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      ▼放課後▲


 無事(?)に一学期の終業式も終わり。担任の三馬先生から、一学期中に幾数回もの説教を食らおうとも、まったく反省の色もなく。まして落胆などする訳もなく。とても平気で陽気元気な顔を見せながら、瑞穂が生徒用玄関口から那由美と一緒に出て来た。



 瑞穂は那由美に手を振って別れると、自転車置き場へと歩き出す・・・

 自転車置き場に着くと前輪(フロント)ストッパーからタイヤを持ち上げ、競走用自転車(ロード用バイク)を出し、ターンさせるとペダルに足を掛け乗ろうとした時、瑞穂を待っていた佐々木 裕史(ささき ひろし)が、瑞穂に向かって手を振る。

「お~い瑞穂ぉ!一緒に帰ろうぜ~!!」

 瑞穂は裕史の声を耳にすると後ろを振り向き、笑顔で手を振り返す。

 裕史は自転車(バイク)を押して瑞穂へと駆けて行く・・・

「あら裕史。まだ単位のほうは、大丈夫のようね?。

 来年もまた同じ学年になれたらいいわね^^」

「お…おい。まだ、一学期が終わったばかりだぞ! 

 来年の話しはするな!オレだって、単位ギリギリで必死なんだ! 

 それから、オレがダブっているような言い方はヤメてくれぇ~^^」

「あれ?ダブってなかったの?。てっきり、ダブっているのかと思った^^」

「・・・な、なんとか順調に高二やってます。ハイ^^」

「あら~ぁ、それはとても残念ね^^」

「・・・・・・・^^;」

 裕史は瑞穂の精神的苦痛を味あわせるツッコミに対応出来ず、目をひたすらパチクリとさせ、アングリとしたまま無言になった。


「・・・あ、ひゃっひゃっひゃヒャヒャ・・・」

 帰り道。十三時十分の歩道に賑わう下校風景を静まらせたのは、独特のバカ笑いを響かせた裕史の笑い声だった。

「一時間も説教されていたってぇ~ひゃっひゃっ・・・」

 裕史が腹を抱えて笑っているその横で、瑞穂は膨れっ面を見せる。

「そ、そんなに笑わなくてもいいじゃな~い!」

「ご、ごめんゴメン・・・ヒャッヒャッヒャヒャ。

 で、でも、終業式に説教されるなんてさあ・・・ひゃっひゃっひゃっ」

「なによ~ぉ!そんなに笑う事ないじゃな~い!。

 けど、そのお陰で校長先生の長~いお話しを聞かずに済んだけどね」

「はっ?終業式には出なかったのか?」 

「その時間帯は丁度、説教中で出られなかっただけよ^^」

「それ。って、自業自得ってやつだろう?瑞穂の場合は、特定人物集中徹底攻撃が凄過ぎるからなあ~」

「だってぇ~、原丘ティーチャーの授業って、とてもつまらないだもん。

 発音も字もヘタだし・・・」

「うん。それはごもっとも^^。

 でも、よく停学や退学にならないのが不思議なんだよなあ~瑞穂って^^」

 裕史は瑞穂の方を不思議そうな顔で見ると、瑞穂はアカンベをした。

「わたし、赤点王の裕史だけには、

 『停学』とか『退学』なんて言われたくありませんよ~~だあ。

 ベエ~だあ~

 わたし、退学にならない裕史の方がとても不思議でしょうがないわ!」

 冷たい口調で瑞穂が言うと裕史は無言になり、下を向いたまま足を止め。イジケにイジケて、すっかりと落ち込んでしまった。

「ちぇっ、なんで~ぃ。頭のいいやつは、何とでも言えるさ。

 オレだって、好きで赤点取ってる訳じゃね~、ってんだあ。・・・なんでぇ~ぃ・・・ったく・・・」

 裕史はその場に蹲り(うずくまり)独り言をブツブツと言いながら、指で地面にのの字を書き出す。

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