切断

黒の中指

「久しぶり。長いこと連絡もなしにどこへ行って……ど、どうしたの、その腕」

「腕? あ、ああ。治らなくて……」

◆◆は右手を左手で庇うように握った。その腕はジェットブラックだった。■■■はその色に見覚えがあった。

「えっ、あっ……あ、サイバネティック……?」

「そう、そうだ」

■■■は恐る恐ると言った様子で◆◆の腕を指した。

「あー、えっと、もしかして、その、切った感じ?」

「そりゃ、まあ……その、なんだ、突然のことで驚いてるだろうがそんな腫れ物に触るような話し方はやめてくれ」

「あっ、ご、ごめん」

二人の間に気まずい沈黙が下りる。先に口を開いたのは◆◆だった。

「思ったよりも快適だ。なにもなってなくても付け替えるのも懐が許せばありかもしれない」

◆◆は右手でキツネを作り、耳をぴこぴこと動かした。

「そう、かな。ちょっと賛同しかねるよ……新しい腕はどんな感じ?」

「何だってできる。品種改良された今時の硬いリンゴを片手で粉砕することもできるし、なんだったら凍らせたバナナを片手で折ることだってできる。釘だって打てないこともない。まあ、傷むからあんまりやりたくはないが」

右手を勢いよく握ったり開いたりする◆◆。■■■はびくっと身を竦ませた。

反応を見て笑っていた◆◆はふいと目を逸らし、照れくさそうに頬をかいた。

「片手でって言ったけど、左手は元のままの手だから……両手だと逆に折れない。今のはちょっと見栄張ったな」



「力強さだけじゃなく繊細さを兼ね備えたモデルだ。正直前の腕より性能が良いんじゃないかって思うところもある。そうだな……試してみるか?」

◆◆は握り拳を緩め、手首を振った。■■■は頬をかき、訝しげに手を見た。

「えっ、その、大丈夫? 握りつぶしたりしないでね……」

「……きみのそれほどは暴れないから安心してくれ」

◆◆は眉を下げて苦笑した。

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