終章 久能シオンと久我アヤネ



 ――それは私にとって、奇跡の出会いだった。



 物心ついたときには、久我アヤネにとって世界は、モノクロのように映っていた。


 その景色に色を付けるために、彼女は知識を吸収した。

 そうして世界に彩りを増やす度に、大人たちは褒めてくれて、それが嬉しくて、ますますアヤネは才知を得ていった。


 それが変わってしまったのは、いつからだろう。


 いつの間にか、大人たちのアヤネを見る目は、畏怖や嫉妬、欲望に変わっていた。

 それが嫌で、アヤネは全てを拒絶するようになった。少しでも彼女が口を開けば、大人たちは醜悪な感情を露わにしてくる。年端もいかない少女に、論破され、馬鹿にされ、見下される。そのことが許せないから、攻撃的になる大人を見ると、アヤネは更に心を冷やした。


 大人が駄目なのだから、同年代など論外だ。

 アヤネにとって、同い年の子供というのは猿と変わらなかった。訳の分からない言葉でわめき、わがままを通すために泣きわめく動物以下の生き物。目にするだけで不快感が募り、同じ場にいることさえ苦痛だった。


 そうして、アヤネは孤独になっていった。


 唯一の例外は母親だった。

 彼女は最後まで、アヤネから距離を取ろうとはしなかった。アヤネが鬱陶しがっても側にいようとしたし、事あるごとに構おうとした。


 だから、そんな母に、ある時アヤネは議論を持ちかけた。


 期待はしていなかった。答えを求めていたわけではない。ただ、この人なら、自分の話を聞いてくれるんじゃないかと、そんな微かな望みを抱えていた。

 ひとしきり語りきったアヤネに。

 母である汐音は、困ったような顔をして答えた。



「ごめんね。アヤネちゃんの言うこと、よくわかんないや」



 その瞬間、アヤネは世界に期待するのをやめた。


 後から考えると、母に悪気は無かったのだろう。

 ただまっすぐに娘と向き合おうとしたからこそ、理解できないことを理解できないと、正直に答えただけなのだ。けれども、その一言は、幼い少女の心を壊すのに十分の破壊力を秘めていた。


 そうして、アヤネは本当に孤独になった。


 親は自分が生きていく上で必要な存在で、回りの人間はただの風景。自分の言葉が通じる相手はなど存在しない。ただ一人の世界を充実させるためだけに、アヤネは生きた。


 孤独は心を乾かしていく。

 冷えて乾いて、ボロボロと崩れていく情緒を、アヤネは拾うことなくそのままにした。自身の心を守るために孤独になったのに、彼女はその心すらも失いそうになっていた。


 誰も彼女を認めない。

 誰も彼女を見つけない。

 誰も自分を――見てくれない。


 苦しくて、辛くて、もがいて、あがいて、うめいて、叫んで。

 それを一度として外に出すことが出来ず、少女はただ一人、孤独に乾いていく。

 そうやって自分は、乾いて死ぬのだと、彼女は疑いもしなかった。

 そんな時だった。




「――やっと、見つけた」




 万感の思いを乗せた言葉には、涙が混じっていた。

 アヤネが解いてしまった知育パズルを、真剣に解こうとする少年。アヤネが無造作にやり捨てたものを、懸命に取り組むその姿に、特別視する要素など何もないはずだった。


 けれど、それが乾いた心に響いた。


 初めてだったのだ。


 アヤネがやった行為に、同い年の少年が反応を返してくれた。アヤネを邪険にせず、その行為に感銘を受け、ついてこようとしてくれる同年代を、彼女は初めて見たのだった。


 それはアヤネにとって、奇跡に等しい出会いだった。



 ※ ※ ※



「これがシオンとの馴れ初め」


 アヤネは目の前の男に向けて、静かに語る。


「当時の私にとって、同年代は猿同然だったけど、シオンだけは違った。そこに、天才を気取った世間知らずの小娘は、悩殺されたの」


 自嘲げに言いながら、アヤネはまんざらでもない表情で続ける。


「私がやろうとすることを、アイツはわけもわからないくせに、理解しようと努力していた。到底追いつけないって分かっていながら、アイツは私に追いつこうとしたのよ。それが嬉しくて、私はアイツに構った。そして、依存した」


