草創期 《フランク1》
ユーロピア西部に位置し、ユーロピア帝国時代ガリア(現在のフランス)と呼ばれた地域は、今繁栄を謳歌していた。ガリアはユーロピア帝国から独立した時、本国と激しく争い大きな傷跡を残したが…初代ガリア公シャルルは国家復興のために自らの権力の強化にいそしみ、強権を発動して強引に数々の政策を進め、現在のフランク王国の礎を作った。シャルルが行った代表的な政策として有名なのが、社団政策と王権神授政策だだ。
社団政策とは、ギルド、広大な領地を持つ貴族、都市の知事、村落共同体に大きな権限を渡し、その代り公の意思に従うという契約を結んだ政策である。これらは全て力のある者に対して行ったことであるが、逆に力のないものに対して行ったのが「王権神授」政策である。彼はアヴィニョン総大司教を味方につけ、ガリア市内の教会全てに「神は国王を使者としており、国王を通じて人びとを支配している。…国王の人格は神聖であり、彼にさからうことは神を冒涜することである」と吹聴させたのだ。民衆はそのことを信じ、彼が下す命令は全て従った。
そして彼の死後、彼の息子シャルル2世はシャルル1世を「国父」の称号を与えたが、時代が下るにつれ、前公ではなく、現公もとい、現国王の名詞となり、後に編纂されたガリア法典の第一説にはこう記されている
「国王の絶対的支配権は人類の祖の子どもに対する父権に由来する」
つまり、フランク王国とは、各社団の長、神の使者、国の父の三本柱で支えられたガリア公が支配する絶対王政の国である。
現在ガリア公は自らをフランク国王と号している。ユーロピア帝国から独立したいくつの国で最も最初に王と名乗ったのはヒスパニアである。当時のガリア公はヒスパニア国王にならい、自分も王号を称するようになった。そして国名もガリアからフランクに変更した
フランク王国首都…マッシリア
そこは華やかな街並みが広がっていた。中央の大通りは多くの馬車が行き交い、横の歩道では多くの豪華なドレスを着た貴婦人や、高級そうなスーツを着た紳士などが楽しそうに歩き、
このマッシリアは力のある者の町である。貴族、ギルドマスター、村落共同体のリーダーなど社会的ステータスが高い者がこの町に集まるのである。
マッシリア中央にあるマルセイユ宮殿(モデル:ヴェルサイユ宮殿)の中央にある国王の間で最も高い席に座るフランク王フィリップは大臣の話を聞きながら大あくびをする
「現在、ルテティウムの工場群の生産が去年比と比べて減少し、値段が高騰しております。理由はゲルマニスク方面の鉄鉱石、石炭などの鉱物資源の輸入が途絶えつつあることが挙げられます」
財務大臣が必死に羊皮紙を読み上げる
「ふああ、大臣…そこまで焦る恐れがあるのか?ネーデルラント同盟に頼めば、奴らはどうにかするのだろ?」
フィリップは間の抜けた声で言う
「それは…そうですが、我が国の最大の貿易相手を失ったのですぞ…」
財務大臣は必死にいいよる
その時一人の男が立ち上がる
「どうした…宰相?」
宰相と呼ばれた男性が一礼する
「財務大臣よ…貴殿の国を憂う気持ちはわかる。非常にありがたいことだ。そんなことはこの場で報告しなくても、もう手は打ってある。そうだろ?外務大臣よ」
外務大臣と呼ばれた男性が一礼し言う
「ええ、北部諸侯国群(スカンジナビアの国々)の多くの国々との話はつけておきました。彼らは快く我々に売って下さるそうだ」
皆が一様にほっとする
外務大臣は続ける
「他にも南の都市国家群(イタリア西部)の領主たちと商人とも話がついております」
国王が口を開く
「材料なら大丈夫。ギルドに全てを任せればいいんだよ」
フランク王国は中央集権体制を敷いている。それを可能としているのが社団だ。
社団の代表的な活動を説明しよう。
貴族は、かつての家臣であった伝統貴族である剣の貴族と財力と学力に物を言わせて貴族階級まで上り詰めた新興貴族である法服貴族に分かれる。前者は自分たちの領地があり、領地内の農民を支配している。つまり、普段は税を集め、一部は中央に送り、有事は徴兵して軍を指揮するのが仕事である。だが、最近はあまり戦争をしないため、財産にゆとりがあり、次に説明するギルドに投資をしている。後者は官僚となり、国政を支えている。
ギルドは大きく二つに分かれる。商業ギルドと工業ギルドだ。フランク王国は前者より、後者がはるかに発達しているため工業国家と呼ばれている。北部の都市ルテティウムは工業都市であり、多くの職人が物を作っている。フランク王国が作る武器は高性能且つ量産できると呼ばれている。このことを可能にさせたのが
