言い訳と口約束
「やっぱり右手、けっこう悪いんだろ」
ドライヤーの電源を切り、■■■は言った。◆◆は首を振る。
「この流れで言われたくない……それは邪推だ……」
「まだ何も言ってないし、これから特にいうつもりもないから弁解の必要なはいよ、安心してほしい」
「どうせ濃度がどうとか言って僕を辱めようとするんだろ……わかってるんだ……何も言うな……なにも聞いてくれるんじゃない……」
項垂れる◆◆に対し、不思議そうに■■■は首を傾げた。
「ええと……なにかあったの? 屈折しすぎじゃない?」
上目使いで■■■を睨むようにして、◆◆は唸るように言った。
「何かあったんだと思う間の鋭さがあるのになんで訊いちゃうかな……恥ずかしいんだ、きみに、こんなことさせて……本意じゃない……」
「溜まってるなら、呼んでくれれば、その、したのに」
「それこそ本意じゃない。僕はきみに何にもできないのに、縋るみたいでいやだ」
「卵割るのは頼めたじゃない」
「卵は割ってくれたら焼けるけど、こっちからは何もできないのにするのは自慰を手伝わせてるみたいで……いやいい、もうこの話はやめにしないか」
不快感をあらわに◆◆は言った。■■■は頷いた。
「そうだね。これから予定ある?」
「特には。何故」
◆◆と目が合った■■■は、ぱっと赤面した。◆◆は訝しんだ。
「……なに?」
「や、その……今から、し、しませんか」
「もしかして今までの全部、それの前振りだった? 手酷く断った後で承諾しづらいが……っていうかきみも、そうだっていうんなら回りくどいこと言わずに最初からそう言えばいいじゃないか。善意に見せかけた責任転嫁は重罪だぞ」
「ええと、その、すまない。駄目なら断ってくれて構わないから……」
「……しょうがないな。貸しひとつだ。洗濯手伝ってくれ、それで手を打とう」
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