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そのテーブルの上には、赤色(あか)の聖布(シルク)に包み込むかのように置かれている水晶球(クリスタル)があり、その水晶球(クリスタル)は,眩しいぐらいのアクアブルーの光りを放ち、真っ暗な部屋の中をオーシャンブルーに染め輝かせていた。
チェアの横には、ウッドテーブルがあり、その上にはパソコンが置かれている。
テーブルの左側(壁側)には、アッパーライトが黄色の光りで天井を照らし、月光りにでも照らされているような印象を受けていた。
裕史は、まるで幻想漂う世界に迷い込んだような気分になっていた。
「早く出なさいよ!
わたしの神聖な占い部屋なんだから、部屋の中が汚(けが)れるじゃな~い!」
瑞穂は眉間にシワを寄せながら、壊れた襖の枠組みを拾い集め、隠すように作業台の後ろ側へと押し込む。
「瑞穂の部屋に初めて来るけど、パソコンとポートレートばかり目につくな。
こんなに広々とした部屋なのに、壁紙も家具もシンプルすぎる・・・
まるっきり、オンナっ気がないよなぁ・・・」
瑞穂は無神経で呆れた表情(かお)で言う裕史に目をパチクリとさせ、再確認するように部屋の中を見渡し・・・開き直ったような表情(かお)を見せる。
「・・・い~じゃな~い。
あまりオンナオンナした部屋だと、近くにいるオオカミさんを刺激して、欲情(サカリ)づかれたら、わたしが迷惑して困るでしょう?」
裕史は瑞穂の誘惑するような流し目と、怪しげな笑みを薄っすらと浮かべて、誘いをそそるような大人びた色っぽい声を目の当たりにすると、何もなかったように瑞穂の前を通り過ぎて行く・・・
瑞穂は冗談半分にやったにせよ、あのどスケベな裕史が何の反応も対応すらしてくれない事で、アングリと口を開けたまま、流し目のまま、冷たく裕史を目で追う。
裕史は、満点の笑顔を見せると腕を組む。
「いやあ~、本当にオオカミになる雰囲気の無い部屋で、思わず安心するよww」
裕史が瑞穂にきっぱりと言い切った爽快な気分で、F・レグリ画の『火刑台のジャンヌ』のポートレートを見上げる。と同時に、シェードが宙を舞い、裕史の顔面めがけて、どがっっっ、っっと音をたてて ぶつかり・・・バゴッ と潰れ(つぶれ)たような鈍い音をたてて床に落ちる。
「な、なんで裕史が安心するのよ!失礼ね!」
瑞穂が膨れっ面を見せながら怒ると、裕史は顔に受けた痛さを我慢し、床に落ちたシェードを手に取り、少し斜めに被ると、瑞穂に背を向けた。
「瑞穂の部屋って、職員室や美術館のような緊張感のある部屋だと言う事さ」
裕史は、そう言いながら瑞穂の方を振り返る。
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