夕焼けと僕の罪


いちばん美しい君の一瞬を

僕はいつか写真に切り取った

その中で君はいつまでも美しく

一瞬の時間の姿をとどめていた


だが君が生きながら遠くへ行ってしまったいま

残されたその姿はもはや虚構でしかなく

時々開けられる机のなかに眠る君は

同じ姿のまま美しくなってゆく


それは僕の思い出や理想やが

同じ君の写真を飾り付けてしまうからであり

遠くへ行ってしまった君への追憶は

離れれば離れるほどあざやかになってゆく


僕は薄れながら美化されてゆくその姿が

どんどん僕の独りよがりな理想像になっていき

本来あったはずの君の姿から

僕の作り出した虚像の君へと

削ぎ落とされてゆくのを知っている


だがそれはかつてここにいた現実の君よりも

どうしてか美しく感じてしまう僕の罪を

忘却と追憶という感情の持つ意味を

知りながら、それでもとどめられずにいる

僕の中の君は生きていた人間の君から

少しずつ崩折れる砂の像に変わっていくのだと

それでもまだ追憶はとめどなく溢れ出て

机からまた取り出される君の写真は

少しずつ指紋に汚れ色褪せていくだけなのに


僕はたしかにそれが君だと

まぎれもないあの日の君の姿だと

僕がそう在りえたいつかの姿だと

僕がそう在りたかった遠い日の姿だと

ただすがりつくように信じようとしている


その写真のなかに残された君を

また夕焼けにかざして見ていた

そして真っ赤な空の泣き腫らしている

とめどない寂しさにまた、腕を伸ばす

そこにかつていた君はもう居なくなり

夕焼けはもう待っていてはくれないのに

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