第10話 メイド達の談笑
とある日の昼下がり。
アズベルはレミアと町に繰り出していた。
アランによるアズベルの訓練も、毎日行われている訳ではない。訓練が休みの日には、アズベルは本を読んだり、魔法の練習に励んだりしている。もちろん完全に休息日にするときもある。マリーも時々休みを貰っては、何処かに出かけたりしている。
誕生会が終わってから数日後に、レミアからのお誘いがあった。
ちょうどストレス発散日が必要と考えていたので、アズベルとマリーはその申し入れを承諾したのだ。
そして、今に至る。
「ねぇ、アズベル。ほら、これ見てよ!」
立ち寄った雑貨屋で綺麗な刺繍のついた髪飾りをつけるレミア。
「わぁ!可愛いと思うよ!」
「本当に!えへへ。」
レミアは褒められて嬉しそうににやけている。
「僕が買ってあげようか?」
「えっ?良いの?」
レミアの喜ぶ顔を見て、アズベルはそれをプレゼントしてあげたくなった。
無論、レミアの所持金で普通に買えるのだが、アズベル自身がレミアに買ってあげたかったのだ。
「良いんだよ。気に入ってるみたいだし、僕がレミアにプレゼントするよ!」
「本当に?!ありがとう、アズベル!」
レミアは嬉しそうに笑い、アズベルに抱きついてきた。
ギュッと抱きしめられたため、様々な部分が密着するが4歳児同士なので興奮はしなかった。
絵柄的には微笑ましいものだが、精神年齢的には犯罪臭がするのだろう。
しかし、アズベルの場合は転生後から段々と、精神年齢が外見に合わせて低下していた。
そのため、転生後は興奮状態になることもなく、マリーに裸で抱かれても(お風呂)、マリーの胸に埋もれても反応をしなかった。
「喜んでくれて僕も嬉しいよ。」
レミアの頭と体を一通り撫でた後、アズベルは離れる。
その後、アズベル自身のお小遣いで髪飾りを購入しレミアに渡した。
親から貰ったお金ではなく、魔力制御の訓練の際に作った食器等をマリーに替わりに売ってもらって得たお金でである。
早速髪飾りをつけたレミアは、アズベルに感想を聞いてきた。
「どう?似合ってるかな?」
「うん。似合ってるよ。」
レミアの髪を指ですきながら、アズベルは答える。レミアもアズベルの頬を撫でてきた。
普通であれば過剰なスキンシップだが、アズベルもレミアもまだ子供なので大丈夫だ。二人はしばらく見つめ合う。そして、レミアが顔を真っ赤にして目をそらした。
その愛らしい様子をマリーとレミアのお付きのメイドであるエミリーは、後方で見つめていた。
「あの子達は将来、きっとくっつくよ。」
エミリーは確信があるように言った。
「な、何言ってるのよ、エミリー!」
マリーはいきなりの発言に驚いている。
「あー、見て分かんないの?いくら子供でも私は、あそこまでしているのは見たことがないよ。両方とも相手に心を完全に許してる。多分、お互い初めての友達で嬉しいんだろうねぇ。」
「わ、私も、あのスキンシップは少し過剰だなって思ったけど、それだけで将来結ばれる理由になるのかな?」
マリーは首を捻る。
エミリーは少し呆れた顔で言った。
「この年であそこまで仲の良い男女が、このまま大きくなったらどうなるかぐらい分かるでしょ?行き着く所まで行くだろうね。」
「そ、そこまで…ということはアレをするのね…」
マリーは頬を赤く染めた。
エミリーは二人を見つめている。
「それに今の段階で、友情ではなく愛情が感じられるよ。これは早くに済ます…」
そこまで言って、エミリーは真っ赤な顔をしたマリーに気がついた。
「なーに、赤くなってんのよ。あんたにはベルという立派な彼氏がいるんだから。もう、初めては済ましたんでしょ?」
「な、何言ってるのよ!まだしていないわ…」
「まだしてなかったの?!」
心底以外だったのか、声を荒げるエミリー。マリーは小さくうなずいた。
「互いにあれほどまで愛しあっているっていうのに…もったいない。しかし、ベルも奥手ねぇ。出会った当初くらいに手を出したとばかり思っていたわ。」
「そんな!…ベルはそんな人じゃないよ!」
マリーは声を荒げて否定する。
「はいはい。ごめんなさいね。全く…相思相愛カップルは良いもんだね。」
「絶対反省してないね…」
エミリーは笑って、マリーは拗ねた。
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