キャラクターステータス3 その1
○久我
魔力性質:流形、固形
魔力総量C 魔力出力D(B)魔力制御D 魔力耐性E 精神強度C 身体能力E 魔力感応C 術式構築A
今作のヒロイン。
神童と呼ばれた少女。物理属性の専門家。別名、アヤネ・フィジィ。
四年前に起こした事故で下半身に障害を負っており、現在は病院生活を強いられている。下半身には竜の魔力炉が巣食っており、全身の魔力流路を蝕んでいる。そのため、魔力を巡らせるだけで痛覚が刺激され、操作を謝ると激痛が全身を襲う。またその影響で下半身の神経系がうまく働かず、車椅子生活となっている。
幼いころより天賦の才を発揮した、本物の天才。
彼女の才能は、異能や超能力と言った超常的な力ではなく、単に彼女自身の思考能力の高さから来る性能であり、生まれ持った才知である。
しかし、その才知に対して、精神の成長が追いつかず、彼女は長いこと孤独を味わうことになる。そんな彼女が初めて自分から近づこうと思ったのが久能シオンであり、その出会いによって、彼女はようやく人間として生きることが出来た。
久我家は政治家の家系であり、祖父の命によって
一回り近く歳の離れた男との婚約に、最初は反発していたものの、クロトと交流することでそれまで考えもしなかった様々なことを考えるようになり、自身を見つめ直す機会を得た。
シオンとの関係ではできなかった成長をしたことで、アヤネはクロトに対して信頼を抱くようになる。その事実に割り切れないものを覚えた彼女は、かつて想いを寄せた少年との決着を望むようになった。
物語上の役割としては、もう一人の主人公。
シオンと同じく、魔法士として障害を抱えた状態でありながら、次々とゲームで勝ち進んでいく姿を描きたかった。
物語上、シオン視点で進む場合は、苦労して敵を倒す姿を描写することが多いが、相手視点で見たシオンはどうであるか、というのをアヤネを通して描こうとした。
初期プロットだと、シオンがノキアと付き合い始めたことに嫉妬したアヤネが、八つ当たりのように学校中の生徒に試合を申し込んで、ことごとくを倒してシオンにプレッシャーを掛けていく、っていう話だったのだが、さすがにそれだとアヤネが悪人過ぎたので、彼女の内面を掘り下げるために、戦うための舞台を用意した。それがユースカップの代表決定戦である。
元々は、アヤネが大暴れするシナリオのつもりだったので、本当はもっと彼女の試合は多かった(伏義イズナ戦、白銀ミナト戦、七隈ザクロ戦などの構想はあった)のだが、入れる隙間がなかったのと、やり始めると本当に終わらなかったのでカットした。
おかげで、逆にシオンの試合のほうが多くなってしまったので、あんまりアヤネが大暴れするっていう感じではなくなったのが、ちょっと心残り(あと、相対的に飛燕の戦闘も少なくなってしまった)
ちなみに、シリーズ通してのアヤネの行動と心境の変化を、時系列順に並べると。
四年前。シオンに見捨てられたくない一心で力を求めて、事故が起きる。それをきっかけとして、二人の神童としての活動は終了する。
二年前、中学二年にて、シオンは中学に復帰。それをきっかけに、アヤネはシオンの右腕を探しに病院から行方不明になる。一週間後、飛燕を連れて帰ってくる。
一年前、シオンがテクノ学園を受験したという話を聞き、裏口で受験をして入学資格を得る。
第一部の時点でシオンとミラが契約をしたことを姫宮ハルノに聞いて不機嫌になり、しばらく保健室登校もしなくなる。同時に、その頃に婚約者の話が舞い込んで、一層機嫌が悪くなる。
九月頭に飛鳥井クロトと対面。最低の出会い方をして、アヤネ、ブチ切れて大暴れする。第二部の序盤、シオンが御見舞に行った時に癇癪を起こしていたのは、特に荒れていた時期。
そして九月中旬、シオンが草上家でなんやかんややっている間に、クロトへの態度が軟化する。自分に対してあけすけな言葉を向けてくるクロトに興味を持ち、それがやがて好意に変わってくる。
十一月初旬。月末に誕生日があることで、祖父から催促じみた言葉をかけられ、ブチ切れる。その後、クロトとの関係を考える中で、シオンへの気持ちの整理をつける覚悟を決める。
