第46話 「建国祭、その後」

 悠久なる気を紡ぎし者達を、読んでいらっしゃる皆さんこんにちは。

作者のがんぷと申します。

悠久なる気を紡ぎし者達もいよいよ50話近くまで来ました。

それで読者の皆様にお願いがあります。

この、悠久なる気を紡ぎし者達について感想をくだされば大変ありがたいです。

読んでみての単純な感想でもいいですし、指摘でもありがたいです。

登場人物、話の内容や展開、描写、またそれ以外の部分について簡単な感想でいいので、何卒よろしくお願いします。

どのような感想内容でも大変参考、作者のモチベにつながりますので。

何卒よろしくお願いいたします。


                                                                  がんぷ




●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲





 フォルセル建国祭という一大行事が終わり、賑やかだったフォルセルという国全体が、落ち着きをようやく取り戻してきた。

 フォルセル建国祭が終わって、ちょうど一月の期間が過ぎ去ろうとしていた。

じゃが、未だにワシの身体に気が戻ってくるという気配は一向に訪れていない。

セスクと戦って出来た外傷は、全てが全快し、問題はない。

しかし、ワシにとっての肝心要の気が、セスクと激闘を繰り広げた、それ以降、体の中で気の鼓動を聞いたことはなかった。

気を練ろうとしても、そもそも気が丹田からあふれ出てこないから、気を使用することができないのじゃ。


「ふぅ……」


自室の寝床に倒れ込み、思わず、この何も変わっていない現状にワシは、嘆きのため息をもらした。

時間が経てば、もしかしたら回復してくれるという考えがあったがそれは、淡くもワシの考え違いじゃったのかもしれん。

気を練ろうとしても、何も丹田から流れ出るものはない。

また、無理をして気を練ろうとすると、身体の内部に痛みが走る。

これもセスクの気が、まだ残っている名残であろうか?

