第3話 バディになってよ!


 その日から、七塚ミラの猛攻は始まった。


 朝、登校すると。

「おはようシオン! バディになってよ!」

 授業が終わると。

「シオン! 今暇? バディにならない?」

 移動教室のタイミングで近づいてきて。

「ねーねー。 バディになってよ!」

 昼食時に周りを飛び回りながら。

「お願いだよ! わたしと契約してよ!」

 実技授業の時にも。

「ねーえ! わたし、結構使えるファントムだよ? 見て見て!」

 放課後、帰るときにも。

「あ、今から帰るの? 一緒に帰ろうよ! あとバディになって!」



 少しでもタイミングを見つけては、シオンに対して熱烈なアプローチを送ってくるのだった。

 最初こそ、慣れない敬語を使ったりと、どこか遠慮した風があった彼女だったが、次第に馴れ馴れしいくなり、終いにはうざったいくらいに付きまとってくるようになった。

 授業中だろうとお構いなしに教室に入ってきて、そばで待機しているのである。霊体化しているため、授業の妨害になるほどではないが、やはり近くにいると気が散る。


 それが三日目ともなると、もうシオンの我慢も限界だった。


「だぁもう、うるさい! 断るって言ってるだろ!」


 もう何度も、明確に断りの言葉を言っているのだが、それでもミラは諦めなかった。


「なんで? どうしてダメなの?」


 くりっとした純真な瞳が見つめてくる。

 その目は、偽りを許さない目だ。

 ひたすら無垢に、ひたむきに、まっすぐに、彼女は要求を突きつけてくる。


 バディとなって、ウィザードリィ・ゲームに参加して欲しいと。


 その視線の真っ直ぐさは、今のシオンには、少しだけ重すぎるのだった。


「いーなー。シオンはよぉ」


 昼休憩の時間。

 学内に設置されているカフェテリアの一角。高校生から大学生まで、様々な生徒で賑わっている昼食時に、レオが再三になる愚痴をこぼした。


 それに、苦々しい思いを抱きながら、シオンは返した。



「何が羨ましいんだよ。まったく」


「うわ、贅沢発言。てめぇ、ミラちゃんにあんだけ言い寄られて、何が気に喰わないんだよ。なあ、ミラちゃん?」


「そうだよ! こんな美少女が言い寄ってるんだから、ちょっとくらい優しくしてよ」


「自分で美少女って言ってんじゃねぇよ……」



 当たり前のように、昼食の場にも一緒にいるミラだった。

 彼女は、ぷかぷかとシオンの周囲を浮遊しながら、手に持ったハンバーガーを頬張っている。ファントム用に作られた霊子食材であり、魔力の補給もできるのだが、どちらかと言えば嗜好品として要素が強い代物だ。

