第19頁目
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とても言葉に表せない叫び声と共に、飛び回る裕史を冷静な顔で両手を腰に当ててジッと睨みつける瑞穂は、
「早く言いなさいよ!」
と、冷たく怒りを投げかける。
「な、なんでそんなに意地になって怒ってんだよ~」
「当たり前じゃない。
ジャンヌは、わたしの心の中に永遠に留まる目標のヒロインなのよ」
「だから、さっきから言っている女海賊の事だろう?」
「だから、違うの!ところで裕史の勘違いしているその人物は一体だれなのよ?!。わたしの言っているのは、『百年戦争の乙女』の事よ」
「だからジャンヌって・・・あ~足が痛て~・・・
ジャンヌって、『ジャンヌ・ド・ベルヴィル』のことだろう?かの有名な、百年戦争の初期にいた・・・」
裕史が腫れた足を手でマッサージしながら言うと、瑞穂は裕史の言っている事も、会話の流れでは間違いではない事に気づき、目を点にさせる。
「あの・・・裕史。
確かに百年戦争時代には実在したわ。ジャンヌ的話しには間違いは無いけど・・・わたしが言っているのは、火刑になった聖女の事なんだけど・・・」
瑞穂は自分の持つ歴史の知識に少しながらも不安を持ちつつも、首を傾げながら裕史の顔を見る。
「火刑?聖女?火刑なら『マグリット・ポレート』もなっているしなあ・・・
聖女だったら『シエナの聖女・カタリナ』が思い浮かぶだけだなあ・・・で、そのほかに居たっけ?・・・」
裕史がアゴに手を当てながら色々と歴史上の人物を思い出しながら考えていると、瑞穂は自分の知識に完全に不安を抱き、奥の部屋から世界史大辞典を持って来ると、裕史の言った人物を探し出す・・・
「・・・あった。火刑(マグリット・ポレート)も、聖女(カタリナ)も確かに存在していたし、ちゃんと出ている・・・」
瑞穂はその瞬間、裕史の知識に負けていると実感し、ガッカリと深く肩を落とす。
「ま、負けた。今までアホ一筋だった裕史に負けてしまった・・・
この、わたしより、よくぞそこまで知っているのに…何故?わたしのジャンヌを知らないわけ?」
瑞穂は、学年成績最下位の裕史の知識に負けてしまった事で、どっぷりと落ち込んでいる横で、痛みの回復した裕史が腕を組みながらポートレートを見上げている。
「でもさあ、この高くかざしている旗に描かれている絵って意味ってあるのかなぁ?ねえ瑞穂、この『オルレアンの乙女(ラ・ピュセル)。ジャンヌ・ダルク』ってさあ・・・」
裕史がその言葉を発した瞬間、近くにあったラウンドテーブルを持ち上げ、力の限りに裕史の腰をめがけてスイングした。
ぶうぉーーん!
「その意味は、『受胎告知』を意味する、聖なる軍旗よ!」
瑞穂は、怒りの口調で怒鳴る。
ばぐぃぃぃぃ!
裕史は腰に直撃したテーブルの勢いで襖をぶっ壊し、占いの部屋へとぶっ飛び、転がった。
「裕史!『ジャンヌ・ダルク』を知っているなら最初から言いなさいよ!!」
瑞穂はムカつきついでに右足のスリッパを脱ぎ、裕史に向かってぶつけた。
裕史は腰を押さえながらも瑞穂の顔をムッとした顔で一度睨みつけ、初めて入る部屋の中を興味深げに見渡す。
「痛ぅ~ぅぅ・・・
あれ? この部屋って・・・もしかして占い部屋なのか?」
裕史は不思議そうに改めてゆっくりと部屋の中を見渡す。
アクアブルーに彩られている八畳の洋室の占いの部屋の中央には、ラウンドテーブルとウィンザーチェアが置かれている。
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