魔法士としての彼女は、正確無比の計算の化物。
驚異的な観察眼と判断力を持っており、あらゆる事象を数値として演算することで、理論上ではすべての現象を操ることができる。
全盛期の頃には、あふれる魔力を湯水のように利用して、天変地異に近い魔法行使を行うことが出来たのだが、現在は魔力量の関係で小さな現象を操作するに留まっている。
魔力性質は流形と固形の二つ。
霊子属性と物理属性の二つが得意であり、物理法則に魔力で干渉することにかけては、誰よりも深い理解を持っている。その代わり、概念属性については昔から苦手に思っている。これは、観念的な物事への理解が他の二つの属性に比べて浅いため、彼女自身が扱いづらく思っているのが理由である。
・絶対防御結界『
マテリアル『霧』『風』『砂』のどれかを利用した、アヤネの絶対防御圏。
一つのマテリアルを用いて一定空間内に自然現象を起こした後、相手の行動に対して現象を変化させて、防御を行う。
『
周囲を霧で覆い、水と電気、気圧の操作で攻撃を阻む。遠距離用の防御結界。
切り札として、光の屈折を利用して、自身の立ち位置を誤認させる『
『
周囲に風を発生させ、大気の流れによって攻撃を阻む。中近距離用の防御結界。
主に移動中に使用する形態であり、防御のみでなく即座に攻撃にも転じられる。腕や足を風で覆うことによって、局部的な攻撃力を高めることができる。
『
周囲に砂を集めて、自由に操作することで攻撃を阻む。中近距離用の防御結界。
砂を固めて槍のように扱うこともできるため、攻撃に転じた場合の攻撃力は三種類の中で一番高い。周囲に砂がないと使えないため、あまり使用されない。
明星タイガとの試合においては、トラップ術式である『
・『
物理現象に対して、僅かな魔法を付与することで、現象を変化させる技。特別な魔法式を組んでいるわけではなく、あくまでアヤネ自身の技術によるものである。
『千紫万紅』の術式を変化させる他、草上ノキア戦においては、気圧や氷を利用して、僅かな魔力から物理現象を起こしてノキアを拷問にかけた。
逐一変わる環境や、事象の僅かな変化さえも数値として計算し、その全てを掌握する必要があるため、スパコン並みの演算能力で事象を把握していないと、まともに扱うことは不可能であり、これが出来たからこそ、アヤネは物理属性において神童と呼ばれるほどになった。
・カウンター呪法『
久能シオンが得意とする概念殺し。
対象とする概念について、それが強ければ強いほど、魔力による拘束が強化になるという呪法。
明星タイガ戦において、彼のスピードに対して発動した。アヤネの場合、『速度』という概念を指定した魔法式が組めなかった(イメージできなかった)ため、実を言うと『電気を利用した速度』、すなわち、秒速30万kmを超えるスピードであれば反応する、という風に設定してあった。どんだけ概念属性苦手なんだ。
草上ノキア戦においては、この呪法を改変した『天網恢恢・因果応報』を使用。自身の食らったダメージを、そのまま相手に返すという呪法であり、相手の『敵意』に反応して発動する。
これはシオンが作ったものをそのまま流用している。アヤネは外を出歩く時、自分の身を守るために必ずこの術式をデバイスに組み込むようにしている。
・『霊子外骨格・赤い靴』
自身の脚部に魔力を集中させ、擬似的な神経を通す術式。
魔力を通して物理的に動かせるようにした後、古典創作童話のエピソードを利用した概念属性によって、強化を施している。
アヤネの脚部には竜の魔力炉が巣食っているため、それを封じた上で歩くためには、概念属性の上書きが必要だった。そのために利用したのが、アンデルセン童話『赤い靴』のエピソードである。
『赤い靴』は、貧しい少女が成功を覚えたことによる、虚栄心から来る傲慢の罪の象徴である。この童話において描かれた『虚飾』をかぶることによって、一時的に歩行能力と戦闘能力を脚部に付与している。
『
赤い靴の起動命令。
『