 一応、ファントムも通常の食事を取ることもできるのだが、それには現実での一定以上の権限が必要になる。

 上品にハンバーガーを頬張る少女の姿は、確かに可愛らしい。少々幼さの残る顔立ちが、無邪気さを際立たせている。


 しかし、黙っていれば美少女なのは確かだが、口を開けば。


「ねえ。どうしたらわたしとバディになってくれる?」


 と、平行線なのである。

 もう耳にタコが出来るんじゃないかと思うくらいに、同じ問答が繰り返されている。


「わたしにできることなら、なんだってするからさ!」

「できることって、何ができるってんだよ」


 シオンに問われて、ミラはきょとんとした。

 んー、と可愛らしく考える仕草をした後、首を傾げながら言う。


「そりゃあ、話し相手?」

「しょぼいな。間に合ってる」

「宿題も手伝ってあげるしさ!」

「宿題は自分でやらないと意味がない」

「じゃあ、シオンの代わりに毎日ご飯食べてあげる」

「たかってるだけじゃないか」

「もー、わがままだなぁ」

「どっちがだよ」


 頭が痛くなってきた……。

 頭を抑えていると、ミラがもじもじしながら言う。


「じゃ、じゃあ、とっておき。ほんと、シオンだけなんだからね」

「とっておきって、何だ」

「け、契約してくれたら」


 顔を赤くしながら、彼女はちらりと期待のこもった目で見てくる。


「わたしの身体、自由にし放題だよ?」

「身体……ねぇ」


 シオンは冷めた瞳を彼女の身体に向ける。

 中学生くらいの容姿。セーラー服のスカートから伸びる細い手足。ストンとまっ平らな胸。

 総じて、貧相な身体。


「ハッ」


 鼻で笑ってやった。


「ひ、ひどい! 鼻で笑ったな! 乙女の一世一代の告白なのに! 私を弄んだな!」

「乙女は自分の身体を売ったりしない。いい加減にしろよお前」


 疲れてきたシオンは、ぐったりとしながら、絞りだすようにいった。


「もうかんべんしてくれ。嫌だって言ってんだろうが……」

「ぶー。何で嫌なの?」


 子供っぽく、ミラはふくれっ面を見せる。

 何でも何も、自信がないからだ。

 自分の現在の実力不足を嫌というほど実感している時に、そんな面倒事に構う暇はない。


「ダメだってミラちゃん。こいつ、一回へそ曲げたら頑固なんだから」


 その様子を見ていたレオが、楽しそうに笑いながら言った。

 それに、ミラも気を落としながら返す。


「んー。知ってる。絶賛体験中」

「な。だから、こんな唐変木ほっとけって」

「むー、でも、そういう訳にはいかないもん」

「じゃあさ、俺と契約しない? それだったら、ウィザードリィ・ゲームに出れるぜ。どうよ?」

「ごめん、無理」


 バッサリであった。

 少なからず勇気が必要だったことだろう。あまりにもすっぱりと断られたレオは、「おう」とうめいたあと、ガタンと机に突っ伏した。


 さすがに申し訳ないと思ったのか、ミラは慌ててフォローをする。


「ご、ごめんね。レオはいい人だと思うよ。けど、バディはシオンだけって決めてるの」


 あまりにも一貫した主張。

 この三日間、ずっと彼女はこの調子だった。シオンでないと、ダメだと。他の生徒から声をかけられても、少しもぶれずにそう答えるのだった。


「なあ。少し聞いていいか?」

「なになに!?」


 シオンから話しかけられただけで、子犬のように喜ぶミラ。

 尻尾をぶんぶん振ってる姿が見えた気がした。


「もしかして、バディになってくれるの?」

「そうじゃない。お前、どうして僕なんだよ」


 これまでのいなすような対応ではなく、真剣に尋ねた。

 相手が真剣なら、こちらも真剣にならないと、話にならないだろう。


「お前の目的……ウィザードリィ・ゲームで一番なるってことだったか。それだったら、僕なんかよりも、ずっと適任な奴らがいっぱいいるはずだ。一年の実技科や、二年の先輩たち。それに、大学部の方には、もっと練度の高い魔法士もたくさんいる。ウィザードリィ・ゲームをやるってだけの目的なら、僕みたいな未熟者を選ぶ必要はないんじゃないのか?」


