最期の闘病期間とは?

 犬は一生の最期の時期、病魔との闘いに、どれくらいの期間を費やすものなのでしょうか? 大変に興味深いテーマなのですが、そのようなデータはどこを探しても見つかりそうにありません。


 臨床の現場にいる獣医師に、体験的な側面から話を聞いてみることにしました。


――ラクーンアニマルクリニック 木佐貫敬 院長――


『いわゆる終末医療という観点からいうと、犬の最期の闘病は、大体2週間から1か月の間だと思います。まずは1週間取り組んでみて、快方に向かうかどうかを見極めながら、更に1週間と伸ばしていく。そして1か月と言うのは犬の体力からも、飼い主さんの疲労度合からしても、限界の時間です。終末期の看護は大変ですから。


 もっと広い意味で、我々獣医師がずっと継続して看ている犬が、慢性疾患が次第に悪化して、治療の甲斐なく亡くなってしまう場合も最期の闘病なのだと考えると、大体1年くらいは闘っているんじゃないでしょうか。病気の種類によっては2年とか。

 その反面で、急性疾患の場合は勝負が早いですね。3日程度か、早ければその日のうちというケースもあります。


 ただ、事は慢性と急性だけで区切れるものではありません。慢性的な疾患であっても、末期にならないと獣医を訪れない飼い主さんも多いですしね。

そもそも闘病というのが、獣医が診察した時点から始まるのか、飼い主さんが愛犬に異常を感じた段階から始まるのかの定義も曖昧です。


 ありきたりな回答になってしまいますが、犬が最期の闘病にどれくらいの時間を使うかは、一概に言えないというのが正直な感想です』


――DATA――


木佐貫敬


麻布大学獣医学部獣医学科卒業

Murdoch Uni Western Australia School of Vet Sceience卒業

Companion Animal Surgery (Singapore) 勤務


在星中は欧州及び豪州の獣医師と交流を深め、約4年の勤務後渡米。フロリダ州マイアミ South Kendall Animal Hospital 勤務 各分野の専門医たちから暖かいサポートや指導を受け多くを学びました。また爬虫類を含むエキゾチック動物診療も幅広く経験。


10年以上にわたる海外生活の中で様々な事例を経験し、現在でも専門医たちとのネットワークを通じて困難なケースについて個別にアドバイスをうけ、日々の診療に反映しております。また、常に国内外の学会や文献をリサーチし、幅広い情報を得るべく努力しております。


日本及び米国フロリダ州・ハワイ州獣医師免許

日本獣医師会・米国獣医師会会員


ラクーンアニマルクリニック ホームページ

https://sites.google.com/site/acracoon/vet



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