 だって、初めてだったのだ。

 自分の言葉を理解してくれる人に、初めて出会ったのだから、依存しないはずがない。


「そこからは、本当に色んなことをやったわ」


 思い出を懐かしむように、アヤネは頬を緩ませる。


「シオンのやつ、物覚えはそんなに良くないんだけど、集中力がすごくてね。私が教えたことを、みるみるうちに吸収していったわ。遊び感覚でお勉強していたからか、とにかく時間も忘れて、睡眠時間以外はべったりだった。その果てが神童だなんて呼ばれるようになって、ほんと可笑しいったらありゃしないわ」


 アヤネはシオンとの思い出を振り返りながら、その一つ一つを語って聞かせる。


 数々の研究を発表し、神童と崇められたこと。

 論文を巡って、魔道連盟の過激派と一悶着あったこと。

 霊学協会の重鎮から睨まれ、罠に嵌められそうになった所を嵌め返したこと。

 研究だけでは飽きてきたので、実戦に首を突っ込んだこと。

 戦場のど真ん中に降り立って、何も出来ずに逃げ帰ったこと。


 各地に発生している迷宮の探索に取り掛かったこと。


 熱量が遡行する氷の城塞で、海の上を凍えながら駆けずり回ったこと。

 雷を閉じ込めた雲の牢獄を、風神と呼ばれた神霊と共に攻略したこと。

 七重に円環する鏡の回廊に、七日間閉じ込められて遭難しかけたこと。

 人を呪殺する悪夢の迷宮で、悪夢の中でお互いの影を殺し合ったこと。



「楽しかったわ。本当に、楽しくて気が狂いそうだった。あの時、私は初めて人間になれたと思った。それと同時に、シオンが私を、人間にしてくれた」


 シオンがいたらなんでも出来た。

 シオンと一緒なら、不可能はないと思っていた。


 けれど――いつしかアヤネは、一つの不安を覚えるようになった。


「シオンの成長は嬉しかったわ。唯一語り合える相手は、シオンだけだったもの。でも――シオンにとって、私はどう見えているのか。それがすごく、不安だった」


 シオンはアヤネに追いつこうと努力を重ねていた。

 アヤネから学べるものは全て学び、吸収できるものを片っ端から吸収していった。そうやって、アヤネのことを慕ってくれていることは、素直に嬉しかった。


 でも――もし自分に、その価値がなくなったら、彼はどうするだろうか?


「怖かったわ。もしアイツが、私を追い越したら、私はきっと見向きもされなくなる。それが怖くて、だから私は、力を求めようなんて、変なことを言ってしまったの」


 その結果が、四年前の事故。

 そしてアヤネはシオンと、決定的な決別をすることになった。



「とまあ、これが事の真相。私がアイツに執着する理由。自分を優秀だと勘違いした小娘が、初めて友人が出来て、舞い上がって依存しただけの話よ。どう? 笑えるでしょ」



 そんな風に、アヤネは自虐的に振る舞いながら、笑ってみせる。


 それに。

 目の前で聞いていたスーツ姿の男性は、つまらなそうに吐き捨てた。


「ふん。くだらんな。ああ、お前の言うとおり、実に滑稽な話だ」



 二十代後半くらいの男性だった。

 縁無しのメガネに、つり上がった目付きの悪さが、冷たい印象を与えている。


 飛鳥井あすかいクロト。

 アヤネの祖父の秘書であり、現在、一時的にアヤネの家庭教師をしている男である。


 彼は腕組みをしたまま、パイプ椅子にふんぞり返って、偉そうに言う。


「自分からは何もしなかったくせに、理想の男が自分の人生に転がり込んできたんだ。ふん。そいつは確かに奇跡だな。だが、それは決して美談なんじゃない。醜悪な自虐で自分を慰めているだけだ。その話から分かるのはな、クソガキ。お前がどれだけ幼稚で、甘ったれたガキだったかということだけだ」

