さようなら、レスポール。

鈍行列車の扉が開くと

真っ暗な畦道、蛙の声

それからむわっとした草のにおい


さようなら、レスポール。

君はまた此処へかえってきた

あの夏、今度は君を連れてこようって

決めてからちょうど一年後の夏の夜のこと


君はこんな田舎にまでも

真っ赤なレスポールを連れてきていたね

蛙の鳴き声に掻き消されながら

小さな音で歌って弾いていたね


さようなら、レスポール。

ギターのネックが折れてしまったとき

君は三日間返信をしなかったね

ただプロフィール画像はその時からずっと

真っ赤なギターの在りし日の姿で

いつまでもさよならを言いつづけていたね


そしてまた三年後の夏、僕は一人

同じ鈍行列車に乗り此処へかえってきた

真っ暗な畦道と蛙の声と

変わらないむわっとした草のにおいと


僕は僕の中に住む君とまた二人で

思い出のレスポールも一緒に連れて

一人またここへかえってきた

君はもう一度、ここで歌い出し

真っ赤なレスポールは高く鳴り響く


さようなら、レスポール。

君だけはどうか、いつまでも歌い続けていてくれ

さようなら、レスポール。

その音だけは、いつまでも僕と共に在っておくれ

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