だから、この一月の間、ワシは気を練るという、毎日行っていた早朝の行いを出来ずにいた。

やりたいという思いはあるが、それを実行しようとしても出来ない。

初めは、セスクと激闘をしたという疲れもあることから、傷を癒していたが、次第に傷も治り、全快しても、気を練ることが出来ない。

理由は分からない。

他者の気は、自分の気と相いれない。

この言葉が、何度も脳裏を駆け巡る。

気に頼りすぎていたことを、ほどほど痛感した。

このことは、誰にも話していない。

話したところでどうにもならないことじゃし。

ワシ自身の問題じゃからじゃ。

自分の招いた種といったほうが、正しいかもしれぬ。

油断、慢心。

あの時の自分の心の片隅にそんな思いは、果たしてなかったであろうか。

セスクと比べて、経験豊かで、気の使い方においても百日の長が、あるということで過信したところはなかったと自分で思い返してみる。

経験という月日の埋められないことに、幾ばくの過信はしていたと思う。

ワシとしても数多の戦場を経験し、これだけは譲れないという想いもあった。

そこを突かれてしまったのかもしれない。

油断か。

ワシは、自室の寝床の上で寝転がりながら考える。

弛んでおるな。

情けない話よ。

気が無くなったこと、そればかりを考えて気落ちしているのも情けない。

じゃからワシは、気は戻ればいいくらいの考えで新しい気に変わる何かを得ようと、現在寝っ転がりながら思案している。

それとも、気が元に戻るように何かしら情報を集めてみるか。それくらいしか思い浮かばない。


「とりあえずは同時進行でいくとするか。急に気を練ることが、できるようになるかもしれぬしのぅ」


あまり、期待は出来ないがそう思って行動するしかない。

このことは、エヴァやマンダリンには今のところ伏せてはいるが、いつかはばれる日がくるじゃろうな。

ワシは、そうなったとき、どう答えればいいじゃろうか。


「トーブいる?」


悶々とした自分自身での押し問答をしているワシに声をかけてきたのは、エヴァじゃった。

どうやらイーダが、中に入れてくれたらしい。


「いるぞ、どうした?」


ワシは返事を返す。


「入っていい?」


エヴァが、かしこまって聞いてきたので、ワシは部屋の中に入るように促した。


「どうぞ」


ワシは、特にいつもと変わらない様子で返答する。

ドアが開く音がして、エヴァが中に入ってきた。

動きやすい絹で出来たシャツとパンツを履いている。色は水色。エヴァがよく着る服装の一つじゃ。


「今日はどうしたのじゃ?」


ワシは、エヴァに聞いてみた。


「特に用事なんてないわ。建国祭が終わってから、なんだかバタバタと忙しくて、話す機会が中々なかったからね」


エヴァは、ワシの顔を見て、にこりと笑った。

確かに始めの一週間は、ほぼワシは寝たきりじゃった。


「うむ。ワシも帰ってきてから、ある程度、動けるようになるまで少し時間が必要じゃったからのぅ」


建国祭での出来事が、エヴァを成長させたという点もある。

まずは、あの大魔導師であるセスルートとの出会いじゃ。

これはエヴァにとって、非常に大きな成長材料である。


「ところで今、思い返して見ると、フォルセル建国祭はエヴァなりにどうじゃった?」


ワシは、部屋の床の上に座布団を敷き、それに座っているエヴァを見ながら聞いてみた。


「私は色々あったけど、やはり何より一番はセスルート様に会えたことかな」


視線を斜め上に向けて、一月前のことを思い出すかのように、エヴァは思いだしながら答えてきた。

確かにエヴァにとっては、セスルートは特別じゃろうな。

ワシは、仮面の魔道士を一掃するところやベルクと名乗る名高い悪魔を圧倒しているセスルートの姿が思い出される。

ワシの中では一、二を争う強さを誇る男じゃ。

現状ではワシは、この男に勝てる要素がない。


「セスルートさんか、今頃何をしておるかのぅ」


最後にワシ達が、フォルセルを発つときに、わざわざ挨拶をしに来てくれた。

更には、困ったことがあれば、またマリィのお店に来てくれればいいと、真顔で言ったほどじゃ。

そのマリィはというと、セスルート同様に挨拶にはきてくれた。

マンダリンと、よくその場で話していたのを覚えている。


「セスルート様のことだから、とりあえずフォルセルがある程度、落ち着くまで滞在するんじゃない」


エヴァはそう言った。


「確かに。それならセスルートさんなら残る可能性はありそうじゃな」


自分のせいではないにしろ、自分が関わり、壊れたものに対して、セスルートならきちんと補修して筋は通して、帰るような印象は確かにあるな。


「そういうトーブはどうなの? 毎年行っていたのだから、今年の建国祭はどのような印象を受けたの?」


エヴァから、まともな質問が出てきて、安心する。


「毎年見てきたが、今年のはいつも以上に盛大な感じがしたのう。出来事が盛りだくさんで見応えがあったわ」


ワシの脳裏に、セスクとの激闘が思い出される。

そんな戦いが一月ほど前にあり、その中心にワシ等はいたのじゃ。

何故あのような儀式が行われようとしていたのか?

