第9頁目
「疑問符かあ・・・まさか裕史にねぇ・・・
ま、いっか。多分大丈夫でしょう・・・カワイイかったし」
瑞穂は少しばかり気にかかる事を考えながら、マンションの前で依頼人を待っていた。
何度もスマホの時刻を見ながら依頼人を待つ瑞穂は、マンションの壁に寄りかかり、周辺(まわり)を見渡す。
「わたしのお客さん、ずいぶん遅いなあ・・・
もう、四時二十二分になるのに・・・」
依頼人に待ちくたびれ、半分諦(あきら)めた表情を見せると、
「・・・お客さんに何かあったのかなぁ?」
と、安否を心配しながら、疲れたタメ息をつく。
「はぁ~あ・・・」
壁から離れ、眩しいぐらいに映り照らす夕日に目を細めると夕日に背中を向ける。
背中まである長い黒髪が微かに吹く生暖かい風にゆっくりと流されている事に気づくと、手うちわで何度か顔を扇ぐ。
おもむろにカバンから淡い紫色(パウダー・パープル)のリボンを取り出し、後ろ髪をポニーテールに束ねて結ぶ。
まったく来る気配のない依頼人に、顰(しか)めた顔で何度もLINEを確認する。
「変だなあ・・・キャンセルは、無いみたいだし・・・」
すっかり待ちぼうけに疲れてしまい、依頼人の事を気にしながらもとりあえずマンションの棟内で待つ事にした。
マンションのドアを開けて中に入ろうとしたその時、何処からともなく反響して聞こえる裕史のバカ笑いが、入ろうとしていた足を止める。
「ん? 裕史の声だ!
で?、裕史は、いったい何処に?」
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