「相変わらず辛辣ね」


 予想通りの毒舌に、アヤネはくすりと笑って、開き直っていう。


「これでも私、弱音を吐いているつもりなんだけど? そんな弱った女の子に、あんたは優しい言葉の一つもかけられないものなの?」

「生憎だが、クソガキに好かれる趣味はない。身体はともかく、心が幼稚なのは見ていて反吐が出る。優しくされたかったら、少しは大人になって出直してこい」


 ほとんど暴言でしかない言葉を吐き捨てながら、クロトはアヤネを見下してくる。


 その姿に、アヤネは苦笑を浮かべる。

 以前ならば、彼のそんな態度に憤慨して、徹底的に攻撃をしていたところだ。しかし、今のアヤネには、彼の言葉が的を射たものであるのが分かる。


 アヤネは確かに、幼稚な小娘だった。その才知を鼻にかけ、回りを見下していただけで、自分から何かをしようとはしていなかった。

 シオンと出会ったことで多少は成長できたが、それでもアヤネの視野は、非常に狭いものだった。それを広げてくれたのは、この男の粗暴な対応だった。


 そんなクロトは、気遣いの欠片もない口調で言い捨てる。


「それで、昔話は終わりか? まったく、話を聞いてほしいと言ってきたから黙って聞いてたが、くだらん時間つぶしもあったものだ」

「良いじゃない。いつもディスカッションばかりじゃ疲れるし、たまには息抜きをしたいもの」


 唇と尖らせながら、アヤネは文句を言うように抗議する。


「それに、時間が空いたって、アンタはどっかで接待ゴルフにでも行くだけでしょ。それこそ何が楽しいのよ」

「バカを言うな。接待は楽しいぞ。気を使えば使うほど評価されるし、何よりその時間が確実に票につながるんだからな。これほど充実した余暇の過ごし方もない」


 鼻を鳴らしながら、したり顔で言うクロト。その大人げない様子に、アヤネは苦笑する。


 政治家秘書である彼は、次の地方選挙に出馬するための票集めをしているのだった。その合間を縫って、祖父の命で、週に二回、アヤネの家庭教師をしているのだから、この時間を疎ましく思っているのは当然だろう。


 最も、出会ったばかりの頃――ちょうど三ヶ月前は、もっと殺伐としていた。

 八月末の初対面では、互いに罵倒しあい、最終的にはアヤネが魔法をぶっ放して大騒ぎになる所だった。


 それが今では、こうして軽口をたたきながら談笑できるようになっている。たまに険悪になることはあるが、それもじゃれ合いにようなものだ。


 アヤネにとってクロトは、自分を常に見下してくる憎々しい男だった。しかし、彼はアヤネに、あることを教えてくれた。


「ふん、クソガキ。よく聞け」


 彼はいつものように、アヤネを冷たい瞳で見つめながら、ある事実を突きつけてくる。


「誰かに何かを期待するという行為は、傲慢で怠慢な行為だ。それはな、自分に人を動かすだけの能力がないと、喧伝しているのと同義だ。周りの人間を馬鹿にしていたお前は、それ以上の大馬鹿だったというわけだ」