それは定かではないが、それを皆と合力して、事に当たり、打倒する事ができた。


「そうなんだ。毎年毎年が盛大なんだね」


エヴァが、こくりこくりと頷いた。


「まぁ、今年は客将としてセスルートさんがいたのは、かなり奮発したとは思うがのぅ」


ワシはそう言いながら、笑った。


「そうなのね。私としては、万々歳だったけど」


そう言い、エヴァはセスルートから貰った杖を見た。

他者から見れば、それは一見、見た目は普通の杖じゃが、エヴァにとって重要なのは見た目ではなく、誰から貰ったかが重要なようじゃ。


「あっという間の数日間だったわ」


エヴァが、満足したような顔つきでつぶやく。


「満足したのであればよかった。ワシとしても誘った甲斐があるわ」


嬉しそうなエヴァに対して、ワシは言葉をかける。やはり、エヴァには可憐な花のようなにっこり笑顔がよく似合う。

また来年もいければいいのぅ。

お互い何事もなければの話じゃが。


「そういえば最近見ないわね」


エヴァが、不思議そうな目付きで聞いてくる。

一体何を見ないというのじゃ。


「何をじゃ?」


ワシは、聞いてみる。


「あぁ、ええと何て言ったかしら。んんとせーしん……」


エヴァが、途中まで言いかけた言葉を聞いて、ワシはすぐにピンときた。

あぁ、なるほど。


「精神統一か?」


ワシは、エヴァが途中まで口に出した言葉から推測して、答えを導きだした。


「そうそう、うん。精神統一よ。帰ってきてから全然やっているところを見かけないんだけど、辞めたの?」


エヴァが、聞いてくる。

よくよくワシの行動を見ているもんじゃ。

ワシは、エヴァの観察眼に驚く。


「まぁ、そんなところかのぅ」


ワシは、あまり触れられたくない話なので、

それとない返事でやり過ごそうとする。


「おかしいじゃない。昔は毎日のようにやっていたのにしなくなるなんて。もしかして、できなくなった理由とかあるんじゃない?」


エヴァが、中々鋭い指摘をしてくる。

相変わらず、感の鋭い少女よ。


「じゃな。エヴァよ、説明不足ですまなんだ。あれはもう必要なくなったんじゃ。あの精神統一で得るものは終わったんじゃよ」


ワシは、それとなく答える。


「そうなの? ならいいんだけど。何か毎日トーブといったら難しい顔して精神統一だったからさ」


なんじゃそれはと言いたくはなったが、これ以上は突っ込まれて、気が使用できなくなったことがバレても嫌なので、


「まぁ、またやりたくなったら始めるかもしれんがその時はまたいつも通り、何事もなかったかのように振る舞ってくれ」

「わかったわ」


エヴァが承諾する。

ワシは、話題を変えることにした。


「時にエヴァよ。新しい杖になって魔法のほうはどうなのじゃ?」


ワシは、エヴァに聞いた。


「ばっちしよ! だって前よりも確実に強くなったって自分で実感デキるもん」


エヴァが得意げな顔で、ワシに答えてくる。


「ほぅ、どこからそう感じるのじゃ?」


ワシは、あまりにも得意気に話してくるので実際にどこがどう強くなったか聞いてみた。


「まずは単純に魔法の威力かな。それは火属性の魔法を使用するにしても、前の杖に比べてみて、魔法自体の格が上がったような気がするの。あとは最近私なりに勉強してみて昔より、詠唱時間を短くすることが出来たくらいかな」


自分の口から、こうも具体的に言えるのであれば、本当じゃろう。

「なるほどのぅ。威力も上がり、さらに詠唱の時間も短縮になったというのなら、まさに鬼に金棒じゃな」


ワシは、エヴァを褒める。

この短期間で新しい杖を使い込めているからだ。


「ありがとう。それをいうならトーブだって最近、何かやっているらしいわね」


エヴァが聞いてくる。


「建国祭で悪魔に放ったあの土魔法は中々の威力を誇っていたわ。トーブが魔法? って思ったけど、私達はリリス族だし、別にトーブが魔法を使用してもおかしくないしね。リリス族が魔法を使用するなんて日常茶飯事だもん。トーブが使用するっていうのが、少し実感が沸かなかったんだ。今まで素手で殴り合ってたんだもん」