赤い靴の発動継続呪文。これにより、脚部への魔力の供給を自動化する。
『
瞬間的な切断能力を付与。絶対的な切断の概念を付与する代わりに、大量の魔力を消費する。
アヤネは概念属性が苦手であるが、それは物理的に再現できる現象が他人よりずっと多いからであり、別に創作考察が苦手なわけではない。単純にやらないだけであり、本人曰く、「やろうと思えばできる」との事。
なお、アンデルセン童話は一通り読み込んでいるが、あんまり好きじゃないらしい(罪に対する罰が明確な所が嫌いなのだとか)
カニングフォーク
・『
人柱を因子とするカニングフォーク。
自然現象としての災害に対して、人柱を立てることによって制御しようとする呪術形式。人柱によって神の一部となった霊魂は、その力で生者を守る。
彼女の脚部に巣食っている竜は、災害の象徴である。その災害を沈めるために捧げられた人柱の思念を形にして操作することができる。黒い影は人柱たちの思念の具現化であり、それに触れたものは強制的に生贄に捧げられる。
○
原始『
因子『拳法』『気功』『遁甲』
因子三つ、ローランク
霊具『
奇門遁甲を行う上で、使用する式盤。これの小型レプリカを身につけている。
ステータス
筋力値B 耐久値C 敏捷値C 精神力B 魔法力D 顕在性B 神秘性D
武術家の神霊。
因子三つのローランクであり、全体的な性能は低い。しかし、その判断力と対応能力で接近戦においてはステータス以上の力を発揮する。特に防衛戦においてその真価を発揮し、防戦に徹した場合は異常な粘りを見せる。
基本となる型は、形意拳をベースとした中国武術であるが、彼はそれに加えて
守護神計画と呼ばれるカニングフォークの成功例。
複数の人間を殺し合わせ、その生き残りを媒介として神霊をおろし、英雄、ひいては神格を創造しようとするエウヘメリズムの一環が、守護神計画であった。
しかしこれは、元々は干ばつを引き起こす神『
シオンとアヤネは守護神計画を再現しようとした結果、『魃』を復活させてしまう。その際、シオンは右半身を、アヤネは下半身を侵食される。この時、シオンは『人身御供』を、アヤネは『人柱』を因子として吸収する。
神童二人が自身の体を媒介として『魃』を封印したため、その霊地は不活性状態になった。しかし、元の災害はなくなったが、守護神計画の術式だけは残っていたため、その土地で果てた人間の魂が延々と殺し合いを続ける蠱毒が続いていた。
それから二年後、アヤネはシオンの右腕を取り戻すためにその霊地を訪れる。しかしそのときには、長期間の蠱毒によって全く別の霊子災害が発生しており、それに襲われそうになる。その時に、シオンの右腕は、とある一つの意思を持ち、周囲の情報圧をまとめ上げて、実体を持った。
「アヤネを守りたい」
その思念こそが、四年前の事故の時に、シオンがギリギリまで願ったことであり、その結果彼は右腕を落とした。
その右腕もまた、シオンが最後まで抱いた思いを情報として
その時に、戦うための力を欲して、生贄となった人間に下ろす予定だった神霊の記録を解析。形意拳の達人の記録を引き当て、それを原始として顕現した。
原始のもととなった人物は、19世紀に生きた武術家、
形意拳の達人であり、「半歩崩拳、あまねく天下を打つ」とまで賞賛された武術家。超絶の技法を誇る奇才でありながら、世俗での立身出世は叶わなかった不世出の天才。天賦の才を持ちながら、勤勉な人物であったとされ、武術のみでなく、奇門遁甲を元にした兵法にも精通したと言われている。
物語上の役割としては、シオンの宿敵。
飛燕の正体については、第一部を書き上げる段階ですでに今の形に決まっていた。初期プロットでは、シオンとアヤネの共通の師匠とか、二人が倒した霊子災害の一つとか色々候補はあったんだけど、最終的にはストレートにシオンとの因縁をつけることに。そうすることで、アヤネが突然連れてきたファントムというのにも理由付けが出来たので、結果的には良かったと思う。まあおかげで、元ネタらしきものがすぐに分かる感じになってしまったわけだが・・・(バレバレではあるが、某作品の赤い弓兵をイメージしている)
