第15章『吸血鬼ヴラッド 5』

 ジキル=アニアンは引き金を引いた。


 しかしそれは──少なくとも当人からすれば、決して暴走によるものではない。

 自分ならば失敗はしない。確実に事を上手く運べるという自信があったからこそ、彼は理性の下で敵輸送艦の動力部を撃ち抜いてみせたのだ。


《おいジキル! お前って奴は……ッ!!》


 スピーカーからマークの叱責する声が響く。それでもジキルは悔い改めるような素振りさえみせず、再び照準へと意識を集中させる。


「止めんなよ、隊長。あの紅い鳥足トリアシに、ロマリオの味わったのと同じ苦痛を与えてやるって決めてんだからよォ……」

《よせ、今のお前は正気を失っている……! やっちまったことは別にいい、だがせめて場所を変えろ……ッ!!》


 マークの言わんとしていることは、冷静さを欠いている今のジキルにも理解できる。

 狙撃手にとって最も警戒するべきなのは“敵に自分の位置を知られてしまう”ことである。長射程から一方的に攻撃する狙撃手という存在は、敵にとってもこれ以上ないほどの脅威であり、発見されてしまえば間接砲撃などで優先的に排除されてしまう可能性が極めて高い。そのため、狙撃を行った直後は敵に位置を特定されてしまう前に、速やかに移動ないし撤退をするのがセオリーであり原則だ。フーリーウェイが四足歩行形態への変形機構を有し、尚且つ“フォックステイル・スナイパーカノン”の砲身が機体前方ではなく後方についているのも、狙撃後に素早く逃走へと移れるようにする為という戦術的な理由からであった。

 輸送艦一隻を落とした今、敵は間違いなくこちらの狙撃位置を洗い出し、すぐさま反撃へと転じてくることだろう。だがジキルはそれをわかっていてもなお、その場を動こうとはしなかった。


「あと三隻……いや、二隻は墜とさせてくれ。そんだけ道連れにすりゃ、あいつへの手向けにもなるだろうさ……」

《道連れだと……? おい、ジキル! 馬鹿な真似は──》


 マークの言葉を最後まで聞かずにジキルは一方的に通信を切ると、トリガーへと指を添えつつ上唇を舐める。


(わかってるさ。こんな真似は、ただの自己満足に他ならねえってことくらいよォ……)


 別に自分が味方の戦術を歪めてしまったという自覚がないわけではない。しかし、たとえ戦犯という悪評を背負ってでも、己の意思を曲げたくはなかった。

 戦友にして親友だったロマリオの命を奪った奴が許せない。その感情に従うことが間違いであるとは、思えないから。


(なら最後くらい、この俺を満足させてみろ。フーリーウェイ……!)


 だからジキルは、トリガーを引いた。

 フォックステイル・スナイパーカノンの銃身から放たれた電磁投射弾が、プラズマを帯びた雷の矢となってクリュセの曇り空を切り裂く。やがてそれは飛行していた“カーディナル級”へと伸びていき、討ち手の思惑通りにウイング部分を刺し貫いた。

 翼が折れ、姿勢制御のできなくなった船体が徐々に沈み始める。後方のハッチから重力下飛行用グライダーに乗ったDSWが飛び出してきたのは、その直後だった。


「……ッ、あいつァ……!」


 “LDP-94[EX] コンドルフ・エクスターナル”。目的の機体をようやく発見し、ジキルは口元を歪に綻ばせる。

 どうやら向こうもこちらの存在に気付いたらしく、グライダーを翻すと一直線に接近してきた。

 被ロックオンを示す警告音アラートが耳元で鳴り響き、標的との距離もどんどん縮まっていく。ジキルは照準を見定めると、すかさずトリガーを引いた。

 再びフォックステイル・スナイパーカノンの銃口が雷光を轟かせる。しかし、コンドルフは僅かに横へと逸れてこれを回避し、そのまま加速を緩めることなくこちらへと突っ込んで来た。