 彼女の求める、『一番』と言うのが、どの地点を指すのかはわからない。


 何を持って一番とするのか。それは分からないが、少なくとも、シオンと組むよりも、他の魔法士と組んだほうが、確率はぐんと上がるだろう。

 こんな壊れかけの魔法士を捕まえて、得になることなど何もない。

 それなのに、どうしてミラは、シオンにこだわるのか。


「それでもわたしは、シオンがいいの」

「だから、どうして」

「最初っから強い人と組んでも、面白くないよ。それに、信用もできない。わたしが知ってる人じゃないと、わたしを使ってもらおうなんて、思えないもん」

「お前は僕の何を知ってるんだよ」

「知ってるよ。ずっと見てたもん。シオンが、ってこと」


 ピタリと。

 その言葉で、シオンは思わず硬直してしまう。


「ん? どしたよ」


 空気が代わったのを悟ったのか、レオが疑問を口にする。

 しかし、それに返している余裕はなかった。

 動揺を悟られないように、あくまで自然体を装って、シオンは飲み物を口に含む。コーヒーは泥のような味がした。

 気分を落ち着けながら、かろうじて言う。


「僕にそれを期待しているんだったら、本当にお門違いだ」


 まっすぐに、ファントムの少女の目を見て、はっきりと言ってやる。


「今は、簡単な魔法でさえも結構手こずってる。実戦に使えるレベルなんて、もってのほかだ。こんなポンコツを相方にしても、何のメリットもないぞ」

「知ってる。それでも、わたしはシオンが欲しい」


 全くブレないその精神性。

 ここまで来ると驚嘆する他ない。

 その強い意志は、きっと彼女を高みにあげるだろう。目的を達成する上で、一番重要なのはメンタルだ。揺るがない精神を持つ彼女は、それをはじめから持っている。今すぐは無理でも、ちゃんとしたパートナーと、正しく研鑚を積むことができればきっと大成する。


 一瞬だけ。

 その隣にいる自分を、想像してしまった。


「………」


 無言で、シオンは立ち上がる。

 立ち去るために背を向けて、一歩を踏み出しながら言った。


「『』『』――しばらくそこにいろ」

「ん? って、え!?」


 どうやらうまく起動したらしい。

 ちらりと後ろを見ると、彼女の浮き上がった足に、半透明の鎖が巻き付いていた。その鎖の先は、テーブルの足にガッチリと固定されている。


 手の中で携帯型デバイスを振りながら、シオンは言う。


「この程度の術式でも、食後から今までかかった。時間かければ、これくらいはできるが、瞬時には無理だ。これでわかったろ、今の僕の実力は」

「や、ちょっとまって、待ってよ!」

「というわけだ。レオ、悪い。先に行ってるぞ」

「お、おう。って、俺もかよ!」


 即興で作り上げた術式だったので、範囲の指定をミスっていたらしい。一緒にレオも足を拘束されていたのだが、それに構っていられなかった。

 面倒事から早く逃れたい一心で、シオンは足早にその場を去った。



 ※  ※



 国際魔法テクノロジー学園は、高等部と大学部、そして大学院の三部構成となっており、総生徒数は二千人ほどである。

 高等部三年と、大学部三年を合わせた六年コースと、それに大学院三年を加えた九年コースが用意されており、様々な分野で活躍できる魔法士を育てるのが目的となっている。


 生徒数や研究内容の違いはあるにしても、この構成はどの魔法学校も変わらず、魔法士を志す人間は、必ず魔法学校の門をくぐることになる。


 とはいえ、高等部からいきなり魔法を習う、という人間はそこまで多くない。そもそも、魔法学府の入学試験を受けるためには、予備校等で、一定単位を取らないと行けないので、基礎的なことくらいならば、すでに習ってきているのだ。


 だからこそ、入学前から名前が知れ渡っているような生徒も、わずかなりとも存在する。


「神童、ねぇ」


 かつてそう呼ばれたことのあるシオンは、皮肉げにため息を漏らした。

 目の前には、透き通る青空が広がっている。


 場所は屋上。


 五月の風は心地よく、絶好のひなたぼっこ日和と言える。

 彼の隣には、同じように寝転んでいるノキアが、心地よさそうに目を細めている。彼女に誘われて来てみたが、なかなか絶好のサボりスポットと言えた。


 授業ブッチ。

 入学二ヶ月目では考えられない不良行為である。


「はわぁあ。やっぱり、授業中に来る屋上は格別だね」

「……入学して間もないってのに、こんな場所を知ってるお前にびっくりだよ」


 寝ることに関しては労力を惜しまないと言うべきか。

 この屋上に入る際も、電子ロックを魔法でクラッキングして解錠したのだ。ブザーが鳴っていないところを見ると、後処理まで完璧だったらしい。つくづく底知れない女である。


 ノキアは、くつくつと楽しそうに笑いながら、言い返す。


「人の来ない場所を教えてくれと言ってきたのは、君の方だろう? 私は情報提供したに過ぎないさ。ついでに一緒にサボれたら、後々先生に対して言い訳を手伝ってくれるんじゃないかなぁ、という下心はあるけれどね」