ちなみに、ベースとなった人格がシオンなだけで、正確にはシオンと同一人物であるわけではない。あくまで考え方や思考の方向性を参考にしているだけで、他にも複数の人間の人格が合わさっているため、はっきり言って別人である。実際、記憶も久能シオンのものはほとんど持っていない。
ただ、影響が大きいのは事実なので、無意識のうちに似たような態度を取ることがある。具体的に言うと、虚勢を張ったり駆け引きをしたりする場合の態度は、よく似ている(ナギニにも言及されてたりする)
・パッシブスキル
『拳法』……『形意拳』
拳法のパッシブ。中国武術の形意拳における、五種類の
五行拳はそれぞれ五行説を模しており、それはそのまま、その属性を帯びる。
形意五行拳
金行(振り上げた斧で叩き割るように)・・・
水行(水が吹き出す。錐で突くように)・・・
木行(木の伸縮。槍で突くように)・・・
火行(火が一気に燃え上がる。切り開くように)・・・
土行(土を集める。螺旋を描くように)・・・
象形拳については、その動物の性質を一部借り受ける。
十二形拳
龍形・虎形・猴形・馬形・黽形・鶏形・鷂形・燕形・蛇形・𩿡形・鷹形・熊形の十二からなる、動物を模した型。
飛燕は主に『燕形』を利用する。
また、郭雲深は虎形から繰り出す、両掌を前に打ち出す『
ちなみに、この因子のパッシブスキルは攻撃に属性を付与するものであり、武術そのものはあくまで技術に過ぎない。そのため、仮に因子が機能しない場合においても、肉体が動くのであれば、形意拳そのものは使うことができる。
『気功』……『武侠』
気功のパッシブ。大地のマナと体内の気を織り交ぜる事ができる。これにより、飛燕は肉体の維持以外に、魔法士からの魔力供給を受ける必要がない。
また、武侠における『
『
『遁甲』……『
遁甲のパッシブ。遁甲式を利用した占術。
その場における大地の龍脈の流れを読み解き、接続するための技術。例え劣勢であってもしのぎ、優位であれば追加ダメージを与える。
これを用いて、自身と相手の立ち位置を利用してステータスを変動させる『
『八門遁甲』
安定を司る『
積極的な行動を推奨する『
リスクの代わりにリターンを取る『
秘密裏に事を運ぶ『
華やかに発展を取る『
現状維持を心がける『
ハプニングによる行動を促す『
すべてを受け入れる開放的な『
・アクティブスキル
『
人体の気の流れを見抜き、それを衝く技術。
スキルによって見抜いた点穴を衝くことで、
一種の因子崩しであり、魔力の循環によって能力を発揮しているファントムにとっては、因子を破壊されることに等しい。
また、『経絡乱し』の発展系として、『
打ち込む場所によっては、相手を一撃で絶命させることが可能。防ぐためにはAランク相当の耐久値が必要になる。
『
相手の動きを見て、その先の行動を予測する技術。
その戦闘中における観察時間がながければ長いほど、その精度は上がっていく。
『
魔力で槍を創造し、形意拳を元にした槍術を扱う。
飛燕が扱う槍術の奥義であり、彼の名前の由来となった技。
空間を滑空する燕のように、槍の穂先を相手の心臓へと突き立てる。
余談であるが。
七塚ミラがコピーした『
十五世紀に生きた武術家である姫際可は、槍の名手で
○久能
魔力性質:無形
魔力総量E 魔力出力F 魔力制御D 魔力耐性E 精神強度B 身体能力D 魔力感応C 術式構築B
神童と呼ばれた少年。
魔法士としての彼については、詳しくはキャラクターステータス1を参照。今回は彼の内面について。
作中でもしつこく描いたとおり、彼は才能だけで言えば、少し優秀な凡人でしかない。そんな彼が曲がりなりにも神童と呼ばれるようになったのは、ひとえに久我アヤネの教えと、育った環境が噛み合っていたからに過ぎない。
彼は、数ある選択の中から魔法を選んだのではなく、はじめから魔法しか選択するものが無かった。初めて教えを示してくれた久我アヤネに従うことだけが、彼に許された選択であり、だからこそ、それに尽力することは当然のことだったのだ。