「チィッ……、当たれ……当たれよ……!」


 次いで二発、三発と激発が起こる。だが、ジキルの撃った弾のことごとくはコンドルフの巧みなマニューバリングによってかわし続けられ、遂には一発も当たることなく接近を許してしまった。


「クソがぁぁぁぁぁぁッ!!」


 ジキルの咆哮と共に、フォックステイル・スナイパーカノンに装填された最後の弾丸が放たれる。すかさずコンドルフも腰から実体剣スパーダを抜いたが、それでもこちらの射撃の方が僅かにはやい。

 これだけの間合いで、これほどの弾速を誇る電磁投射弾を回避することなど間違いなく不可能だろう。ジキルは勝利を確信して笑んだ。


 だが刹那、ジキルの世界は一気にスローモーションへと変わる。コンドルフは唐突にグライダーの後部を思いっきり踏みつけたかと思えば、板状の船体腹部を盾にすることで銃弾を受け止めてみせたのだ。

 砲撃をまともに食らってしまったグライダーが爆発を起こした。その黒煙を切り裂いて飛び出してきたコンドルフが、ジキルの乗るフーリーウェイの懐へと切迫する。左手に握られた“スパーダ”の剣先の煌めきが、ジキルの最期に見届ける光景となった。


(……ハハッ、何やってんだろうなぁ……オレ……)


 味方を危険に晒してまで、遂に仇を討つ事さえ叶わなかった。

 そんな自分があまりにも情けなくて、不甲斐なくて、愚かだった。


(ほんと、ダセェ……)


 コンドルフの刺突が、フーリーウェイの胴体部に深々と突き刺さる。味方の安寧も、ロマリオの尊厳さえも踏みにじった自分には、きっとお似合いの末路だろう。

 呆れたような乾き笑いを抱いたまま、彼の命はそこで掻き消えた。





《ジキルゥゥゥゥゥーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!》


 マークの悲壮な慟哭が響く。その人物とは面識のあったデフ=ハーレイもまた、キメラ・デュバルのコックピット内で体を震わせていた。


(あの、ジキル=アニアンが死んだ……死んだのか……?)


 別にジキルとは親しい間柄だったわけでもなければ、直属の上官というわけでもない。寧ろ、コスモフリートメンバーの名誉と立場をかけて争った経験から、彼との関係は少しばかり険悪でさえあった。

 それでも彼が開戦して間も無く戦死してしまったという報せは、デフにとってあまりにも受け入れがたい現実として襲いかかった。

 つい先ほどまで当たり前のように呼吸をし、仲間と言葉を交わしていた人物が、今は物言わぬ屍へと変わり果ててしまっている。そしてもう、彼の時間ときは永遠に止まったまま、決して針が動き出すことはない。

 命を落とすというのは、そういうことなのだ。


《──デフ! しっかりしろ、デフ=ハーレイ!》

「……っ!」


 スピーカー越しに自分の名を呼ばれ、デフの意識は現実へと引き戻される。

 機体頭部のカメラアイを振り向かせると、ナナキ=バランガの乗機“ガルド・デュバル”が、キメラ・デュバルの肩に手を乗せて接触回線を開いてきていた。


《敵艦からDSW部隊が出撃を開始し、既に陣形を展開しつつある。予定より少し早いが、我々もここで敵軍を迎え撃つぞ……!》

「で……でもよ、ジキルって奴は作戦をしくじって逝っちまったんだろ……? 俺たちは本当に勝てるのか……?」

《怖いのか》

「そ、それは……」


 実のところ、ナナキからの指摘はまさしく図星であった。

 臆している暇があるなら行動するべきだと頭の上ではわかっていても、死に対する恐怖心がそれを躊躇わせてしまう。『歩みを止めるな』という、モーティマーの遺言を貫き続けられる自信もなくなってしまっていた。


