第12頁目 

 その瞬間、裕史の人格が戻り、疑問符の進化も停止した。

 裕史の人格が戻った事に笑顔を見せた瑞穂は、軽く拳(こぶし)を握ると、裕史の頭へとゲンコツをする。

 ぽかっ!

「いっ、痛って~っ……

 な、なにすんだよ~~痛てえじゃね~かよぉ! 

 いきなり殴りやがってえ~」

「あら? 痛みは感じるんだあ~^^。

 ねえ裕史。発声練習とストレッチは、自分の家でやった方がいいわよ」

 瑞穂が笑顔を裕史に見せながら言うと、裕史は瑞穂の言っている意味が解からず、口をポカ~ンとあけたまま瑞穂を見る。

「ん? あれ? オレが何かしたのか?」

 裕史には、まったく記憶が無かった。

「いいえ別に何もしてないわよ。ただ、壊れた自転車(バイク)を持ち上げて、わたしの足に躓いて(つまづいて)転んだだけよ^^」

 瑞穂が何も無かったように平然な表情を見せる。裕史は首を傾げ、ふと思い出したかのように、壊れた自転車(バイク)をジッと見つめると、悲しい顔を見せ。タイヤを手に取り、涙目で言う。         

「み、瑞穂ぉ~、オレの自転車(バイク)どうしてくれるんだよ~~」

「何言ってるのよ裕史。前輪(フロントタイヤ)だけでも無事だったなんて、とてもラッキーじゃな~い。スポークも折れてないし、ホイールだって変形さえしてないし・・・まだまだ使えるじゃな~い」

 瑞穂はニッコリ笑顔で裕史をなぐさめる(?)と、由美佳の手を引いてマンションへと再度足を進めた。

「由美佳さん。こっちよ・・・」

 裕史は冷たく去って行く瑞穂の後ろ姿を見つめて呟く。

「ム、ムゴイ・・・」

 瑞穂は裕史の方を気にかけながら振り向き、ポツンと佇む(たたずむ)裕史の哀愁漂う(ただよう)姿が目にとまる。

 瑞穂はそんな姿を見つめながら、『男のクセにいつまでもイジイジすんな!』と、心の中で思い叫びつつも、やさしい言葉を投げかける。

「裕史~~!早くおいでよぉぉぉ~~。

 裕史が居ないとつまんないでしょうぅぅ~

 裕史の自転車(バイク)、ヒマな時に直しておいてあげるからさぁ~~」

 裕史は瑞穂の呼ぶ声を耳にすると、いかにも待っていたかのように、元気いっぱいに嬉しがり、瑞穂のところまで走って行った。 

「あ、裕史。目薬さしたほうがいいわよ。さっき、淡黄緑色(レモングリーン)に充血していたから・・・」 

「へっ? レ、レモングリーン?」

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