同衾

「で、どうするんだ」

興味をなくしたようにあくびをしている■■■へ◆◆は言った。言ったあとで◆◆もつられてあくびをする。

「なんかめんどくさくなってきたし寝るよ。後のことは起きてから考える。ベッド借りていいかな」

「どうぞ。ああ、ベッドに入る前に靴は脱いでくれよ」

◆◆の発言に■■■は首を傾げた。

「靴なら玄関で脱いだじゃないか。なにをいってるんだ、きみは」

「んん? そう……そうだな。そうか。ならいい」

「……酔いが回ってるのなら、きみも少し寝たらいい」

「ああ、そうだな。そうしよう」

ずるずると布団に包まり、■■■と◆◆は眠りについた。


目が覚めると夜だった。真っ暗闇の中で、■■■はすやすやと眠っている。◆◆は起き上がって水を飲むために台所へ立った。

戻ってくると、■■■は変わらず眠っている。顔にかかった髪を払い、頬を撫ぜると、■■■は眉をしかめて小さく唸った。しかし、起きる気配はない。◆◆はふと思いつき、■■■の服をまくって体を調べた。



「◆◆! 聞いてくれ」

「あー、どした■■■」

「治ってる、もうどこも何ともない」

嬉しそうに言う■■■へ◆◆は肩をすくめた。

「よかったじゃないか。朝ご飯食べるかい」

「貰うよ。何を作るんだい」

「何が良いかな……いや、なんなら作れるかな、か」

湿布を巻いた手首をさすり、◆◆は頭をかいた。■■■が見咎める。

「え、ちょっと、どしたのそれ」

「なんかしらんが寝違えて、起きたらこんなんだった」

「大丈夫? 右手首だろ、生活に支障でるんじゃないか」

「中華鍋は振れないが、包丁くらいなら……あー、中華鍋は右手では持たないんだったか」

「深刻でなさそうなのは分かったけど、なんにせよ無理はしないでくれ。手伝えることがあるなら言ってほしい。その、できることしかできないけど……言ってくれれば、やるから」

「ありがとう。そうだね、その時は声をかけるから、頼むよ」



「ああ、で、さっそくで悪いけど卵割ってくれるか。ざるの上で殻ごと握りつぶして濾してくれればいいから」

「いや、まって、できることしかできないとは言ったけど卵は割れるよ」

「おっと失礼。あれ、じゃあ、何ができないんだっけ」

「白身が切れなくて、卵液を均質に混ぜられないんだ」

「ああ、成程ね……ハンドミキサー使うといいかもよ。面倒でなければだけど」

「卵焼き一つ作るのにハンドミキサー持ち出すのは、まあ、面倒だよね」

「間違いないな」

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