そのため、彼は自分が偉業を達成したという自覚が薄く、それどころか、四年前の事故を含めて、自身の未熟さを異様なまでに口にしている。自分はたまたまそういう環境にいただけで、同じ状況になれば、誰もが自分と同じ力を得ることができると本気で思っているのである。
この物語は、そんな彼が、自分の力で師である久我アヤネを越える話であり、また草上ノキアや七塚ミラと言った異性によって、広い世界を意識させられる物語でもある。
今回の使用魔法
・『
陰陽道由来の呪符を用いた符術。
木火土金水の五行思想を元にした呪術であり、魔力を五つの属性に転換し、実際に現象を起こす概念属性と物理属性の合わせ技。
第二部において天知ノリトが使っていたのを見て、実戦で試すようになった。呪符とは
天知ノリトは魔力で呪符を生み出していたが、シオンは一枚一枚手描きで書いており、使い捨ての代物である。霊子庭園で使った場合でも、使用した呪符からは魔力が消費されるため、現実にある実物は紙切れ同然のゴミになる。
ちなみに、試合に持ち込む場合の総メモリ容量として、サブデバイス一個は呪符十枚分くらいである。使い捨てであることを考えると、呪符をそのまま持ち込むのはあまりにコストパフォーマンスが悪いと言えるため、誰もわざわざ持ち込もうとは思わない。
・『
五行思想『地』の属性から、大地の神格である地天の加護を受け、陰の気へと向けて魔力を放つ呪術。シオンが男性性である陽の気を持つため、その対極である女性性の陰に向けて、自動追尾として魔力弾が放たれる。
なお、陰の気に対しては必中だが、陽の気に対しては逆に弾かれる。
・『
五行相生とは、五行思想において、それぞれの属性が次の属性を生み出していく、陽の関係のことである。
木は燃えて火を生み、物が燃えれば灰となり地に還り、土の中からは貴金属を得ることが出来、金属の表面には凝結により水が生じ、水は木を育てる。
この五行相生を繰り返すことで発生するエネルギーの塊を、直接相手にぶつける。
・『
不動明王の火界呪。それを結界の形で展開し、一定空間において炎の壁を作り出す。
『ノウマク・サラバタタギャテイビャク・サラバボッケイビャク・サラバタタラタ・センダマカロシャダ・ケンギャキギャキ・サラバビギナン・ウンタラタ・カンマン』
和訳
『全方位の一切如来に礼したてまつる。一切時一切処に残害破障したまえ。最悪大忿怒尊よ。カン。一切障難を滅尽に滅尽したまえ。フーン。残害破障したまえ。ハーン・マーン』
火界呪のマントラは、それだけで浄化の力を持っており、唱えながら体内で魔力を回すだけでも、呪詛の解呪に使える。
それを外側に向けた場合、炎の形として顕現する。
・その他、陰陽呪術全般
陰陽道は、古代中国で産まれた自然哲学や五行説などを起源として、日本で独自に発展した呪術体系である。
仏教や儒教、密教と言ったあらゆる宗教体系の呪術思想を取り込んでおり、東洋における
命令式の記述の後に、『
複数の文化を取り込んで体系化された魔法の利点は、概念的な意味を重ねることができる点にある。神話類型によって、全く別の文化圏の伝承を、恣意的に解釈して重ねることができる。
シオンはそれを利用することで、自身の少ない魔力で、本来なら起動することの出来ない強大な概念を使用し、暴走させるという手段を何度か取っている。
・『
自身のダメージを肩代わりする、シオンお手製のローブ。
世界各地に見られる様々な魔術様式、タブーや慣習が収集されており、現代の
この研究書の中で、フレイザーは呪術を二つの性質に分類した。
それが類感呪術と感染呪術の二つである。
『
『
上記の概念が記された文面をローブの内側に記述し、ローブを自身の身代わりとして見立てる感染呪術をシオンは使用した。これにより、脱ぎ捨てられたローブをシオンだと思いこんで、七隈ザクロは攻撃を続行することになった。
・『セブンズミラー・サーキット』
シオンの右腕を媒介として、鏡の神霊の因子を埋め込んで霊子生体化させた魔道具。
起動時には、腕の周囲に小さな鏡が七枚浮かび上がる。それらは一枚一枚がシオンの体内を映し出しており、擬似的な魔力流路の代わりとなる。
