エピローグ
翌朝、十時頃。木内宅に、リャモロンの両親が迎えに来た。
「この三日間、娘が大変お世話になりました」
小顔でぱっちりした瞳、エメラルドグリーンに美しく輝く髪の毛をフリルボブにしており、とてもお淑やかそうな感じの母。
「リャモロンがご迷惑おかけしませんでしたか?」
抹茶色の髪、ほっそりしていて、気弱そうな感じの父。
肌の色は二人とも娘リャモロンと同じく南国育ちらしい褐色だ。
「いえいえ、こちらこそ」
三姉妹の母は謙遜の態度を示す。
「リャモロンちゃんのご両親、若いね」
「リャモロンお姉ちゃんのおばちゃんは三〇代半ばくらいかな?」
「私もそれくらいだと思う」
三姉妹は推測してみる。
「これでも四〇代半ばよ」
「これこれリャモロン」
リャモロンの母はホホホッと微笑んで優しく注意。年齢を気にするのも日本人女性と共通のようだ。
「それじゃ、みんな、また明日ね」
リャモロンは木内宅をあとにし、両親と一緒に新居へ。
「ここよリャモロン」
「立派なおウチだろ?」
「本当に、すぐ近くだ」
木内宅玄関を出てから徒歩一分足らずで到着。
紗帆の予想通り、木内宅から三軒隣。つまり後藤田宅から四軒隣だったのだ。
二階建ての和風建築。もちろん庭付き。
リャモロンの両親が自家用ジェット機に載せて運んだ荷物の荷解きも、ザビコサ王国製の便利な道具のおかげで人手も使わずその日のうちにほぼ全て終わり、ザビコサ王国で過ごしていたような日常生活が始まる。
☆
翌日月曜日、朝七時五〇分頃。後藤田宅。
「おっはよう、敦史お兄ちゃん」
「おはよう敦史くん」
「おはよー敦史お兄さん」
「アツシさん、これからも末永くよろしくお願いします♪」
三姉妹とリャモロン、四人で敦史を迎えに来た。
「……うん。リャモロンちゃんの制服姿、けっこう似合ってるね。髪の色も戻したんだ」
「はい、残念ながら、日本の学校では染髪は校則違反とのことなので」
敦史は今まで以上に照れくさい気分で登校する。
※
八時二〇分頃、城松高校一年五組の教室。
「あの、脩平さん、これ、一昨日助けてもらったお礼。よかったら、食べてね」
「あっ、どうも」
「においはかなりきついけど、とっても美味しいから」
涼香は脩平の机の上にドリアンチョコ一箱を置くと、そそくさ自分の席へ。
「僕、ドリアンは未知の味ですがきっと不味いと思うので敦史君、いりませんか?」
「俺も同じの持ってるし。脩平、おまえが受け取ってやれ。坂東さんに失礼だろ」
「確かにそうですね。ご好意で渡されたものを、すぐに他人に譲り渡そうとした僕が浅はかでしたぁ」
脩平は少し反省し、ドリアンチョコの箱を鞄にしまう。
(よかった。ちゃんと受け取ってくれた)
涼香はホッとした面持ちで眺めていた。
(よかったね涼香ちゃん)
紗帆はその一部始終を微笑ましく観察していたのであった。
その頃、緑莉は、
「先生、これ、海外旅行に行った近所のおばちゃんから貰ったの。先生と、クラスのみんなにこれ一個ずつあげよう」
ドリアンチョコ一箱を職員室にいた担任に見せ、こんな提案をしていた。
「みんな喜ぶかなぁ?」
担任は苦笑い。やや引き攣った表情も浮かばせていた。
「きっと喜ぶよ。めちゃくちゃ美味しいし、においも慣れればいい香りに感じれるもん」
緑莉は自信満々に言う。
「……そうかしら? 悪いけど、先生はいらないわ。それより木内さん、本当は学校にお菓子は持ってきちゃいけないのよ」
「はーい。ごめんなさい」
結局、朝の会の時に担任がクラスメートの欲しい子だけに渡すことに決め、その結果、半数近い子が受け取ってくれたのであった。
リャモロンは絵衣子とクラスも同じになった。さらに同じ文芸・漫画部に入った。
ちなみに自己紹介するさいは、インドネシア出身と答えたそうである。
☆
次の休日、昭和の日の四月二九日木曜日午後三時頃。
「リャモロン、遊びに来てやったぜ」「やっほーリャモロン。久し振り♪」「ぼく、リャモロンが日本に引っ越しちゃって寂しいよ」「こんばんはなりー」
元NIWA団員の何名かが、日本のリャモロン宅を訪れた。
「あんた達、やっぱり日本へまた来たのね」
リャモロンはけっこう迷惑しているようだ。
「うちらが日本へ手軽に行き来出来るよう、最高時速八千キロ出せる新型の八人乗りジュニア用超高速ジェット機を、あれからザビコサ王立大学院の理工系の技術者さんに特注で造ってもらったの。利用しないと勿体無いよね」「向こうを夕方四時過ぎに出たけどもう着いちゃったよ。今回はかずら橋渡る予定だぜ。もちろん観光目当てで」「南海ブックスももちろん寄ってくなりー」「日本はこれからゴールデンウィークっていう大型連休に入るんでしょう。ぼくたちまたすぐに遊びに来るよ。マチ★アソビもあることだし」
元NIWA団員達は迷惑がるリャモロンにお構いなく、それ以降も頻繁に超高速ジェット機で日本のリャモロン宅へやって来て、敦史達とも会っている。
※
五月中旬現在。
「ワタシ、今度の中間マジやばいよ。特に数学と理科と英語」
「エイコちゃん、アタシはその科目得意よ。いっしょにテスト勉強頑張ろう!」
リャモロンは日本の学校生活も充実して過ごせているようで、ザビコサ王国の学校のお友達とも国際電話やメールでよく連絡を取り合っているそうだ。
「敦史お兄ちゃん、まだ実らないのかな?」
「ガジュマルは成長が遅いからな」
敦史の自室ベランダに置かれたガジュマルは、今のところ枯らさず無事生育中。買った時より葉っぱが少し増え、背丈は1.2倍くらいになった。
「リャモロンちゃんち、ホームパーティーによく招待してくれるけど相当お金持ちなのね」
ちなみに三姉妹の母は、リャモロンがインドネシア人であるとまだ思っているようだ。
(おしまいじょ)
徳島に南の島のNIWA団襲来! 阿波おどりは我が国の民族舞踊のパクリだ 明石竜 @Akashiryu
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