知事とは各都市の貴族みたいなものである。実際に彼らは中央から派遣された法服貴族である。行うことは剣の貴族と同じである。
村落共同体とは有力農民による互助組織である。彼らは基本地主階級である。貴族が目につかない村落の統治を行っているのだ。基本彼らの仕事は税金の回収、上意下達、村落の管理である。
彼らの支えでこの国はなっているのだ。
「そうだ!軍を招集してくれないかな?」
突如フィリップがとんでもないことを言い出す
「何故でしょう…陛下」
軍務大臣が問う
「ええと、ゲルマニスクに攻め込むためだよ。今回の貿易の停止はフランクを敵に回すことだ。許せないね。これは懲罰の一種だからね。ああ、そうだ。農民や市民を徴収する必要はないよ。常備軍である近衛兵と外人部隊を出して、治安は衛士や傭兵ギルドの連中に任せればいいだろう。急いで集めて!」
まるで、お菓子をとってきて、というようなノリである
「御意です」
軍務大臣は王の間を後にする
「楽しみだなぁ~相手はどんな顔をするのかな?」
後日、宮殿前には総勢15000の兵が集結していた。
近衛兵12000と外人部隊3000の編成だ。
彼らこそ、フランクの精鋭部隊である。態度はテキトウであるが、国王は本気であることが伺える。
宮殿の前に建てられた高台にフィリップが立つ。
「やぁー、みんな!こんなくそ暑い日にわざわざ来てもらってご苦労なことだね。早速だけど、隣の…ゲルマニスク王国を攻めようか。これは懲罰戦争だ。ある程度やったら撤退。あとは外交で決着つけるから、リラックスしなよ。しかも君たちは運がいいね。なんと!今回は僕自身が行う親征だ。失敗するなよ。では、各自持ち場について…進軍!」
総勢15000がゲルマニスク王国に向けて進軍する。
そしてマッシリアから離れて1ヶ月…国境を越えた。行軍が遅れた理由は、兵站を途絶えさせないためだ。兵とは動く胃である。いくら楽な戦争でも準備万端でなければいけないのだ。
だが、一旦国境を越えた瞬間、一変する。先程までの行軍が嘘のように、もうスピード侵軍する。
とある日の作戦会議
「陛下…工業都市エッセンが陥落しました。捕虜800を確保しました。」
将軍が報告する
「ご苦労。捕虜はいつも通りに後方へ回して、外交の切り札となるからね。勝っても負けても使えるしね」
突如、伝令がなだれ込む
「緊急伝令!発デュッセルドルフ!」
王は促す。
「バーゼヌ将軍より報告!デュッセルドルフ郊外に敵多数を確認。デュッセルドルフを放棄するとのことです」
伝令が報告する
「敵の数は」
将軍の一人が問う
「約2万出そうです」
「うん、正しい判断だね。今回の遠征は別に領土が目的じゃないからね。犠牲は最小限にしなければ、伝令を出して、全軍撤退!デュースブルクまで下がって、迎え撃つよ」
国王が地図を見ながら命令する
数日後、デュースブルク郊外にはフランク軍15000とゲルマニスク軍2万が向かい合っていた。
ゲルマニスク軍から白旗を掲げた騎兵が数騎向かってくる。
フランク軍がは道をあけ、本陣へ向かわせる
本陣では
「お初お目にかかります。フランク国王フィリップ陛下…~わがゲルマニスク王国フリードリッヒからのお言葉です
今回の貴国の行為は正当無き行為である。それを自覚したら直ちに軍を引き連れ、帰国せよ。後日外交交渉で水に流してやる」
本当に和平を願っているのか疑問を感じる高圧的な要求だ。
答えは
当然…
「断る!」
敵は動揺せずに問う
「何故」
フィリップは侮蔑したように笑う
「きっかけは貴国の挑発が原因だろ?今まで行っていた友好関係の一環である貿易を一方的に止めたんだ。怒るのも無理ないだろ?」
ゲルマニスクの使者は何も言わず引き返す。
「では、始めようか…戦争を!」
フランク国王フィリップ…ユーロピア各地に存在する数ある王のなかで最も強大な権力を持つ王の中の王、権王と呼ばれている。そして、幼少から巨大な権力をまるでオモチャのように振り回し、国際情勢を掻き乱し、楽しむことから興王と呼ばれる生粋の快楽主義者である。
彼が歩んだ道には
多くの不幸しか
残らない
そして
彼の目にとまったものは
逃げられない
「フリードリッヒ、お前は逃げられない」
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