『フラクタルミラー』の呪文キーで鏡に魔力を送り込み、『コネクション』によって鏡同士をつなげて魔力の行き来を行う。
二枚の鏡を利用することで、断裂した魔力流路をつなぎ合わせ、体内で魔力を巡らせるのと同じ効果を作り出す。また、この魔道具は霊子生体化しているため、情報界と直接つながっており、自然界のマナを吸収して出力することができる。
上記の二つの効果により、魔道具発動中に限り、シオンは全盛期と同等のスピードで魔法を使うことができる。
ただし、情報圧汚染を防ぐため、魔道具の発動時間は二十秒が限度であり、制限時間を過ぎると媒介としている鏡が割れて、魔道具は強制的に停止する。一度の使用に二枚の鏡を消費するため、最大で三回、六十秒までしか、シオンは全力で魔法を使うことが出来ない。割れてしまった鏡は、二十四時間で一枚が修復される。
なお、これは義手の形をしており、取り外しが可能。シオンの生体魔力に反応して、動かすこともできるのだが、感覚や反応は鈍い。茶碗は持てても箸は持てない程度の操作能力を持つ。
・『イリュージョニスト』
相手の認識に、幻想を割り込ませる概念魔法。五感のどれかを刺激させることで、あたかもそれが存在するかのように見せかける。
作中においては、地面を隆起させることでそれをシオンであると誤認させたり、冷たい風を送ることで氷の矢だと思わせたり、光を壁のように照射することでそこに壁があると勘違いさせたり、と言ったことをしている。
発動中、仕掛けを見破られてはいけないため、シオンは相手の視界から姿を消していなければならない。
・『
色の持つイメージを想起させ、現実に影響を与える概念属性の魔法。
物理属性ほどの強度はないが、色のイメージによって魔力を変化させ、物理現象を起こすことができる。
『レッドイマージュ』……赤の色が持つイメージ。熱を発生させる『ボルケーノ・イラプション』。血の噴出を想起させる『スラッシュ』など。
『ブルーイマージュ』……青の色が持つイメージ。氷の壁を作る『アイスウォール』。体温を奪う『コールド』など
『イエローイマージュ』……黄色が持つイメージ。強烈な光で目眩ましをする『フラッシュ』。電流を走らせる『エレクトリック』など。
○七塚ミラ
原始『カール・セプトの鏡回廊』
因子『鏡』『循環』『模倣』『黄泉』『牢獄』
因子五つ ミドルランク
霊具『
七塚ミラの生前の人格が空想した、最強の魔鏡。七つの鏡は、それぞれが元となった少女の理想を体現している。
ステータス
筋力値D 耐久値C 敏捷値B 精神力B 魔法力A 顕在性D 神秘性B
鏡の神霊。
元はカール・セプトの鏡回廊という、S級霊子災害。
発生して一年程度の生まれたてだったため、因子が一つしかなく、作中においてずっと弱い弱いと言われ続けていた彼女。ここに来て、ようやくの強化である。
強化のフラグは第二部の時点で軽く出してはいたが、まさかここまで一気に強化されるとは、誰も思っていなかっただろう。実は作者も思っていなかった(おい)
元々、飛燕との戦闘で力が目覚める、という形は今と変わらなかったものの、構想段階では、因子が壊れた状態のミラが飛燕の拳を受けて本当に死ぬことで『黄泉』の因子が覚醒し、さらに割れた鏡同士が繋がって『循環』の因子が覚醒する、という流れで、因子三つの覚醒だった。
これが今の形になったのは、単純にこの話で完結編にしようという考えがあったため。この後のユースカップ篇も、構想だけはあって、今は続編を書く気はあるんだけど、ひとまずこの第三部でウィザードリィ・ゲームは終了のつもりで話を書いていた。
ミラの最終的なステータスは最初から決めてあって、本当ならここに至るまでに、あとひとつエピソードを挟むつもりだった。でも、強化イベントを二回やって、それぞれの展開を差別化しつつ盛り上げて描けるか、と考えた時に、ちょっと厳しいかなと思ってしまい、それなら一つにまとめてしまおう、ってなったのが今回の話。結果的に、大成功だったと思う。