「……怖えよ、笑っちまうくらいに怖え。こんな大きな戦いに出るのは初めてだからよ、さっきから震えが止まらねぇ……悪ィ」

《いや、いい。むしろ人として当然の反応だ。そして恐怖を恐怖とも思わなくなってしまえば、それはもはや戦士ですらない。そんな輩を私は断じて信用しない……!》

「ナナキ……」

《恐怖に打ち勝て、デフ=ハーレイ! さすれば貴様は晴れて一人の戦士となれるだろう……! 貴様が背負っているもの、護るべきものを思い出せッ!》

「……!」


 言われ、デフはようやく見失っていたことを思い出す。

 ただ己の鬱憤を吐き出すためだけに暴力を振るっていた、『ミスト・ガーデン』にいた頃の自分とは違う。今の自分には、力を正しく使う理由と責任がある。自らの意志でキメラ・デュバルに乗ったあの日から、心にそう決めていたはずだ。


「……そうだな、おかげで目ェ覚めたぜ。ありがとよ、隊長」

《フッ、礼には及ばんさ。それよりも、敵編隊がこちらに接近している。覚悟は、よろしいな……?》

「おうさ……! 行くぜ、キメラ・デュバル……ッ!!」

《よし! 各機、フォーメーション・デルタだ! 一機たりとも防衛ラインを突破させるなよ……ッ!》


 ナナキが命令を発すると共に、建造物の物陰に身を潜めていたキメラ・デュバルが弾けるように勢いよく飛び出す。火星に到着するまでソリッドの部品を代用していた左腕はアルテッラの手により完全に修復・改修がなされており、前腕部には鋼鉄の鉤爪“アイアンシザー”が再装備されていた。

 デフは早くもソリッド一機を捕捉すると、アサルトライフルによる迎撃にも物怖じせずに真っ直ぐ突っ込んでいく。脹脛ふくらはぎ部分に新しく増設されたホバーユニットをフル稼働させ、アスファルトの上をまるでスケートリンクのように滑走していた。

 そしてキメラ・デュバルは素早い機動でソリッドの背後へと滑り込むと、その勢いを殺さぬまま左手に内蔵された“ブレイクスルードリル”の一撃を背中へと叩き込む。けたたましく音を立てながら螺旋を描くドリルはソリッドの胴体部を貫通すると、向こう側が覗いて見えるほどの大きな風穴を開通させる。やがてドリルは引き抜かれ、ソリッドはそのまま力なく地面へと倒れ込んだ。


「やっぱりな、俺にはコイツが一番しっくりくるみてぇだぜ。コイツなら、どんな強大な壁だって突き貫いてやるさ……ッ!!」


 敵機の撃墜を確認するや否や、デフはすぐさま次の敵機へと機体を向けさせる。確かな覚悟の炎を瞳に灯すその姿は、もう暴力で小さな世界を支配していた頃の彼ではない。

 今の彼は、一人前の戦士だった。





「マリネリス基地には行かせない、行かせるもんか……! やぁぁぁぁッ!!」


 サクラ=バーミンガムの乗るギム・デュバルは僚機と共に市街地跡の大通りへ躍り出ると、編隊を組んでいたソリッド数機に向けて猟銃型ライフル“ハンター”の斉射をひたすら撃ち放った。

 これに対し敵側もすぐさま反撃を開始。無数の弾丸が飛び交い、相次いで周りの機体から炎が噴き上がる。すぐ隣にいた味方機が敵の直撃をくらって仰け反り、吹き飛ばされても、サクラは物怖じする心を押し殺すように操縦桿を強く握り締め続けた。


「──っ、ミサイル……!?」


 突然の電子警戒音にサクラが顔をあげると、噴煙の尾を引いた無数の弾頭がこちらへと迫ってきているのが見える。戦場の主役がDSWに移り変わってもなお対地攻撃兵器としては未だに現役として運用されている、U3Fの戦闘ヘリコプター部隊から撃ち放たれたものだった。


「くッ……!」


 上空から雨のように降り注ごうとするミサイル群に対し、サクラはすかさずライフルを乱射しつつ後退する。しかし、これだけの物量を全て撃ち墜とし切れるはずもなく、飛来した弾頭は次々と地面や建造物に激突しては破片を飛び散らせていった。


