反予定調和的解答

「この期に及んでばたばたしないでくれる? やりづらいんだ」

「だって、なんか、その、硬いものが……」

「ああ、これか。気にしないでいい、君のだって似たような状況だ」

◆◆は冷たく言い放った。その声は普段と比べて上ずっていた。軽く咳をして◆◆は唇を舐めた。

「安心してくれたまえよ」

■■■をなだめるようにそう言った声は、先ほどと同様、上ずったままだった。



「それで、どうだ。いい感じか」

「あっ、わ、わからない」

「じゃあまあ、まどろっこしいこと抜きにしてやってみようか。もう入れたって痛くない頃合いだ」

「えっ、いや、あのその……ひっ」

■■■は呻き、◆◆の方を喘ぐように息を吐きだしながらちらちらと見た。◆◆は腰に手をやったまま動きを止めた。

「なに、なんか、いいたいことでもあった? 手加減なら言われずともするつもりだよ。きみが、暴れるっていうんなら多少は手荒いことをするかもしれないが」

「いや、えっと、その、お、おっきい……」

赤面して、■■■はもごもごと言った。◆◆は面食らった。顔が紅潮するのがわかる。なんだってまたこの男はこんな時にこんなことを言うのか。普段からよほど気にしていたのか。わからない。◆◆に■■■はそんなそぶりを見せようとはしなかった。……当然だろう、弱点を自らさらけ出す人間がどれだけいる?

「……今の君にはかなわないさ」

◆◆は慰めの言葉を吐いた。欺瞞だとわかってはいたが、言わずにはいられなかった。



ぐたりと体を横たえたまま、■■■は言った。

「このまま、戻らなかったらどうなるんだろう」

「そうなったら手術だろう。社会生活に支障をきたすレベルであれば保険が適用されるはずだ。安心してくれ、べつにそれがなくなったからと言ってきみを嫌いになることはしないさ」

欺瞞だなあ、と◆◆は思った。さっきから嘘ばっかりだ。嫌いになりはしないだろうが、何も変わらないわけはない。■■■とは『そういう』関係だった。『手術』をすれば、今までと全く同じというわけにはどうしたっていかないだろう。それでも、それをそのまま目の前で怯えている男に伝える気にはどうしたってならなかった。

「……そうか」



結局■■■は入院した。

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