能力的には、『カール・セプトの鏡回廊』の時の五割程度の力を扱える。
原始分化による因子覚醒によって、自身の能力の方向性を定めたわけだけど、その時にミラは、シオンに負担がかからないように自身の能力を作り上げた。そのため、強力な能力の割に、信じられないほど燃費がいい。
能力の幅が広がると同時に、カール・セプトの鏡回廊の時の記憶を引き継いだため、精神に若干の変容が見られる。
基本的な人格は変わらないのだが、知識と記憶を得たことによってどこか影のある雰囲気を醸し出すようになり、以前のように無邪気なだけの少女ではなくなった。それを成長と呼ぶかはともかくとして、もし続きを書くとしたら、今回没にしたもう一つの覚醒エピソードを使って、彼女の掘り下げをしたいと思っている。
・パッシブスキル
『鏡』……『
鏡のパッシブ。またの名を『すけすけのまるはだか』
彼女の瞳に映した存在の、深層を映し出す能力。本質を見破り、真意を読み取り、真実を露見する。彼女の前では隠し事が出来ず、全てをさらけ出すことになる。
意識的にオフにすることはできるが、意識しないと相手の隠しごとを読み取ってしまうため、精神的負荷が大きい能力。
『循環』……『
循環のパッシブ。
自身が消費したエネルギーの三割を再利用する『リサイクル』と、相手から与えられたダメージの三割を反射する『リフレクト』の二つの効果がある。
『リサイクル』の方は、魔力消費に限らず、打撃などの物理エネルギーも対象に含まれる。そのため、彼女は連続で攻撃をすればするほど、三割増しに膂力が上がっていく。最大七段階。
『リフレクト』の方は、以前の『
『模倣』……『ミラーニューロン』
模倣のパッシブ。
向かい合った存在のステータスの内、一番高いものを自動でコピーする。仮に自身のステータスの方が高かった場合は、高い方が優先される。
瞬間的なステータスの上昇にも対応するため、ミラは必ず相手と同じステータスで対応することができる。
『黄泉』……『
黄泉のパッシブ。
ミラの霊具である『七環神魔鏡』が割れる度に、黒い霧が発生し、ミラの周囲を満たしていく。この影に触れると、魔力や生命力と行ったエネルギーが奪われていく。奪われたエネルギーは、どこに行くともなく霧散する。
一枚割れた程度では大したことはないが、割れた鏡が一枚増えるごとに効果が上がっていき、最終的には触れるだけで昏倒するレベルの魔力吸収能力を得る。
元々は、■■■■■という集団亡霊が持っていた能力で、一人が取り殺される度に一人が成仏するという民間伝承を、カール・セプトの鏡回廊が取り込むことによって変質した。カール・セプト鏡回廊の能力の基礎は、この■■■■■を取り込んだことからきている。
『牢獄』……『
牢獄のパッシブ。
一対一の戦闘において、相手を戦闘から離脱させない呪い。仮にミラから逃げようとした場合、ミラの認識範囲から離脱するまでの間、全てのステータスがワンランクずつ低下する。
解呪には精神力と神秘性がそれぞれBランク以上必要。
・アクティブスキル
『
相手の因子を写し取る能力。
ノーリスクで三つまで、それ以降は、自身の因子を一つ停止させるごとに、相手の因子を模倣できる。最大七つ。
『
自身がダメージを負う時、七環神魔鏡を一枚割ることによって、そのダメージを無効化する。相手の攻撃を食らう前に発動させておく必要がある。
『
起源を遡り、その能力を一時的に再現するスキル。
これまでのミラのコピー能力は、あくまで相手の劣化コピーでしか無かったが、このスキルによる模倣は、相手の能力の更に深奥を読み取ってコピーするため、場合によっては相手より圧倒的優位に立てる。
作中においては、飛燕の形意拳の起源を遡り、心意拳の開祖、姫際可の技術を模倣した。
『
自身が直前に負ったダメージを、負わせた人物にも与えるスキル。
七環神魔鏡を一枚使用するため、全部の鏡が割れている状態では使用できない。
キャラクターステータス3 その2に続く
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