「生憎だが、僕は言い訳するつもりはないぞ。こんな弁解のしようがない状況、素直に罰を受けるしか無いだろ」


 とはいえ、助かったことは助かったのだ。

 鎖の拘束はすぐに解けるだろうから、教室でミラと鉢合わせになるところだった。


「ふふ。それにしても、あのファントムの子、随分とシオンくんにご執心じゃないか」


 ノキアが面白いおもちゃをもてあそぶように言う。


「君の逃亡の手助けをした手前、こんなこと言うと卑怯かもしれないけれど、あそこまで一途だと、いっそ可愛らしいとも思うけどね」

「他人事だと思いやがって」


 憎々しげに呟きながら、ふぅとため息を漏らす。


 先ほどのレオにしてもそうだが、クラス中が同じ反応をしていた。

 ミラの容姿が子供っぽく、可愛らしいのも理由だろう。微笑ましい物を見るような目で、クラス中が見ているのを感じる。

 当事者からすると、たまったものではない。


「なんだって僕なんだよ……」


 元々が、バディ契約などまだ早いと思っていたのに、その上求めるハードルが高すぎた。自分の実力では無理だとはっきり言ったにも関わらず、ミラの答えは変わらなかった。


『それでも、あなたじゃないとダメなの』


 耳にタコが出来るほど聞かされた言葉に、頭痛を覚える。

 もっと実力のある魔法士は、一学年の中でもたくさんいるにも関わらず、なぜミラはシオンに執着するのか。


「何でって、そりゃ、君のことを知ってるからじゃないかい?」


 あっさりと、ノキアはそう言った。


「君は完全に忘れられていると思っているみたいだけれど、四年も前のこととは言え、覚えている人は覚えてるもんだよ。神童の名前は」


「……だから、今はそんなんじゃないんだって」


 苦虫を噛み潰すような顔で、シオンはつぶやいた。



 神童。

 もう四年も前。小学生の時分に、シオンはそう呼ばれていた。



「物理のアヤネと、概念のシオン、と言ったら、一時期の魔法学会じゃあ有名人だったからね。お父様が、よく口にしていたよ。彼らは天才だって」


「たまたま出来た魔法式が、評価されただけだ」


「そのたまたまも、何度も続けば偶然ではないだろう?」


 空を見上げたまま、ノキアは諳んじるように一つ一つ功績を上げていく。


「『熱伝導の遡行迷宮解呪』『カール・セプトの鏡回廊解呪』『特定条件下における第二種永久機関仮設提示』『フーリルの第二迷宮解明』『虚数領域の簡易術式』『燃素理論を用いた氷結術式』……と、私が覚えているのは、この辺りだね。魔法式の作成だけじゃない、迷宮攻略までしているんだから、それは実力だろう」


「…………」


「君たち二人が事故で再起不能にでもならなかったら、現代の魔法研究はもっと先に進んでいたんじゃないかってお父様が言っていたよ。活動期間が短かったからすぐに忘れ去られたけれど、強烈に記憶に残っている人たちは、今でも君たちの復活を待っていると思うね」


「軽々しく言ってくれる」


 確かに彼女の言うとおりなのだろう。


 かつてのシオンは、その称号にふさわしいだけの実力を持っていた。それこそ、今の彼など話にならないくらいに。


 だが、それも昔の話だ。

 魔法実験中の事故で大怪我を負い、魔法士生命はほぼ絶たれた。

 シオンの身体の四割近くは人工生体に代わり、生体魔力の生成は、全盛期の三割程度にまで落ち込んだ。日常生活や運動能力こそ問題ないくらいに回復したが、こと魔法を扱う上で、この肉体は完全とは程遠いものだった。