エヴァが、ワシという存在を分析をしながら言った。

まぁ、確かにそう思われてもおかしくないなとワシ自身も思う。


「この間は体力に限界が来ていて、無我夢中で杖を拾い、詠唱をしていたということじゃ」


ワシは、手負いで悪魔と戦っていたときを思いだす。


「それがうまくいったというわけね。まぁ、リリス族だから魔法はむしろばんばん使用していってもいいんじゃないかな。私も教えるよ」


にこにこしながら、エヴァがワシを見ている。

魔法について弟弟子が出来たかのように、ワシを見ている。


「ならよろしくお願いしますかのぅ、先輩。ワシは、まだ何も知らないぺーぺーじゃからのぅ」


ワシは、わざとそう言い、エヴァをはやしたてた。


「まっかせなさい。早速明日から練習するわよ」


エヴァはそう言い、部屋から出ていった。


「分かった。時間はそっちに合わせるわ」


大声で答える。

ワシの返答がエヴァに届いたのか、エヴァは手を上げた。

魔法に対する対処法は、今まで戦ってきた魔道士たちで大体は網羅しているはずなので。学ぶべくは攻撃面でのことじゃろう。

すると、そんなことを考えているうちに、何故かエヴァが戻ってきた。

一体なんじゃというのだ。


「私も実は、今伸び悩んでるんだよね。トーブには、先輩風吹かせたんだけど」


エヴァが、少し申し訳なさそうに言った。


「別に実際、ワシよりもエヴァの方が魔法に対して、時間を割いてるのは間違いないからのぅ。ワシも魔法を使用するのは久々じゃから」


ワシは、本心を告げる。

ワシは、何かしら無駄な部分が発生しているはずだから、まずはそこを直すところから始めるのがいいのかもしれない。

まぁ、まだわからないがの。


「それで、一つ提案なんだけど」


エヴァが指を一本立てて、言った。


「何じゃ? 提案とは?」


ワシはエヴァの言葉に耳を傾ける。


「うん、ルゥに相談しようかなと思って」


エヴァが、人間族の友人の名前を挙げた。


「ルゥか。確かにワシ達以上に魔法には精通しておるな」


ワシは、ルゥの身なりや、魔法を唱えるときの動作や、戦闘中での魔法を使用するときの判断能力を鑑みて、エヴァの言うとおり、ルゥが適任かもしれないと思った。


「でしょ? 私も前に軽く魔法の事についてルゥに相談してみたら、分かりやすく説明してくれて本当に助かったんだ」


エヴァが、親友のことを嬉しそうに話す。

エヴァとルゥは、本当に対極的な二人だ。

どんなときでも、物怖じせずに突き進むエヴァに対して、エヴァの影に隠れて、引っ込み思案のおとなしい性格のルゥ。

出会いは、ワシもよく聞いてはいないが、ルゥがいじめられていたところをエヴァが助けたところから始まったと聞いている。エヴァにしてみれば、当たり前のことをしたと言うのであろうが、ルゥにとってはその当たり前の一回が本当に嬉しかったようじゃ。それから二人は互いに支え合っている。

前に進むエヴァを後方から支援するルゥと言ったように。


「エヴァがそこまで自信を持って言えるのであれば、ワシは疑う余地はないわ。こちらこそ、お願いする」


ワシは、エヴァの提案に賛同する。


「そっか、よかった。なら今度ルゥに掛け合ってみるわね」


今度こそ、エヴァは、すたすたとワシの部屋から出ていった。

階段を降り、やがて、玄関の扉の開く音がして、エヴァは去っていった。


「ふぅ」


エヴァが、隣の自宅に入っていくのが見えた。

友人が何事もなく、自宅に入っていくのを確認して、ワシは再び、寝具に倒れ込んだ。

魔法か。

ワシは再び、気を練ろうとする。

丹田の下には、やはり反応はない。

ワシの気は、一体どこにいったんじゃろう?

また近い将来、セスクと闘う日が訪れるじゃろう。

その時に、気が戻っていて、万全の状態にしておかないと厳しい。セスク本人も実力をめきめきと上げて、必ず来るに違いない。

じゃからこそ、それまでなんとしても気を取り戻す……。


「起きて起きなさい、トーブ」


ワシの名前を呼ぶ声がする。

身体も揺れているので、誰かが揺すっているはずじゃ。

どうやらいつの間にか眠っていたらしい。


「起きておるわい、何度も呼ばなくても大丈夫じゃ」


ワシは、瞳を開けた。

すると目の前に、エヴァがいた。

何か変にそわそわしている。

何となくじゃが雰囲気で分かる。


「一体どうしたと言うんのじゃ?」


ワシは、エヴァに聞いた。

しかし、エヴァは答えない。

ワシは覚醒し、起き上がる。

ワシは、エヴァの両肩を落ち着かせようとして押さえた。


「エヴァよ、落ち着け。一体どうしたというのじゃ」


ワシの問いかけに答えるエヴァ。

そうか、それならばエヴァがここまで狼狽している理由がわかる。

そう、ルゥが昨夜から家に帰っていないということじゃ。

ルゥ個人の意志の表れなのか、事件性が強いのか。それとも。

私達の心配をよそに時間だけが、刻々と過ぎていく。

ワシとエヴァは、ルゥの行きそうなところを当たってみる事になった。




●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲■●▲




 悠久なるソーマを紡ぎし者達第46話どうだったでしょうか?

久々の日常のお話でしたね。

気が戻らない悶々としたトーブに、絶好調のエヴァ。

建国祭という大きなイベントから、日常に戻った彼らはどうなっていくのでしょうか。

冒頭にも書きましたが、読者の皆様にお願いがあります。

このお話を読んでみて、何卒感想をよろしくお願いします。

感想内容については、どのような内容でも構いません。

お話の内容、展開についてだったり、登場人物だったり、指摘だったり。

簡単で短い内容でも構いませんので、何卒よろしくお願いいたします。

では、拙い文ですが、第46話を最後まで読んでいただきありがとうございました。



                                                                   がんぷ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る