第8頁目  

 疑問をすればするほど、裕史の心の中に潜み、寄生する『疑問符』が、

突然生命を持ち、一匹が二匹へと分離し繁殖を初めた・・・

 一瞬のうちに繁殖を繰り返し・・・

 手足が生えると、突然踊り初めた。

 とても明るく、表情が豊かで、とても踊り好きな、

 ハテナマーク達である。

 一見手足の生えたオタマジャクシにも見える。


 裕史のストレスや感情・行動や疑問によって、喜んだり楽しんだり踊ったりして、成長、進化、巨大化までしてしまう。

 とてもお茶目過ぎる体質を持っている疑問符達は、生命を持ったお祝いに手をつなぎ輪をつくり、賑(にぎ)やかに踊りをテンポアップさせた・・・

 

 一方裕史は疑問符達とは反対に、落ち込むほど瑞穂の事を心配していた。

「なあ、瑞穂。本当にデリヘルとか援交とかやっていないのか?」

 裕史が心配しながら瑞穂に言っている時、一匹の疑問符が、踊っている最中に弾き飛ばされ、裕史の心の中から飛び出し・・・

 歩道にポトンと落ちてしまった。

 疑問符は瑞穂と目を合わせるとニッコリと微笑み、慌てるように裕史の心の中へと戻った。

 何気なく疑問符と目が合ってしまった瑞穂は、突然の出来事にアッ気にとられていた。 

「わ、わたしが本当にする訳ないじゃな~い・・・

 な、何を心配してるのよぉ~・・・バ、バカね!^^; 」

 瑞穂は疑問符を見てしまった戸惑いから声を震わせて言うと、裕史の顔が青ざめる。 

「ほ、本当にオレに隠してないか?もし、隠しているんだったら正直に話してくれ!

 オレは、とても不安でしょうがないんだ・・・」

「馬ぁーーー鹿。五バイト程度の脳みそ(ハード)しか持たない裕史には理解不能が多いかも知れないけど、わたしはそんな事は、やっていません!」

 瑞穂は、はっきりと否定すると、

 裕史は、安心のタメ息をついて笑顔を見せる。

「ほっ。

 その言葉を聞いてすっかり安心したぜ・・・オレは、てっきりデリヘルとか・・・」

「くどい!

 ひつこい!!

 デリートしろ!!!」

 瑞穂はセーラー服、スカート、スカーフを、裕史に向かって順番に投げつける・・・

 顔に被さり視界を遮られた裕史は、必死にもがく。

「裕史、セーラー服とかカバンに入らないから、わたしのマンションまで持って来てよ」

 瑞穂はペダルに足を掛けると、マンションへ向けて自転車(バイク)を疾走(はし)らせた。

「裕史。じゃあ頼んだわよ~~!」

 瑞穂が裕史に向けて手を振ると同時に、裕史の顔からセーラー服がずり落ちた。

 裕史は視界から遠ざかって行く瑞穂の後ろ姿が瞬く間に見えなくなると、ガク然として呟く。

「・・・み、瑞穂って、とてもヒステリックなんだなあ・・・

 手近にある物をすぐに投げるし……

 ・・・オンナにしておくのがとても残念だなぁ。活発力も持っているし・・・」

 歩道に散乱するセーラー服、スカート、スカーフを一枚一枚丁寧に拾い集め、折りたたんでいると、ポタポタと垂れ落ちる鼻血に自分自身がとても情けなく感じる裕史だった。が、しかし心の中ではスゴく嬉しさを満喫していた。

『瑞穂のセーラー服とスカートかあ・・・グフフフ・・・』

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