 同じように神童と呼ばれていた彼の従兄妹も、同じ事故で、今でも回復しない障害を負っている。二人共、ほぼ再起不能と言っても過言ではない。

 だから、かつての栄光を持ち出されても、困るだけなのだ。


「だいたい、才能で言うならお前のほうだって大概だろ。ただ面倒くさがりなだけで、本格的に研究を始めたら、すぐに結果を出すと思うぞ」


「気軽に言ってくれるけれど、私は基本面倒くさがりだからね。努力という才能が欠如しているんだ。そもそも研鑽しようとは思わないし、それに研究はもっと面倒だ」


「……研究しないってお前、それじゃあ何しに技術科に来たんだよ」


「親への義理立て」


「なるほど」


 それは確かに明確な理由である。

 んー、と。ノキアは寝転がった状態で大きく伸びをする。

 制服が汚れようとも気にした様子はまるでない。自由気ままな猫のような様子で、彼女は「ふわぁ」とあくびを漏らす。


「でも、おかげで今は、下宿で一人暮らしできるし、感謝感激ってところだねぇ。少なくとも私は院まで行く予定だから、これから九年間は自由! 卒業後にはどうせ適当な相手とお見合いさせられるんだから、学生時代くらいは全力で楽しむさ」


「さいですか。そりゃ良かった」


「ふふん。ま、シオンくんには悪いけれども、私は気ままに楽しませてもらうよ。こういうトラブルは、傍から見ているとすごく楽しい。せいぜい頑張って」


「性格悪いな、お前……」


 気持ちは分からないでもないが、と心のなかで呟きながら、ふっと空に視線を移す。

 青い空と流れる雲。平穏そのものの昼下がり。

 衝動的に授業をサボってしまったため、この後の展開は非常に気が重いが、それでも、この空を見ていたら、すべてがどうでもいい気がしてきた。


 ミラに言い寄られることも、些細な事であるような。


 ふと、そこで疑問が浮かぶ。


 ミラがシオンにこだわるのも疑問だが――では、なぜ自分は、ここまで頑なにミラを拒絶するのだろうか。

 表面的な理由はいくつも浮かんでくるのに、肝心の本心は、なかなか見えてこなかった。



 ※  ※



 翌日のことである。


「騙された」


 げっそりと、一晩でやつれたような顔をしたノキアが、机に頭を乗せて落ち込んでいた。

 姿こそいつもの寝坊助であるが、今日は雰囲気から陰鬱さがこぼれ出している。

 どうしたのか、という答えは聞くまでもなくわかっていた。


「いけませんよ、お嬢様。草上家の娘として恥ずかしくないよう、シャキッとしてください」

「あーもー、うるさいな。わかってるよ!」


 言いながらも態度を改めようとしないノキアに、そばに仕える存在は、なおも小言を加える。長身でスーツを着た美麗な女性。

 しかし、言い合っている二人の姿は、出来た姉とわがままな妹と言った様子だ。


 困惑するクラスメイトたちを見て、女性が咳払いを一つして、挨拶をする。


「ご学友の皆様、はじめまして。わたくしは、ノキアお嬢様にお仕えしております、ファントムのデイム・トゥルクと申します。どうぞお見知り置きを」


 かしこまった風に、礼儀正しくお辞儀をする姿は堂々たるものだった。

 トゥルクと名乗ったそのファントムは、それだけで周囲に大きな存在感を与えていた。


「私は認めてないから、見知り置かなくていい」

「お嬢様。まだそのようなことをおっしゃっているんですか? もうどうにもならないのに」

「バカ親父め、無理やり契約させやがって。認めない……私は認めないからな。自由気ままな学生生活を、諦めないからな……」


 ボソリと不服そうにノキアがつぶやく。

 要するに、バディ契約が公認されたタイミングを見計らって、父親がお目付け役となるファントムを付けたのだそうだ。



 そんなわけで、記念すべき技術科初のバディ契約は、草上ノキアだった。




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