「ごもっとも。言葉もないわね」


 アヤネはその言葉に、肩をすくめてみせる。

 クロトの言うことは、実に的を射ている。

 彼の言葉を受け入れるのに、二ヶ月かかった。最初から最後まで、彼と真正面からぶつかってきたからこそ、受け入れられた。


 人に期待するのではなく、人を利用することを覚えた。そうすることで、自分がこれまで、どれだけ人に頼って生きてきたのかを実感した。


 自分の未熟さを、ようやく自覚できた。

 だからアヤネは、ようやくシオンから開放されたのだ。


 その事実に一抹の寂しさを覚えつつ、アヤネは静かに目を閉じる。

 そんな彼女に、クロトは更に言葉を重ねる。


「だが、。一つだけ、褒めてやる」

「え?」


 名前を呼ばれたことに驚きつつ、アヤネはクロトを見やる。

 彼は相変わらず冷たい瞳を眼鏡越しに向けながら、変わらない声色で言った。


「お前は俺に慰めを期待しなかった。代わりに、昔話をして気持ちの整理をつけるために、身勝手にも俺を利用した。そのエゴは好ましい」

「……ふん。それ、普通だったら褒め言葉にはならないわよ?」


 そう言い返しながら、アヤネは満更でもない表情を浮かべる。


 この年上の男性との関係は、今はまだ、こんな感じだった。




 そして、飛鳥井クロトは帰っていった。

 それを見送った直後に、病室に一人の少年がやってきた。




※ ※ ※




 ちょっと散歩しない?

 病室を訪ねてきたシオンに、アヤネはそう提案した。


 散歩と言っても、病院内で行ける場所には限りがある。一階まで降りて、売店などを冷やかしてもいいが、少し外の空気を吸いたい気分だった。


 というわけで、もうすぐ十二月になろうとするのに、二人は病衣のままで、吹きさらしの屋上へと足を踏み入れた。


「さっむ! ちょっと、これ風強すぎじゃない?」

「だから言っただろうが。もう夕方だから日も落ちてるし、楽しいもんなんてないって」


 そう文句を言いながら、シオンはアヤネの車椅子を支えている。

 右腕のない彼は、左手だけでかろうじて車椅子の方向を固定するだけだった。アヤネは車輪を懸命に押しながら、ようやく屋上の縁のところまでたどり着いた。


 五時過ぎともなると、日も落ちてきて暗くなってきている。病院の屋上に干してあるシーツが回収され、広々とした空間が広がっていた。


 吹き付ける風に身を震わせつつ、アヤネは言った。


「とりあえず、本戦出場おめでとう。誇らしいわ」

「………」

「何よ、何か言いなさいよ」

「いや、お前は、その」


 言いづらそうに、シオンは口ごもる。

 彼のこういう所は、昔から変わらない。普段はズバズバと的確なことを言うくせに、こちらが開き直ってしまうと、急に気を使いはじめるのだ。そういう所は本当に不器用である。


 もっとも、アヤネだってあまり人のことは言えない。今のアヤネなら、気遣いができる分だけシオンはまだ大人だと思えるくらいだ。


「アンタと決着をつけられて、私は満足よ」


 スッキリした気分で言ったつもりだったが、言葉には若干の寂しさが混じった。

 それを振り払うように、アヤネは言葉を重ねる。


「全く敵わなかったわ。右腕を魔道具化するなんて反則だと思うけど、時間制限のある中で、アンタは最高のパフォーマンスを発揮した。それについていけなかった時点で、私の負けなのよ。それが認められなかったから、私は最後、あんな醜態を晒した」


 それは、ずっと目を背けていた本音だった。


 八年前に芽生えていた感情おもい

 四年前から抱え続けた感情のろい


 久能シオンという少年と出会ったことで、久我アヤネが得た感情きもち


「気持ちをぶちまけて、本当にスッキリしたの。だから、アンタは何も負い目に感じることはないわ。私はこれで、やっと気持ちの整理がついた」


 小さく息を吐いて、アヤネは首だけを後ろに向ける。

 シオンを見上げながら、精一杯の威厳を装いながら、アヤネは言う。


「強くなったわね、シオン」

「……そんな言い方、するなよ」


 感情を揺さぶられたのか、微かにシオンは表情を歪めて、目を伏せる。そのまま彼は、アヤネから目をそらして、身を震わせた。


 シオンは否定こそしたが、アヤネと彼の関係は、師弟のそれで間違いなかった。それはシオンもよく分かっているのだろう。だからこそ、彼はアヤネを直視できない。


 そんな彼の姿を見て、アヤネはどこか、誇らしい気分になれた。


 アヤネは飛鳥井クロトから何度も、「人に期待するだけで、自分からは何も出来ない子供」と言われ続けてきた。そのことを今は否定するつもりはないが、今のシオンを見ると、少しだけ違う気持ちがうまれてくる。

