は、アリスですわ。ありすさん、握手ですわ」
手を出されて、まあ断るのも感じ悪いし、とりあえず握手する。
そしたら、ものすごく嬉しそうな顔をする。なんていうか、可愛い子ってこんな感じなんだ。
「お二人とも、仲良くなられたようで安心しました」
って、この子と親睦を深めてる場合じゃなかった。
「この状況、説明して。あなた、何か知っているんでしょ。ジョーカー」
「おやおや、ありすさんも覚えていてくださったとは。ワタシ、とても嬉しいです」
「そういうの、いいから。せ・つ・め・い!」
「承知致しました。ではまず、今のお二人の状況について」
ジョーカーは、むかつく笑顔で話し始める。
「今のお二人は、簡潔に申しますと……魂が入れ替わっている状態です。ワタシにも、何故こうなってしまったのか分からないのですが、同じ時刻、同じタイミングで扉を開けたことがこの事態を引き起こしていると思われます」
「扉?」
「はい。昨夜、お二人とも扉を開けましたよね」
「えぇ。開けましたわ」
「…私も、開けた…けど」
「扉を開ける際に、願い事をしましたよね」
「はい!しましたわ」
「私も…した」
「おそらく、それが原因かと。まぁ、ワタシにも詳しいことは分かりませんので、これ以上は何も言えませんが、同時に願ったことで、入れ替わってしまったんでしょうね。想定外です」
想定外って顔してないんだけど。
「どうしたら元の戻るの」
「そうですね。おそらく、お二人の願いが叶えば、元に戻るかと」
願い…。
「あの…私の願いは叶っていると思うんです」
「おや、アリス様。果たしてそうでしょうか?アリス様が、
さっきまでの表情が少し暗くなる。
なんか空気が重くて、他に気になることもあるし、口を開く。
「もし、叶わなかったらどうなるの」
「それは、そうですね…。一生元に戻らないと思います。ですので、お二人にはぜひとも願いを叶えていただきたい。あの扉を開けられたのですから、お二人の気持ちは本物です。大丈夫ですよ。きっと叶えられます」
どこか嘘くさくて、むかつくけど、こいつの言う通りなのだとしたら、私の願いは────。
「さて、お二人とも目覚める時間です」
「ちょっと待って。もし、どっちかが死んだらどうなるの?それに、周りの人にはなんて説明すれば」
「……後者の質問から答えましょう。周りの方々への説明に関しては、ありすさんが入れ替わったアリス様の世界であれば問題ありません。ですが、アリス様は一国のお姫様ですので、話す方はくれぐれも慎重に選んでくださいね、ありすさん。それから、アリス様は…そうですね、家の方々にはお話ししたほうが良いかもしれません。その他に関してはワタシの方で対応いたします。最後に…死んだらどうなるのか、ですが……当然、そこで終わりです。お二人は魂が入れ替わっていますので片方が死ねば、元に戻ることは不可能です。ですので、頑張ってくださいね。ご自分の、願いの為に────」
「ちょっとジョーカー!!アンタ、こんなところで何してんのよ。まさか、サボってんじゃないでしょうね。アンタがサボるとアタシの仕事が増えるんだからやめてよね」
「おや、サボってなどいませんよ」
「アンタ、干渉したでしょ」
「さて、何話でしょう」
「アタシは別にいいけど、怒られても知らないわよ。それと、分かっていると思うけど物語をかき乱すのだけは───」
「ご安心を。ワタシはただ、楽しんでいるだけですので」
ジョーカーの笑みは、いつだって不敵で不気味。
願いをかなえるには、異世界に行かなきゃダメですか? ぺんなす @feka
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