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「へえ~、由美佳(ゆみか)ちゃんって言うのかあ。
すごく、カワイイ顔と名前だね」
瑞穂のマンションから歩いて二・三分程度の場所にある、小さな公園に裕史はいた。
裕史は瑞穂のマンションに行く途中に由美佳に声を掛け、由美佳がイヤがっている事などは全く気にせずに、一方的に話し掛けていた。
由美佳を強引にブランコに座らせると、裕史は由美佳の横の空いているブランコに座った。
「由美佳ちゃんって、高校何年生なの?」
裕史が由美佳のあどけない表情をニタニタとスケベ顔を浮かべながら見ていると、由美佳は表情を困らせ誰かに助けを求めるように周辺(まわり)をキョロキョロと見渡す。
「ねえ、早く教えてよ。由美佳ちゃぁ~ん」
「あ、あの私、高校一年生です・・・」
裕史のひつこさに困り、仕方なく由美佳は応える。
「わあ、オレより年下なんだ。
ねぇ、ど、何処の高校なの?
ねえ。
オレは、ねぇ、近くの高校の・・・ぐゴッ!」
ドッ、ダッ、バッ、
グガガガガ・・・
グァッシャ~~ン!
裕史の背後から痛烈必殺の回し蹴りを、裕史の頭、肩、腰へと決めた瑞穂は大いに怒(いか)っていた。
瑞穂の回し蹴りを背後から無防備に食らってしまった裕史は、前方に転がるようにぶっ飛び・・・
目の前にあったシーソーにぶち当たり・・・
自分の自転車(バイク)をブッ壊し・・・
ようやく止まった。
「裕史。来るのが遅いと思ったら、こんなカワイイ、ショートカットのコをナンパしていたのね?!」
裕史は多角形に変形を遂げてしまった後輪(リアタイや)に首を突っ込みながら、目をまわして倒れた。
「大丈夫だった? 裕史にナニもされなかった?」
瑞穂が由美佳を心配しながら言うと、由美佳は両手を口に当てて驚いた表情で裕史の方を見る。
「あ、あの・・・あのヒト大丈夫なんですか・・・?」
瑞穂は裕史の倒れている姿を一度チラッと見ると、由美佳にニッコリ笑顔を向ける。
「大丈夫。自転車(バイク)は、無残にボロボロだけど、裕史の場合は、体力練成になってるから、心配はしなくていいわ。安心して^^。
・・・で、ナニもされなかった?」
瑞穂は由美佳の服装の乱れやケガの心配をしながら、由美佳を調べるように見渡す。
由美佳は瑞穂にジロジロと見られている事が恥ずかしくなり、顔を赤らめて下を向く。
「あ、あの~私があのヒトに道を尋ねただけで・・・それであのヒトが一方的に話しを始めて・・・その・・・私・・・」
恥ずかしながら応える由美佳に瑞穂は、目をキョトンとさせながら聞く。
「道?家でも捜しているの?」
瑞穂が由美佳に聞いていると、回復した裕史が二人を驚かすように突然背後から現れた。
「そうだよね~由美佳ちゃん。家を捜していたんだよね~。
オレがさぁ・・・」
ズゴッ!
瑞穂は反射的に裕史へ必罰(ひつばつ)のかかと落としを決めると、裕史はその場に崩れ倒れた。
「うるさい裕史!・・・えっ?
由・美・佳。さん? えっ?」
瑞穂は聞き覚えのある名前を耳にするとスマホを見直し、依頼人の名前を再確認する。
確認を終えるとスマホをポケットに入れ、由美佳におもいっきりの営業スマイルを見せる。
「あなたが、お客さんの“松森 由美佳(まつもり ゆみか)”さんね。
初めまして、占い師のミズホです。」
瑞穂は両手を後ろで組むと、可愛らしく首を傾げて挨拶をした。
占い師での名前は、『 ミズホ 』として通しているみたいだ。
由美佳は占い師の瑞穂を目の前にすると慌ててブランコから降りて、緊張しながら初対面の瑞穂に向けて深く丁寧に御辞儀をする。
「は、初めまして、松森由美佳です」
瑞穂は由美佳のとても丁寧な御辞儀を目にすると、つられるように御辞儀をし、二人は同じタイミングで顔を上げて照れ笑いを見せる。
瑞穂が由美佳に占いをするマンションの場所を教えると、二人は気の合った話しに華を咲かせながら歩き出す・・・
二人がキャッキャッとしながら歩いている後ろのほうで、瑞穂のかかと落としを食らい倒れた裕史が、痛みを感じないまま無言に立ち上がり、眉間にシワを寄せて瑞穂に向けて強く睨みつける。
瑞穂は裕史の強い殺気を感じながらも何度か振り向き、笑顔を見せて話し続ける。
裕史は何十秒か瑞穂を睨みつけると、視線を自転車(バイク)に向け、淋しいそうな顔で壊れた自転車(バイク)へと歩き出す・・・
裕史は完全にスクラップと化してしまった自転車(バイク)の前で立ち止まると、唯一無事だった前輪(フロントタイヤ)を左手で持ち、右手を強く握り締め、
瑞穂に背を向けて、怒りを込めながら呟く。
「どうしてだ?どうして瑞穂は、オレばかり攻撃するんだ?
オレだって、毎日のように瑞穂のストレス解消のオモチャにされりゃあ、ストレスが溜まるんだぞ!」
裕史は怒りが倍増している自分に気づかず、怒気の興奮を見せたまま瑞穂の方へと歩き出す・・・
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