第2話 謎の女子校生
第2話 謎の女子校生 (1)
「いったいこれは?」
収拾した戦場、魔物の姿が文字通り跡形もなく消え去り、生き残った隊員たちが今起こった事をいまだに理解できず、茫然としている。その中で一人、白い虎をイメージしたアーマーを装着した凜だけは堂々と立っていた。
そんな凜に対してただ一人、この部隊の責任者、笠木は拳銃をぴたりと構えた。
「あなたは一体何者? 見た所、まだ幼い女の子みたいだけど?」
それに対し振り向いた凜は笠木の胸を一瞥し一瞬顔を歪ませたように見えたが、直ぐに少し笑顔を見せる。
確かについさっき信じがたいほどの戦闘を見せた凛だったがその見た目がアーマーを付けていても小柄な体。あの黒髪のショートはアーマーの上からでもちらほら見え、クリッとした顔もはっきり見え、その可愛さは健在している。そしてアーマーの下に見える制服。スカートの下に見える細く綺麗な足はさっきの戦闘を考えると恐ろしいぐらいに細い。つまり、普通の女子高生と言うのがほとんど丸出し状態だった。
だが、銃口が向けられている女子高生の顔で無かったのもまた事実。柔らかな笑顔には余りに謎の雰囲気がこもっていた。そして、剣を上にゆっくり上げると砂埃を舞い上げるように一気に振り下ろす。その砂埃がおさまるころには既に凜はいなかった。そして勿論、アーマーシステム、シラトラも。
笠木もさすがに現状を直ぐに理解できなかったのか茫然としていたがやがて、再び指揮官の鋭い目にかわりこちらに向けられる。ゾクッと背中に寒さが走る間隔を覚えながら、腰を低くして近づいていく。近くに行けばいくほど案の定、笠木の蟀谷はぴくぴく動いているのがよく分かった。かなりのご立腹らしい。
「あの子は一体何?」
もう、逃げ出したくなるほどに冷たい一言が部隊長から飛んでくる。とてもじゃないが今の亮人にはもうさっきのように強気で討論出来る気がしない。
「いや……、知っているっちゃ知っているんですが、その別人のような……、違うような。と言うよりも俺自身もよく……分かってないような」
「はっきりしなさい!!」
「はい! 面識はあります! でも素性は知りません!」
「そう! じゃあ、泉は素性の知らない子にボーダーラック社の最高機密システムをみすみす奪われたって事でいいのだな?」
「……、そういう事になります……」
「そういう事になりますって……、正直、今起こった事がかなり厄介な事って事に変わりはないって事ぐらい、分かっているよな?」
「は……い」
こぇぇ……、視線だけで殺されそう。
「間宮小隊長!」
「は、はい!」
突如呼ばれた間宮は声を裏返しながら寄ってくる。
「取りあえず、今回の事は上に報告するほかない。泉の処分については追って連絡、それまで謹慎だ。間宮はそれを踏まえたうえで小隊を動かせ」
「はい。分かりました!」
間宮がビシッと背筋を伸ばして返答。その後、ちらりと亮人の方を見て、複雑な顔をした。その間、既に負傷者を運び入れたワゴン車に乗り込んでいた笠木は最後にと亮人と間宮にとどめの言葉を指してきた。
「場合に寄ったら、わたしと間宮、泉。この三つのクビが飛ぶことも覚悟しろ。不満なら泉に言え。今のうちに文句をいっぱい付けておくんだな」
容赦ない一言をドアの閉める音で締めくくりワゴン車は発進していく。どうしたものかと間宮に恐る恐る顔を向けたが、ため息をついてさあと言うように両手を上げただけ。
「ま、今は祈ろうぜ」
「はい……また祈るのか」
あのパスタは祈りが届いたが、今回の祈りは届くかどうか。と、思いながら辺りを見渡すとそこにはまた、悲惨な現実が転がっているのも確かだった。
後ろのビルは一部崩壊。建物の中もしっちゃかめっちゃかと言った所だろうか。地下から魔物によって地面を壊されたりもしたし、吹っ飛んでいったワゴン車は知らない間に知らない店に突っ込んでいた。
多分シェルターから出て来たここ住民たちはさぞやびっくりすることだろう。国とボーダーラック社で修復は行われるだろうが、問題は色々出てくるはず。まあ、生き残っただけましか。状況に寄ったら全滅だったかもしれない。
「ま、俺のクビは吹っ飛びかねない。というか、既に鎌を振る準備がされているよな、俺」
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