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「う~ん。いつ見ても、瑞穂のマンションってカラフルな壁だなぁ」
裕史が夕日に染まったマンションの彩りを見上げていると、裕史の横で感動でいっぱいになっている由美佳の姿があった。
「まあ、なんてキレイなのかしら・・・
まるで、大聖堂に彩られているステンドグラス見たいに輝いている・・・」
由美佳が神様にお祈りをするように両手を合わせながら、感動いっぱいに瞳をうるうるさせている横で、由美佳の感動がさっぱり判らない裕史は、由美佳の方をア然としながら見ていた。
「ゆ、由美佳ちゃん。出来ればオレにも、そのいたいけな感動を少しでもいいから分けてくれないかな・・・ハハハハハハ」
瑞穂の住むマンションは、瑞穂のデザイン・設計で建てられた五階建ての鉄筋コンクリートのマンションで、各階ごとにある六LDKの部屋、六室分がぶち抜けの一軒家(揺織家)である。
マンションの壁は、彩りが階層ごとに区切られ、
一階がミントグリーン、
二階がベビーブルー、
三階がクリームイエロー、
四階がコーラル、
五階がウイスタリア と、淡い色彩の階層になっている。
その壁に鮮やかなオレンジ色の夕日が照らすと、五色五階の壁はグラデーションを描き。一階から五階の壁の色彩は、きらきらと輝きながら、五階から一階にかけて順番に、アイリス、ローズ、ピーチ、ペールオーキット、フューシャと、綺麗と言う言葉を超えた、華美的な色彩に変化していく。
「スゴイでしょう?。特定の光りにだけ反応して、壁の色彩が変わるようになっているのよ」
瑞穂が由美佳に言うと、由美佳は関心いっぱいの顔を見せる。
「特定の光り?特定の光りって、どんな光りなんですか?」
瑞穂は関心的な眼差しを見せる由美佳の顔を一度見ると、強い確信に満ち溢れた目を見せながら言う。
「夕日と、太陽の光り。と、聖なる光り」
「聖なる光り? 聖なる光り・・・って?」
「聖なる光り。それは、人間の強いオーラとか。神秘的な輝きを持ち、魂のこもった物の事を言うの」
「・・・その光りが反応すると、どうなるんですか?」
「まだ結果は出ていないけど、多分、今まで見たことも無い不思議な現象が起こるはずよ」
「えっ?今まで見たことも無い不思議な現象ですか?て言う事は、このマンションって神様以上の存在なんですか?」
「そうかもね。でも、わたしが作ったんだから、わたしが神様以上かも・・・」
由美佳が驚いた顔を瑞穂に向けると、瑞穂はその日を待ち遠しむ喜びが、顔いっぱいの笑顔に変えていた。
由美佳は瑞穂の笑顔を見ていると、夢いっぱいの世界に入って行くような気分になった。
「夢が叶うといいですね」
由美佳が瑞穂にやさしく微笑んで言うと、裕史が慌てて二人の間に強引に割り込み。由美佳の手を握りしめたと同時に、手を引っ張り、壁側へと連れて行く・・・
「ゆ、由美佳ちゃん、絶対に信じちゃダメだからね。瑞穂は発明や改造が大好きな、おてんばJKだけど、神様どころか、仏様の木彫りも彫れないだからだからさあ・・・。
だいたい、こんな彩りで光っていると、通りすがりのサラリーマンとか、ペンギンやジュゴンが見たら、パチンコ店とかキャバクラのネオンとか間違って入ってしまうほどの派手派手な、行き過ぎた彩りの・・・」
どがっ!
瑞穂が何気なく決めた背足上段回し蹴りが、裕史の顔面を直撃し、その勢いでマンションの入り口の中へと倒れこむ・・・
「なに、訳の分からない意味不明な事言いながら、どさくさ紛れに由美佳さんの手を握っているのよ!さっさとマンションに入りなさいよ!!」
瑞穂が裕史に怒りながら言うと、裕史はエレベーターの前で倒れたまま、瑞穂に手を振り、愛想を見せる。
「オレが一番、一等賞!
はぁ~い。もう、とっくに中に入っていま~しゅ・・・」
由美佳は裕史のおどけた口調に笑いを堪えながらも、瑞穂の乱暴的なコワさが緊張感を持たせ、顔を引きつらせた。
恐る恐る瑞穂の方を気にしながら、瑞穂に軽くお辞儀をして中へと入って行く。
裕史が持ってきた壊れた自転車(バイク)を、入り口横の壁際に置いた後に瑞穂は呟く。
「もう。裕史がこんなに軟派だったとは知らなかった・・・
・・・でも一日でも早く、裕史と那由美をくっつけさせないと、わたしの遠い未来・・・わたし自身の存在が大変な事になっちゃう・・・」
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