 アヤネは、シオンから与えられてばかりだと思っていた。けれど、彼女もまた、彼に様々なものを与えられていたのだ。


「ねえ、シオン」


 再び前を向きながら、アヤネは後ろにいるシオンに話しかける。


「私ね、婚約しているの」

「………………あぁ」


 唐突に振られた話に、はじめは無反応だったシオンは、ワンテンポ遅れて、納得のこもった相槌を打った。


 その分なら、シオン側でも何らかの情報を得ていたのだろう。別に率先して隠していたわけではないし、怪しい行動はいくつかあったので、仕方ないと思う。


 婚約者は、祖父の秘書である、飛鳥井クロト。


 仲人は祖父で、クロトをアヤネと結婚させることで、飛鳥井クロトという未来の政治家と血縁関係を結ぼうという考えだ。

 まだ話の段階で、本決まりではないが、その前フリとして、クロトを家庭教師として週に二回アヤネのもとに送り込んでいる。


 その辺の事情を、淡々と説明する。

 アヤネの言葉に、シオンは静かに相槌を打つ。その空気が、なんだか心地よかった。


「はじめはね。一回りも年の離れた男と婚約なんて、馬鹿じゃないかって思ったものよ。おかげで随分荒れたわ」

「お前はいつも荒れてただろ」

「いつも以上によ。一度、病室が半壊して、こっぴどく怒られたわ」


 もっとも、それも今ではいい思い出だ。


「クロトのことは、今は信頼しているわ。口は悪いけど、筋は通ってるし。私のことをバカにするけど、私のことをないがしろにはしないし。何より、子供扱いすることで、一線を保っている所に、好感が持てるわ」


 クロトもまた、この婚約には乗り気ではない。そのことは、会ってすぐに直接聞かされた。しかしその上で、彼ははっきりと言ったのだ。


「俺にとってはどちらでも同じことだ。お前に選ばせてやる。拒否するなら、今すぐは無理でも、時間をかけてお前との関係を精算しよう」


 あくまでアヤネの意思で決定を行うと、彼は最初に言った。

 だからこそ、ズルズルとここまで、結論を引き伸ばしてきた。


 しかし、それももう限界だろう。


「今度、家族全員で話してみようと思う。どうなるかわからないけど、私はわたしのやりたいように、やるつもりよ」

「……手助けは、いらないか?」

「結構よ。別に、アイツのこと嫌ってるわけじゃないから」


 それとも、と。

 意地悪な気持ちを抱きながら、アヤネはわざとらしく言う。


「どこかの誰かさんの時みたいに、恋人のふりでもして助けてくれるのかしら?」

「……いや、そこまでは出来ないな。ノキアに怒られる」


 苦笑を漏らして、シオンは言う。


「ただ、手助けできることがあれば、言ってほしい。お前が苦しむ姿は、見たくない」

「ありがとう。その気持ちだけで、十分よ」


 穏やかに言葉をかわして、二人は小さく笑いあった。

 まさか、こんな風に落ち着いて言葉を交わせる日がまた来るなんて、思いもしなかった。そのことが、たまらなく嬉しかった。


 四年前のあの日に壊れた二人の関係は、元通りにはならなかった。

 けれども、それぞれの道を歩むことで、また二人は、向かい合うことができるようになった。





 かつて、二人の神童が居た。

 アヤネ・フィジィとシオン・コンセプト。


 数多くの偉業をなした彼らだが、今はもう、かつての栄光を失った。

 表舞台から一度去った二人は、それぞれまた、自分だけの道を歩き始める。


 孤独だった少女。

 孤高ぶった少年。


 二人はそれぞれ、大きく成長して、再び道を選ぶ。


 互いに認めあった、自身の相棒に負けないように。

 強く、足を踏みしめて。



 二人の道は、今分かたれた。






 Desire for recognition ~抗いの拳~ ――― END




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