「こ、これだけの数を一体どうしろって……!?」

《私が活路を拓く! ハルバードランチャー、最大出力照射マキシマムドライブッ!!》


 サクラがシート越しに振り向くのと、ハルバートランチャーを両手で構えたガルド・デュバルがビームランチャーを放つのはほぼ同時だった。圧倒的な溶解力を内包する青い閃光が銃口から迸り、射線上にいたミサイルやヘリを貫いては爆散させる。さらにガルド・デュバルは両足を踏ん張りながらゆっくりと銃身を振り回し、エネルギーを鞭のようにうねらせながら次々と敵を切り落としていった。


「助かりました、ナナキ隊長……!」

《油断するな、サクラ! ヤバい奴が来る……ッ!》


 ナナキが警戒を促した刹那、ギム・デュバルのレーダーも高速で接近する敵影を捉えた。サクラはすかさず北西の空へとライフルを向ける。

 その瞬間、視界の隅で黒い影のような何かが頭上を飛び越えた。

 サクラは瞬時に機体を跳躍させつつ、影の飛んでいった方向へと身を翻させる。両手に散弾銃と実体剣をそれぞれ握った緋色の悪魔“コンドルフ・エクスターナル”の姿がそこにはあった。


(アイツが、例の“吸血鬼”……!)


 その敵パイロットの存在については、サクラも味方の噂話や彼と実際に対峙したチャーリーから話を聞かされている。

 ヴラッド=デザイア。その戦場における鬼神の如き活躍ぶりはインデペンデンス・ステイトでも畏怖の対象として語り継がれ、いつしか彼は血肉を貪り喰らう屍食鬼グールとして恐れられていた。


「まさか、本当に戦うことになるなんて……」

《だが臆することはない。あいにく奴は単騎だ、連携して仕留めるぞ!》

「了解……っ!」


 ハルバートを振りかぶって突っ込むガルド・デュバルを前衛に、サクラ機を含むギム・デュバル達がライフルを一斉発射する。コンドルフはガルド・デュバルと剣戟を交えつつも、しかし情熱的なダンスを踊るようなマニューバリングさばきで、こちらの援護射撃をいとも容易く掻い潜っていった。

 噂通り、なんてデタラメな動きをする敵だろうか。焦りが募ってしまい、サクラの額から汗が吹き出す。

 これが従来型核融合エンジンとは一線を画した“ホロウ・リアクタ”を有するDSWの性能なのだろうか。あるいは、そんなじゃじゃ馬の手綱を握っている搭乗者の技量が成せるわざなのだろうか。

 どちらにせよ、インデペンデンス・ステイトの兵士としてはこのまま彼の神話に華を添え続けるわけにもいかない。サクラは心を決めると、左腕の“ヘッジホッグ”を構えてコンドルフへと突進していった。


《サクラ、コンビネーションだッ!!》

「はい! 行きます……!」


 合図を皮切りに、サクラ機は接近しつつもライフルで威嚇射撃を行う。その攻撃にひるんでいるコンドルフの背後から、両手にハルバートを握ったガルド・デュバルが勢いよく斬りかかった。

 が、見切っていたコンドルフは上へと跳躍してこれを回避。そこへ、サクラの駆るギム・デュバルがヘッジホッグによる追い討ちを仕掛ける。


「てぇりゃあああぁぁぁぁぁぁっ!!」


 その鋭い刺突にコンドルフも流石にかわしきれないと判断したのか、咄嗟に“スパーダ”を構えてヘッジホッグの切っ先を受け止めてみせた。衝突により2機は互いに空中でバランスを崩し、コックピットの中にいるサクラにも衝撃が全身に伝わる。

 渾身の一撃はわずかに浅く、悔しくもコンドルフにはあと一歩届かなかった。


「くぅっ……、まだぁ……ッ!」


 それでもサクラは諦めずに片脚だけで転倒を防ぐと、再びヘッジホッグを構えてコンドルフへと肉迫していく。出撃前に姉と交わした約束が、そして守りたいと思える大切なものの存在が、彼女をここまで突き動かしていた。


「絶対に生きて帰るんだ……! こんなところで、やられてたまるかぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 一閃。さらに一閃と、ヘッジホッグによる怒涛の連撃がコンドルフへと差し迫る。その一撃一撃すべてが必殺と言っても過言ではないほどの鋭利な攻撃であり、普通なら防ぎ切ることなど不可能だとさえ思われた。

 だが、コンドルフはなんと最小限の動きのみでこれらを受け流し、かすり傷一つ追わずに平然としている。まるで幽霊を相手にしているかのように攻撃が当たらない様を見て、サクラの表情も次第に絶望の色へと染まっていった。


「……っ!? しま──」


 気付いた時には、すでにコンドルフの脚部に装備された鈎爪“ラプターネイル”が眼前に迫っていた。咄嗟に回避しようとするも間に合うはずがなく、ギム・デュバルは巨大な爪に足を掴まれたまま振り回されてしまう。

 サクラは強烈なGに視界をブラックアウトさせそうになりつつも、すかさずヘッジホッグで振り払おうとした。……が、これも失敗に終わる。コンドルフの“スパーダ”が、ギム。デュバルのヘッジホッグを左肩ごと切り捨ててしまったのだ。


「きゃああああああああッ!!」


 フルスイングで投げ飛ばされ、ギム・デュバルは成す術もなくガラス張りのビルディングの壁面へと叩きつけられてしまう。背中を強く打ち付けてしまい、サクラは喉奥から決して少なくない量の血を吐いた。


「はぁ……はぁ……うぅっ。……絶対に、生きて……」


 朧げな視界の正面に、こちらを睨む紅い悪魔の幻影が浮かぶ。背中から生えた四枚の翼“クアットロ・ギロッティーナ”を左右に広げると、猛禽の影はそのままゆっくりと近付いてきていた。


「帰る……って……」


 二対に分かれた冷たい断首の刃が、こちらに目掛けて向かってくる。

 乗機は既に駆動系の大部分を損傷してしまっており、中に乗るサクラもまた額から血を流していて、とても機体を動かせるような状態ではない。


 それでも、彼女の心は屈してなどいなかった。

 迫り来る冷酷無慈悲な刃を見ても、瞬き一つすることはない。

 サクラはこれほどの窮地に立たされてもなお、ただ直向ひたむきにを信じ続けた。





 かくして一人の少女の灯火が消えかけていたその刹那──不意に視界へと飛び込んできた青い影が、ギム・デュバルとコンドルフの間を遮った。

 突然現れたマリンブルーのDSWはすかさず両腕の“ブレードトンファー”を抜き放つと、コンドルフの四枚刃と何度も剣戟を交わす。やがて先に業を煮やしたコンドルフはスラスターを噴かして後方に跳ぶと、ひときわ高い屋上の上へと着地した。


 あかあお、二機のDSWは互いに視線を交差させながら、しかし一切の隙を見せぬまま膠着する。サクラがそれを見守っていたとき、マリンブルーのDSW──“ファントマイル”を駆る搭乗者が声を発した。


《大丈夫か、サクラ》


「チャー……リー……」

《後は俺に任せろ。こいつの相手は……俺がする》


 ファントマイルが跳躍し、エネルギーライフルを連射しながら上空へと逃れていく。コンドルフもその誘いに応じるかのように機体を飛び立たせると、ファントマイルを追うようにビル群の奥へと消えていった。

 いつしか二機の距離は縮まり、コンドルフは殺意のままに“スパーダ”を振り下ろす。ファントマイルも即座に“ブレードトンファー”を抜刀して迎え討ち、空中で再び刃が斬り結ばれた。


 “チャーリー=ベフロワ”と“ヴラッド=デザイア”。

 戦場で出会った二人による因縁の戦いの火蓋がいま、切って落とされた。

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